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Chapter 005_月天使

「おっ…お、帰りなさいませ月天使様」

「「「「「お帰りなさいませ月天使様」」」」」


【月天使】としてのフォニアの出発点は

ここ、ルボワ市の治癒院だ。


幼少期に母親と治癒院を訪れたフォニアを

当時のプリモヒーラーがスカウトしたのが

きっかけと言われている…



「・・・・・・た、ただいまです【治癒術師】と【月の雫】の皆様。ご機嫌麗しゅうございますか?」


「「「「「キャーッ!」」」」」

「天使様が挨拶してくれたわ!」

「魔女様っ!」「月天使様!!」

「マジ天使!!」


魔導師として、錬金術師として、薬草師として、

世界の調停者として…


…超多忙な日々を送っている魔女が

ルボワ市の月天使教会…治癒院を訪れるのは

非常に稀だ。


落ち穂事件以来、コレが2回目となる。



「あぁっ、(うるわ)しの天使様…」

「今日もなんと神々しい…」

「てぇてぇのぉ…」

「も、もう。死んでも…」「コ、コラ!天使様にもらった命を大事にしなさい!!」


忙しかったのも、もちろんあるが…



「・・・み、みなさん。落ち着いて・・・」

「キャーッ!!」

「天使様が…」

「心配してくれたわ!」

「あぁっ、このまま召されそぅ…」


…来るたびに”コレ”である。


前世は宗教チャンポン国 異世界極東島国で生まれ

クリスマス→除夜の鐘→初詣…という誰一人、その(宗教上の)正当性を

証明できない多重宗教行事マラソンを平然とこなしてきたフォニアは

宗教にハマるヒトの気持ちが分からない。


まして、自分がその教祖様(と、いうか神様)

だなんて、マユツバもいいとこ。


本当はヤメて欲しいんだケド

コレで救われている人がいるのも事実だし、

大陸中に拡がった信仰のビッグウェーブを今更静めることもできない…



「キャーキャー!」

「天使様!!」

「月天使様ぁー!!」

「月に代わってお仕置きしてぇー!!」


「・・・」


…そんなワケで。治癒術の最高神たる月天使様は

今日もただただ、困惑するばかりであった…






「フォ、フォニアちゃん!」

「こっちです…」


…そんな大天使様のコトを想い

モーゼのごとく信者(ビッグウェーブ)を割って現れたのは…



「・・・シャルロッテちゃん!マリーちゃん!」


ルボワ市の治癒院が誇る2人の優秀な治癒術師

プリモヒーラーのシャルロッテ と

セコンドのマリー であった!

そして、さらに…



「…」

「わきゃあっ!?」


魔女のミニマムボディーを

『ヒョイ』と抱え上げたのは・・・



「ボ、ボドワンさん!?」

「…!」


治癒院の頼れる門番

魔女と旧知のボドワンであった



「うぎゅ・・・」


肩に乗せられた魔女は、

戸惑いはしたものの…



「ちょっ、」

「天使様ー!」

「堕天してぇー!!」


…結果的に取り巻きを回避し、



「はいはーい!みんなはココまでー!天使様と会えてよかったねー!!」

「ち、治癒院はしばらく…きゅ、急患を除いて閉院なのですー!」



…ようやく。

治癒院に入ることができたのだった…



………

……





















「・・・なるほど。」


思い出話もそこそこに…

魔女は、滅多に使われない”病室”…入院ベッドに

やってきた



「…ど…ど、どうかなフォニアちゃん?できるだけやったツモリだけど…」


病室にいるのは

・患者の ベローチェ

・治癒術師の シャルロッテと(見習い)マリー

・ルボワ市の薬草師 レーチェル

・そして魔女と、

・魔女がいつも連れている司書妖精 カルマート様っぽいの


…以上。

ひとりの患者と

彼女の為に結成されたリブラリアにおける医療の最前線であった…



「・・・」


シャルロッテの綴ったカルテと

“っぽいの”が召喚した患者の魔法本。

そして自身の診断結果…


真剣な表情で、それらを替わりばんこに見つめた魔女は…



「・・・うん。」


質問を投げかけたシャルロッテを

真っ直ぐ見つめ…



「・・・最適解だと。思うよ・・・」


そう言って微笑んだ



「ふぅ〜…」

「ひゃあ〜…」


シャルロッテもマリーも…もちろん、

手を抜いたつもりなんて無かった。


けれどやはり相手が相手…

僅かなミスでも”ひと唱え”で看破する月天使様の瞳に映ると思うと

緊張してしまう…



「・・・潜伏者のリストは?」

「は、はい!えぇと、カルテの3ページ目の…」


ベリーチェは深刻だった。


“見た目”の上では綺麗な体に戻っているが、

体内には取り切れなかった虫の卵と、混乱に乗じて忍び込んだ

数え切れない真菌と寄生虫が(うごめ)いている。

シャルロッテ達ももちろん、その事実に気付いてはいるが

対象の体の内側でしか発現できないリブラリアの治癒魔法は構造上、

生物の中に入り込んだ ”別生物” に無力だ。


侵入者が宿主と”見分けがつかない”ほど一体化していれば話は別だが、

「成長する為の養分を持つ”卵”」や「組織の”そばで”栄養をむさぼる」連中は

物理的に取り除くしかない。


…しかし、いつ目覚めるかわからない”種”の為に

患者のおなかを開きっぱなしにする事もできない。

爆弾を抱えたまま。ビクビクしながら待つしか

ないのが、”コレまでの”実態であった…



「・・・ラーナスの溶解液とコフキガエルの肝毒を使おう。レーチェルちゃん、調剤したコトある?」


…だが、今は違う。


「ふえっ!?が、学舎(がくしゃ)でいちおう…で、でも。蓄えが…」

「・・・持ってるから。後で一緒にやろ。」

「は、はいっ!!…ふわぁ〜…や、薬神様。じきじきなんて…///」


薬神こと魔女は

薬の研究と同時に毒の研究を行った。


誰よりも治癒魔法を理解していたからこそ、

その盲点も理解していた。


薬の有効性を治癒術師達も認識し始め

今では、治癒術師と薬草師がタッグを組むのが当たり前になっている。


一般の理解も進み治癒術師の負担も減った。



「・・・コレでほとんど片付くとは思うけど・・・でも、完全にはリスクを排除しきれない。注意してね。」

「は、はい!」


まだまだ道半ば…とは、いえ。

救える命は大きく増えた…



「次は・・・」


だが…

魔法と魔術、才能と知識を駆使して異世界”以上”の奇跡を実現した

綴られし世界の天使様の御手(みて)をもってしても治療困難な病がある。

ソレは…



「・・・心を。彼女の心を。どう癒そうか・・・」


…精神疾患


極度のPTSD…心的外傷ストレス症候群…を患った幼気(いたいけ)な乙女に

どうやって手を差し伸べようか…

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