Chapter 012_はじめての冒険
「ごめんない…」
ベルナールが朝起きてから発した言葉は
①「ふわぁ…よく寝………え?」
②「…やばっ!!」
…そして③が上の言葉だ。
「あはははー!おにーちゃん。 ミ|大!寝!坊|彡 だねー!」
「スミマセンでした…」
時すでに時間切れ。
魔女の誘惑に完全敗北したベルナールはバイト2日目で昼まで爆睡。
食堂へ向かうと午前の仕事をすべて終えてた姉妹が
食堂でランチのピザパンを食べていた…
「…ふふふ。仕方ないわよ…」
妹のほっぺに付いたトマトソースを丁寧に拭ったリチアは
「全部お見通し」といいたげに…
「お母様の錬金小屋。楽しかったでしょ?」
「ソレはもう!」
女神の微笑みを浮かべてから…
「午前中のアルバイト代はありません。」
…厳しい現実を突きつけたのだった
「…はい。」
「…お昼。食べますか?赤字になっちゃいますが…」
「………お願いします…」
リチアは上げて落とすタイプのようだ。
姉妹揃って。まさに外道…
「おにーちゃん。なかなか借金返済できないね?…ホントに減ってるの?」
「今のところ増えているわね…」
「…」
あ、あれ?
宿で働けば冒険者より儲かるって
言ってなかったっけ…?
「あと、どれくらいで完済できるの?」
「…そんなに先じゃないわよ?真面目に働けば。ね…」
「本当にごめんない…」
…寝坊した事実がある以上、言い訳できようハズもない
ベルナールはただ、頭を垂れて
「…」
両手を前へ…
謝罪文を渡す仕草をしたのだった…
「「…」」
実のところ姉妹は冗談半分だったのだが、
ソレでもちゃんと謝ってくれたベルナールの印象は
むしろ上がった。
礼に答えるつもりで、「沈黙」していると…
「…ふふふ。ほらほら、謝罪も沈黙も充分でしょ?みんな顔を上げて…」
テーブルの上でチョコパンを千切って食んでいた
”っぽいの”が明るい声を上げ…
「リチア君。ミー君。彼のランチを準備してあげなさい!」
「はい!」
「はーい」
「ベル君は顔を洗ってきなさい。ミー君と森へ行くんでしょ?」
「は、はい…」
「心配しなくても、貴方のツケは数日内に完済できるわ。冒険者の稼ぎがあればもっと早く…ね。」
「は、はい!」
…魔女が設計した以上の仲介力を発揮した妖精は
「…みんな、午後も頑張りましょうね。」
「「「フラー!」」」
その場を”まぁるく”
治めたのだった………
………
……
…
「ありがとうございますミーリア様…」
「ふふーん!」
お姉ちゃんには”お◯カ”なんて言われちゃったけど、実際のところ
ミーリアは年齢以上に気が利いて合理的判断もできる…いわゆる
”できる子” である。
「…まさか。そんな朝早くにギルドに行っていたなんて…」
「ショーブは朝のケージ板から始まっているんだよ!早起きのクセをつけないとね、おにーちゃん!」
「善処します…」
冒険者ギルドの仕事は…街の内外から集まる依頼を冒険者たちに(適性を
考慮して)割り振る…要するに”斡旋”だ。
手の空く夜の間に依頼標を整理して
朝イチ番にまとめて掲示板に貼り出す…と、いうのが
彼らのルーチンワークでる。
条件の良い依頼…ウマイ仕事にありつきたかったら
ギルドの都合も考慮して動かなければならない。
「罰として、今日の報酬は6:4だからね!」
「えぇっ!?」
「…なに!?文句あるの!?!?寝坊した罰なんだからね!!」
ベルナールが初めての依頼を受けるにあたり、
先輩であるミーリア4級が直々に指導してくれるらしい。
教えてもらうのだから報酬なんて無くて当然…
そう、思っていたベルナールだったから
むしろ、4割もくれると言ったミーリアに
感謝しかなかった…
「…ありがとうミーリアちゃん。感謝をここに…」
…できるだけ丁寧に。
リブラリア式に感謝を伝えると…
「っ!?」
…ミーリアは。
『ぷいっ』っと顔を背け…
「おっ…大袈裟だよ!」
「…」
「っ///……いっ、行くよっ!」
「わっ!?ま、待ってよぉ!!」
森へ向かう足を速めたのだった…
「…………も、もぉっ…///」
…年下のミーリアは。
年上に頼りにされると誇らしい…
………
……
…
「…ミーリアちゃん。きょ、今日の仕事は…」
ダンジョン【ルボワの森】はルボワ市の南
草原を1km進んだところから始まる”ひとつの森”のダンジョンだ。
“ひとつの森” と、いうのは
「他の森と繋がっていない。」という意味。
(人間の街の先にある)草原と2つの大きな河川に区切られたこの森は
地理的に新種の魔物が侵入し辛いため生態系が”ほぼ”固定している。
28年前に主が進化して数十名の死傷者をだしてしまったが
【炎獄の魔女】…【夜の魔女】の師匠…が主を討伐して事なきを得た。
そして今は、別の魔物が主の座について落ち着いている。
この新しい主が中級魔物…下から3番目の強さ…である事から分かる通り
ルボワの森に棲息する魔物は劣級や低級…端的に言えば雑魚
ばかりである。
中級の魔物は主を含めて3種類しか見つかっておらず
それ以上の魔物は未発見。
そして、これら中級魔物は森の深部に行かなければ遭遇できない。
対峙する自信がないのなら深部には立ち入らず、
日帰りで往復すればよい。
にもかかわらず、ルボワの森に棲息する魔物は
装備や錬金術、食料として有用な物ばかり。
強靭な鎧の繋となる スジウサギ
体液が錬金回路の溶媒となる フーセンヘビ
美味しいシチューの材料となる グールー …選り取り見取りだ。
新しい魔物はいないし、生息する魔物もザコばかり。
それでいて、価値が高い。
ルボワの森が初心者冒険者の聖地と言われているのは
これが大きな理由だ…
「…」
そんなルボワの森で3年ほど活動しているミーリアが
「冒険者になるには登録料50Lを支払う必要がある」
…と、いうことすら知らなかった白紙(「初心者」という意味)
のベルナールに勧めた”初仕事”は
『ズザッ…』
「…え?あ…こ、ここが目的地?」
「ん…」
…森のメインストリートを外れて歩く事1時間。
「えっと…ず、ずいぶん大きな木だね?」
“とある魔女”が。子供時代にオヤツを手に入れようと
森中を探し回って見つけた穴場スポット
「…お兄ちゃん。ココが今日の狩り場だよ!」
木の実型の劣級魔物【プルーナッツ】の狩場だ!
「ひと狩り行こーぜ!」
べ「「行こーぜ!」って…もう、着いているんじゃ…」
ミ「うっ…う、うるひゃい///」




