Chapter 016_特別授業
「アベルさん!おひさーっ!」
「よぉ〜、ミーリアちゃん」
次の日…
「よ、よろしくお願いします!」
「よろしく頼んます!」
…
……
………
“っぽいの”は行動も早かった。
あの会話の直後、
「…それじゃ、行くわよ」
そう言ってベルナールの腕に抱かれた”っぽいの”が
(ベルナールが)向った先は冒険者ギルドだった。
「先輩って誰だろう?まぁ、冒険者なんだろうけど…」
…ベルナールが呑気に構えている間に
”っぽいの”はカウンターでギルドの司書妖精(ギルドでお仕事している
司書妖精も”スタカッティシモちゃんっぽいの”。)に話しかけると、
スグに奥からガタイのいいオッチャンが出てきてトントン拍子で翌日
…つまり、今日…から稽古を付けてもらえるコトになったのだった。
しかもタダで…
………
……
…
「よろしくな!ベルナール君と…」
「レオンです!」
“っぽいの”が紹介してくれたのは
数千人の初心者冒険者を世話する【冒険者ギルド ルボワ支局】の
ギルドマスター
冒険者パーティー【東門】のリーダーであり、
3級冒険者
「レオン君…だな。よろしくな。」
魔女も世話になった(大)先輩冒険者 アベル だ
アベルの冒険者としての階級は第3級と高くないが、
この街で数十年間冒険者活動をしていたので経験は誰よりも豊富。
ギルマスとして冒険者やギルド員に仕事を教えた経験もあるし、
2人と同じ【魔法剣士】だから学ぶ事も多いに違いない。
現状、これ以上ない適材と言っていいだろう。
ま。ソレは良いんだけど
ソレより…
「オレは2人と聞いてたんだが…ミーリアちゃんも稽古をつけるのか?」
朝、ベルナールが特訓の為に街の外の草原へ行くと告げると
(レオンは夜のうちに自分の宿に戻っていった)何故か、ミーリアが
ついて行くと言い出したのだった
「私は2人の保護者だよ!」
「保護者だぁ…?」
「んぅ!おにーちゃん達が失礼しないように見張ってるの!」
ミーリアは、姉や”っぽいの”に言われたからでも
なんでもなく。
本当に気まぐれで付いてきたのであった。
「はははっ!尻に敷いてるってわけだな!」
「魔女の娘ですからぁ〜」
怒った烏の子が
もう、笑う…
「あっはっはははー」
「んっふふふー!」
…まったく。
誰に似たんだか…
「「…」」
ベルナールもレオンも昨日のコトがあるので黙っているが、
内心「ヤレヤレ…」と、呆れるばかりであった…
………
……
…
「…さて!」
挨拶が済むと…
「相談事は昨日のうちに聞いた通りでいいな?」
「「はいっ!」」
掃討戦に参加しようと考えているコトや、
一昨日の失敗話を昨日のうちに話しておいたので、
アベルは昨夜のうちに稽古の計画を立てていた。
命を助けてもらった魔女の”身内”のお願いだ。
蔑ろにするわけにはいかない…
「聞いた話からすると、お前らに足りないのは…端的に言うと【経験】だな。」
…本当の事を言うと。
実は、昨夜”も”アベルは嫁の誘惑にアッサリ負けており、
中途半端にしか計画を立てていないのだが、
ま、何とかなるだろう…
「け、経験…ですか…?」
自分達に必要なのは地力…剣士としての基礎力だと
考えていた2人はアベルの言葉に納得できなかった。
「アベルさん。オレらコレでも、1年間このギルドで活動を…」
い、いちおう。
経験は”ある”つもりでいるんだけど…
「…おいおい。4級になったばかりのお前らなんて白紙と変わんねーよ。」
「ぐっ…」
「経験者になったツモリか?…あぁ!?」
「っ、…」
大先輩に言われては『ぐぅ』の音もでない2人に
アベルは更に言葉を続け…
「…いいか?キュルグは…体こそ、ヒトより小さいが、自分たちの生活を脅かす敵と向かい合ったとき逃避よりも抵抗を選ぶ魔物だ。お前達がコレまで相手にしてきた劣級の魔物…”逃避を最優先”とする…とは、根本的な発想が違う。」
「攻撃を受けたからといって怖気づくとは限らない。避けてカウンターを狙ったり、逆に相手の隙を突くこともある。ハグレのオスはハーレムのボスと戦い、”敗れた”経験があるから、そういう意味ではお前らよりも経験者だ。」
「体が小さいからって…草食だからって。下級魔物と見くびって。舐めて掛かったんじゃないか?数や地の利も気にせず。”今まで通り”の方法で挑んだんじゃないか…?」
重ね掛けされたド正論に
「「…」」
2人は拳を握りしめた…
「…まっ!」
…しかし、
アベルは『パァンッ!』と手を打ち、
軽い音を響かせて
「いい経験ができたじゃねーか!」
緩く構え、そして
『ニカッ』と笑顔を浮かべ
「…いいか?4級で依頼される魔物は5級のそれとは全然違う。一筋縄にはいかない。「次にどう動くか…」なんパターンも想定しておかなくちゃならねぇ。お前達に足りなかったのは「相手が反撃してくる」という想定だ。魔物は”的”じゃない。命懸けで思考し、次の一手を繰り出す生き物だ!」
腕を組んで
「…さっきはキツイこと言ったがな。オレはお前達を評価してるんだ。」
「えっ…」
「それは…」
真っ直ぐに2人を見据え…
「今回のこと…お前達は”失敗”と思っているんだろうが、そんなコトはない。進級の洗礼を最低限のケガで乗り切り、そしてオレに教えを請うてきた。誰にでもできるコトじゃぁない。胸を張っていい」
「「…」」
「今後お前たちは、もっと危険で知恵の回る”致命的”な魔物と向き合う事になる。その時…どう動く?…もちろん。地力やパーティーメンバーとの連携も重要だ。だが、物資がなく助けも来ない絶体絶命だったとしたら?」
「「っ…」」
「…そんなとき。最後に頼りになるのは知恵と勇気と直感だ。そして、ソレを引き出すのに必要なモノは…経験だ。」




