Chapter 020_航空法 第3章第7条第1-3項
「マァー…ママ〜…」
同日昼過ぎ。
ルボワ市”空港”にて…
「おい!」
「アレは…!?まっ、まさかっ!?」
「おっ、女の子ぉっ!?」
ルボワ市空港…
空港という施設に関して異世界出身の読者皆々様方に特別
説明は必要ないと思うが、あえて言うなら【飛空船】の発着場である。
【飛空船】というのは、今から10年前に
【烏】とかいう錬金術師によって生み出された…
異世界地球の中世程度の文明レベルしかなかったリブラリアに爆誕した
明らかにオーバーテクノロジーな航空機のコトだ。
もっとも、
飛空船の航行技術は異世界地球の航空機とは全く異なり
剣と魔法の世界よろしく、魔力を存分に利用したモノである。
「ママー!!」
「ウソだろっ!?」
「飛空船から飛び降りた…だとぉっ!?」
「キャアーッ!!」
見た目はずんぐりむっくりとした鳥…あるいはクジラのような…
有機的な形をしている。
全長は88mなので【大型のガレオン船】くらいだと思えば、
だいたい合ってる。
因みに、飛空船には何本かマストが立っているけど、
アレはデザイン上の仕様で航行には一切利用されていない。
レーダーも通信も魔力依存でマスト関係ないので…強いて言うなら
避雷針かな?
「・・・はぁ〜・・・」
航法は【矢印魔法】で”直接的に”機体を動かす…
という、実にシンプルな方法を採用している。
空気力学ガン無視のこの航法は非常に合理的ではあるが、
急に方向転換をすると乗員の感性が慣性で完成するという問題も抱えているため
熟達した飛行士による繊細な操縦が求められる。
…まぁ。実際は
飛空船そのものでもある人工妖精の【飛空妖精】が
上手いことやっちゃうんだけどね…
「・・・まったく。もぉっ・・・」
『パチィンッ!』
「…ふわうぅ!?」
…開発者曰く
「・・・音速超えを狙ってないんだから。(空気抵抗を考える必要が無い〈そんなハズは無い。力技はヤメよーよっ!と、言ってあげて…〉ので)長方形とか球形とか・・・もっと、スマートな形状の方が合理的だったのに・・・」とのコトだが、
関係者の強い反対によって「そらとぶ豆腐」や「天駆けるボール」は回避され、
彼女の弟子がデザインした…ドワーフ王や聖王様さえ唸る…洗練された
今の姿が出来上がった。
飛行中、乗員が安心して上部デッキへ出られるのも
空力的に無理がない流線形のデザインを採用したお陰である。
弟子君。マジ、グッジョブ。
「ママー!!えへへへ〜…」
「・・・もぉー!・・・飛空船から飛び降りちゃメって。何度も言ってるでしょ?」
「う〜…だぁってぇ…」
「・・・だってじゃありません。・・・今頃、クレシダや飛行士達が大あらわよ?」
「だってぇ…」
第4階位 旅客船【クレシダ】
現在、リブラリアの空の一翼を担っているこの船は
綴られし世界の物流の革命児であり、次の時代へ羽ばたく世界の翼である。
「・・・いい?ユキア。貴女がしたことは航空法に反した危険行為よ?・・・着陸中にスッチーさんの制止を掻い潜り、デッキに上がり、あまつさえ飛び降りたんでしょ!?ソレはイケナイコトなの。今回も素直に吊られなさい。」
「うー…」
そして…
「・・・「うー」。じゃ、ありません。・・・刑期の途中で縄を解いたりしたら、母は怒りますよ?怒ってどこかへ行っちゃいますよ?」
「うえぇっ!?ヤだ!」
…この旅客船の多重安全装置を掻い潜り、高度100mから
自由落下し、愛する母の召喚獣…重力魔法を操る【力王 セト】…に
包まれ、ゆっくりと大地へ…
「ヤ〜あっ!ヤ〜あぁっ!!」
母の胸に着陸して駄々を捏ねる
丸い耳に細長い尾をした獣人の娘…
「・・・まったく・・・ほら。母はちゃんとココにいるから・・・もう、しちゃメよ?しなければ、帰りは一緒にいてあげるから・・・」
「うぅぅ〜…ホント?」
「・・・ほんと。」
「ほんとにホント?」
「・・・ホントにほんと。」
「…う、うs…」
「・・・うそなものですか。今までだって、船の中ではずっと一緒だったでしょ?・・・そうよね?ユキア・・・」
【終の魔女】ユキア
夜の魔女の娘(魔女はユキアを正規の【養子】として迎えているため、
”血のつながらない実の娘”である。)にして、紙上初の
【紋章魔法】使いであり、唯一の【凍結魔法】の使い手でも
ある天才少女だ。
「う〜…なら、ガマンするの…」
「ん!・・・いい子ね・・・」
…このユキア、大変なマザコンである。
世界中を飛び回る母親について行っては、(頼んでもいないのに)母親を狙う悪鬼羅刹を身長の倍もあるアンチ-マテリアルライフルで物理的に粉砕したり、融解したり、跡形もなく昇華させる恐るべきスナイパーであり、
接近戦でも(ルクスお父様やシュシュお姉様には敵わないものの…)靭やかで
素早い体捌きで敵を翻弄…せずとも
無詠唱で放たれる凍結魔法によって瞬殺する…
「んゅふふぅ〜…///」
…チートでキュートなオコジョ娘である。
「グッ、グランドマイスタァー!」
「烏様ぁ~!!」
「う・・・」
着陸するやいなや魔女に近づいてきたのは
クレシダの船長殿と客室乗務員長殿であった。
ちなみに、2人とも獣人である。
リブラリアの航空業界は、ワケあって獣人の比率が高いのだ…
「もももも…」
「「申し訳ありませんでしたぁ!!」」
「うぅ?」
「ごっ、ご息女が…って!?あぁっ!?」
「ユキア様!?!?」
「…」
予想はつくと思うが…
夜の魔女フォニアは 錬金術師【烏】 でもある。
3人の客員錬金術師と7人の弟子。そして、ドワーフ王国の工廠を任せられ
各国にある航空学校設立にも携わった母鳥だ。
「…ご、ご無事でしたか…」
「よかった。よかったですぅ〜…」
魔女は普段、移動に自前の水龍を用いているが。何処で嗅ぎ付けたのか…
末娘のユキアが母を追って「ルボワ」の定期便に乗りこんだと聞き。
娘の到着を待って、一緒に次の目的地へ向かうことにした。
「・・・ネグ殿。フー殿。娘が大変なご迷惑をお掛けし、申し訳ありませんでした。ここに、心よりの謝罪を・・・」
「…ってぃひぇえ〜っ!?グ、グランドマイスター!?」
「おおぉお顔を上げてくださいませ烏様!!」
飛空船の産みの親であり、諸国王”以上の”VIPである魔女と
その娘が自分たちの船に乗ると聞いたパイロット達は大あらわ。
万全のオモテナシ体制でガチガチに緊張していた彼ら彼女らは
終始無言で、スイートルームの隅っこでおとなしくアイスを『ペロペロ』
していたユキアに『ホッ…』と胸を撫で下ろし、第一関門(ルボワ到着)突破まで
あと僅か…と、思ったところで
「・・・ほら。ユキアも・・・」
「う〜…ご、gめしゃi…」
大事なVIPが身を投げる…と、いう悲劇に
見舞われた…
「ひぃえぇ〜…!!」
「おっ、おやめ下さいお願いします烏様!」
「我々の首が飛びますうぅ〜!!」
今回悪いのは全面的にユキアであって
飛行士にも客室乗務員にも何の罪もない。
罪は無いけど謝るしかないし、
謝られるワケにはいかない。
被害者なのに謝らないといけないなんて…
「・・・ユキアには後で。航空法に基づき【マスト吊り下げの刑】を受けさせます。」
「「ほんっとーに!おやめ下さい!!」」
実力主義社会とは、かくも理不尽かな…
ユキア登場です!




