Chapter 015_女の子
「もうっ!知らないんだからね!」
『バターンッ!!』
ベルナールとレオンがキュルグに惨敗した翌朝…
「ミーリア!…あぁっ、もおっ!…み、皆様ごめんなさい。ベルナールさんとレオンさんも。ごめんなさい…」
昨夜、早めに眠ることができたベルナールは
いつも以上に早起きしてしまい、遅れて目覚めたレオンと共に
早起きリチアに言って朝食の準備の手伝いをしていた。
すると、
お寝坊ミーリアが目を擦りながらやってきて…
「…うぅ?おにーちゃ…レ、レオンお兄ちゃんも?…っ!きょ、今日はお休みのハズでしょ!?なんで働いてるのよ!!」
と、オコになり。
『プンプン』湯気を出しながら朝食を食べようとやって来た
お客様を跳ねのけ、自室へ向かってしまったのだった…
「い、いや…」
「大丈夫!大丈夫だから…」
「★5」を受けているこの宿の評価がこの程度の事件で
傷付くハズもないが…
ソレでも『ペコペコ』と謝るリチアをベルナールとレオン
そして、お客が総出で慰めていた。
すると…
「…ミー君には私から言っておくから。皆は朝食に戻って」
頼れる”お姉様っぽいの”が小さく呟いて…
「「は、はーい…」」
「ミーリアちゃんも”お年頃”だもんな…」
「しゃーないしゃーない!」
…と、理解のある客達によって
騒ぎは霧散し、、、
「み、皆様!スープが温かいうちに…」
リチアの一言で。
騒ぎは朝の喧騒にかき消されていったのだった…
………
……
…
昼食後…
(※因みに、ベルナールとレオンはランチの前にギルドへ報告に行った。依頼は失敗だが宿の【ストレージバッグ】にナッツの在庫があったので、代わりにお店に納品し、許してもらうことができた…)
「…あ!スタカッティシモちゃんっぽいの様」
「今日は休みにしよう」と決めたベルナールとレオンが
錬金小屋の窓を全開にしてゴロゴロしていると
小さな淑女が食堂を『ペタペタ』歩いているのが見えたので
ベルナールは騒声をかけた。
因みに、レオンは天日干し中の枕妖精に埋まり
よだれを垂らして航海中…
「あら、ベル君。」
中庭を挟み、”っぽいの”との間には距離があったが
無事に声が届いたようだ。サンダルを履いた
ベルナールが駆け寄ると…
「…?」
小さな体と同じくらい大きな本…”っぽいの”の魔法本…
を抱えた”っぽいの”は静かに首を傾けることで
ベルナールを促した
「今朝はありがとうございました!」
「…今朝?」
「…ほら。ミーリアちゃんの…き、機嫌を損ねた原因はオレなので…」
ベルナールがそう言うと、
「…あぁ。いいのよ別に」
本当に気にしていない様子の”っぽいの”は
軽く一言で済ませた。
「ミ、ミーリアちゃんは…」
しかし、
それでもベルナールが言葉を続けると
"っぽいの”は「あぁ〜…」と、いう顔になり…
「そっとしておいてあげなさい。今は不安定な時期だから…余計なコト言うと、また機嫌を損ねちゃうわ。」
…と、答えたのだった。
「で、でも…」
ベルナール達がミーリアの「言う通り」にしなかったのは
”その通り”だけど…
けれど、ベルナールは「よかれ」と思って仕事をしたのだ。
特にミスをしたわけでも無いので、
何故、ミーリアがあそこまで怒ったのか理解できずにいた。
「なにか、気に障るようなコトでもしてしまっただろうか…?」
そんな風に、気にしていたのだ。
「…あまり、気にしないほうがいいわ。」
ベルナールの不安を汲み取った”っぽいの”は
魔法本を消してベルナールに向き直り…
「女の子にはよくあるコトよ…」
理性と本能…少女と女…ホルモンに翻弄されている今のミーリアを
救えるモノは、勇者様でも王子様でもなく、時間だ。
去年のベルナールがそうだったように
ミーリアは今、自分自身と向き合っているのだ…
「…ソレよりベル君?ヒトの心配をしている場合?」
姉やベルナールだけでなく、魔女にまで当たり始めた
最近のミーリアの態度には、”っぽいの”にだって、思う所があるけれど…
「…思うに君。地力が足りないんじゃないかしら?…違う?」
…魔女に託された
我が身より大事な宝物を傷をつけるワケには、いかない…
「うぐっ…」
ベルナールの気を逸らすために
イタイ所を『グサッ!』と突き刺し。話題を逸らすと…
「…やっぱり。そう、思います?」
…まんまと口車に乗せられた
純情無垢な青年は
「まさか受け流されるなんて…ゆ、油断したのも確かですが、アレは当てるつもりだったのに…」
…と、
当事者でないと分からない独り言をはじめた
「…」
正直、
「確かに指摘はしたけど…冒険者のコトなんて。司書で人形の私じゃ、アドバイスできないしなぁ…」
と、思った”っぽいの”ではあったが話題を変えたのは他でもない自分なので。
ココは責任をもって…
「先輩に教えてもらうのはどうかしら?」
…と、手を差し伸べるコトにした。
「…せんぱい?」
「そう。あなたと同じ剣士で。冒険者の…ほら、この宿にも沢山いるでしょう?」
別の異世界で言うところの「魔法剣士」は、
誰もが魔法を宿し、武器を起点に魔法行使するのが常識のリブラリアにおいて
”かなり”ありふれた職業だ。
右を向いても左を向いても
リブラリアは魔法剣士で溢れている
「でも、そんなコト頼める知人なんて…」
ベルナールには、レオン以外にも”冒険者仲間”と呼べる知人がいるにはいるが、
その全員が自分と同じくらいのレベルなので教えを請うには足りない…
「ふ〜ん…」
声のトーンを下げたベルナールを見た”っぽいの”は、
『…そう言えばこの子。自分から行くタイプじゃないもんね…』
と、心の中で思い出し。
そして…
「…紹介してあげよっか?」
殆ど宿から出ないけど、多くの人に頼られているので
たくさんの”貸し”を抱えている司書様が提案すると…
「いっ、いいんですか!?」
魅力的な提案に色めき立ったベルナールが
「わ」
淑女を抱き上げ、『グイッ』と迫った
「…」
あらあら…こんな積極的なコトができるなら、
娘ちゃん達にも”そう”してあげれば良いのに…
…なんて。
単純な男心に呆れ果ててから…
「…いいわよ。」
答えると。
「っ…たっ!」
よほど嬉しかったのか…
“っぽいの”を肩の上まで担ぎ上げて喜びを表現した
ベルナールに抱えられた”っぽいの”は、
「ただし!」
小さな声と、小さな小さな人差し指を突き立てることで
「えっ…」
ベルナールの動きを止めて、
「…報酬は。ショコラ・デ・モンブランよ!」
…ウィンクしながら
唱えたのだった…




