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小鳥ちゃんの成り上がり

作者: 古河新後

 初めまして皆さん……私の名前は轟甘奈(とどろきかんな)と言います。

 けど、この名前は覚えてなくても結構です……何故なら……


『轟君、明日出社したら社長室へ行ってくれ』


 先日、七海課長からそう言われて今、私は社長室の前に立っているからです。もうすぐ会社をクビになります……






「轟甘奈と言います! 御社を希望した理由は――」


 轟甘奈は、勉強が出来る地味な女子だった。

 将来に何になりたいとか、ふとした事がキッカケで何かに憧れる様な事もなかった。


 劇的なキッカケと言えば母の死が彼女には強く影響しただろう。それが原因で父親との仲は悪くなり、その庇護下に収まり続ける事を心底嫌気がさした。とにかく早く自立して一人で生きて行きたいと思うようになったのだ。


 高校を卒業したら働く事を考えていたが、祖母の説得もあり大学まで進学する選択を取る。

 少しでもアルバイトをしようと履歴書を持って様々な場所を巡ったが、好印象を持たれても次の日には断りの連絡が入ると言う謎の現象に遭遇し、結局は父の支援の元に大学生活を送る事になった。


 高校、大学では将来への道筋なんて何も見出だせなかったが、とにかく父から離れたい一心で就職活動は意欲的に行い、時期になると何社も受けた。


 履歴は何も問題ない。非がある所と言えば内気な性格くらいなもので、それも面接でハキハキとしていればカバー出来る短所だと甘奈は気合いを入れる。


 受ける面接も数が重なれば慣れてくる。元々、スタートさえ切れれば要領良く物事をこなす彼女は謙虚で真面目な印象を面接でも伝える事が出来、毎回好印象を与えていた。

 しかし結果はいつもお礼参りの連絡ばかりだった。


“今回はご縁が無かったものとして――”


 と言う文言は嫌と言う程に届いた。

 最初の頃は、自分の欠点を的確に見抜かれたのだと諦めたり、他にも好印象の人が面接時には居たなぁ、と納得していた。

 だが、その通知が二桁に達した所で何かがおかしい事に気がつく。


 失礼かと思いつつも断られた企業に連絡をして確認してみたが、なんやかんやではぐらかされ真実は解らなかった。

 だが、その真相は一つの通知が家に届いた事で明らかになる。


『議員秘書採用通知』


「…………」


 それは祖母から、何かあった時の為に手札は多い方が良い、と勧められて受けた『国会議員政策担当秘書』の合格通知であり、同時に配属が父の下になっていた。


 甘奈は全てを悟った。全部、全部、父の仕業だ。即座に父へ連絡する。そして、父が着信を取ると同時に――


「もう、私に構わないで!!」


 自分でもびっくりするくらいの声でその一言だけ叫ぶと通話を一方的に切った。そして、父を着信拒否に設定した。


 本当に何様のつもりだ……

 母も……私も放置して、仕事を選んだのはあっちではないか……

 今更こっちに干渉してくるなら、何故母の最期に病室に来てくれなかったのだ。


「……もう……なんで……」


 既に受ける所は全て受けた。しかし、どの会社も父の圧力で弾かれたのだろう。

 甘奈はベッドに仰向けになって、これからどうするか悩んだ。自分は一生、父から離れられないのか……


「甘奈。どうしたんだい?」

「お祖母ちゃん……」

「おはぎ食べるかい?」

「うん……」


 甘奈は祖母の作るおはぎが大好きだった。それを食べながら事の経緯を話す。祖母は、あらあら、と困ったように頬へ手を当てた。


「剛三郎にも困ったモノだねぇ」

「困ったなんてレベルじゃないよ! 本当に……人の人生を何だと思ってるの……」


 不機嫌ながらも、おはぎをモグモグと食べる甘奈へ、祖母はある事を思い出した様に提案をする。


「甘奈や。お前が良ければ、ばあちゃんの知り合いの会社を受けて見るかい?」

「お祖母ちゃんの?」

「昔、一緒に働いてたんだよ。今、新卒を募ってるんだ。ここから少し遠いけど……どうする?」

「受けてみる」


 電話をして履歴書を送り、3日後に面接が決まった。

 祖母が言うには社長が代替わりした事もあって、規模を広げると同時に人員を増やすことを目的としているらしい。


 会社名も前と代わり、“人材派遣”と言う前口上が無ければ何の会社かわからない社名だった。






「甘奈、しっかりね。ダメだったら、お祖母ちゃんと一緒に次を考えましょう」

「うん、ありがと」


 誰よりも自分の味方で居てくれる祖母に甘奈は手を振って面接会場へ。

 場所はJRの最寄駅が近くにあり、そこから徒歩で行ける場所。そして住所を見ながらオフィス街にそびえ立つ、数あるビルの一つに辿り着く。


「えっと……」


 建物のテナント状況を見る。しかし、階の案内には『1課』『2課』『3課』『会議フロア』としか記載がない。


「凄く大きい会社なんだ」


 HPは古いままで、あまり詳しい事は解らなかったが、ビルを丸々使うとは規模はそれなりに大きい会社らしい。


「ん? おお、轟か? 随分と早ぇな!」


 すると、一階のエレベーターが開き、そこから大柄な初老の男が出てくる。明らかに鍛えている体格だ。


「轟甘奈です。今日はよろしくお願いします!」

「獅子堂だ。これ、名刺な」


 体格と名刺のサイズ差からちんまりとした印象の名刺を受け取ると、甘奈は一礼をして今回の席を作ってくれた事に感謝した。


「ガハハ、そう緊張するなよ。ちと早ぇが、面接をやるか!」

「は、はい!」


 少し威圧のある獅子堂は声に力がありつつもどこか頼もしい印象を受けた。


 面接は獅子堂と名倉の二人が対応し、甘奈一人だけで行われた。今までの面接の経験などから、変な緊張もミスも無く質問にはスラスラと答える。


「轟さん、最後に質問をよろしいですか?」

「はい」


 面接も終わりに入った時、名倉の質問が飛ぶ。


「正直な所、この会社は今、大きな改革が成されている最中で不安定な時期です。下手をすれば近年に倒産する事も考えられます。それでも我が社で働きたいですか?」


 名倉の話は祖母からも少しだけ聞いていた。しかし、それでもここに来た時点で心は決まっている。


「私は御社の状況を深くはわかりません。ですが……もし御社の一員になれたのなら、少しでも皆さんを助けられる様に心がけて働きたいと思いまふ!」


 最期の最期で噛んでしまった。甘奈は真剣な表情のまま、顔だけを赤くする。


「ガハハ! 頼もしいな!」

「ええ。その心構えを忘れずに」

「……はい」


 やってしまった……






 その後、もやもやしながら落ち着かない日々を過ごし、面接から一週間後、採用通知が届いた。

 両手を上げて祖母に報告すると、良かったねぇ、と一緒に喜んでくれた。


「甘奈。ここからじゃ、通勤は大変だろう? 会社の近くにはマンションはいくらでもあるし、会社からの援助も出る。一人暮らしをしなさい」

「お祖母ちゃんと一緒に居るよ。ジローも居るし……」


 犬のジローは捨てられていた所を祖母が最近保護した子犬だ。


「一人立ちして、剛三郎から離れるんだろ? 一度、やってみなさい。何かあったら何時でも帰ってきて良いから」

「うん……そこまで言うなら」


 確かに祖母の言うと通りだ。父から離れたいのに、ずっと実家暮らしでは意味がない。

 私は実家を出て、会社近くのマンションから通勤する事にした。大学も単位は十分で、卒業は問題ない。


 社会人としての準備を十分に整えて4月1日、新人式には私の他に何人か同期が居た。


 不思議な緊張感が漂う中、周囲の空気に全く呑まれない眼鏡をかけた人と、凄く綺麗で魅力的に映る人が居た。

 二人とも女性だけど、なんと言うか……オーラがまるで違う。ああ、言う人が大成するんだと何となくわかった。


「3課課長の獅子堂だ。業務内容なんかは追々教える。とにかく、一丸となって会社を盛り上げてくれれば良い! 期待してるぜ、新入社員諸君!」


 獅子堂課長の力強い言葉に圧された人も居たけど、同時に頼もしさも伝わったと思う。


 3課に1ヶ月間配属されて適正を見てから、1課と2課に振り分ける事になるらしい。新人研修みたいなモノだ。研修修了の時は新人歓迎会が行われ、課長は全員参加して居たので顔を合わせた。しかし、社長だけはどの行事にも不参加だった。

 未だに顔さえも見たことがない社長の事を聞くと獅子堂課長は、


「今、社長は色々と忙しくてな。俺たちは俺たちの仕事をすればいい! いずれ顔を出す事もあるだろうから、そんときは挨拶を忘れずにな!」


 特に気にする必要はないと言ってくれた。

 その後、私は1課の配属となる。ちなみにあの凄く綺麗な人はいつの間にか居なくなっていた。






「甘奈」

「あ、七海さん」


 1課に配属されて2ヶ月が経った頃には仕事にも一通り馴れ、大体の要領がわかってきた。


「今日、ご飯に行かない?」


 七海さんは1課に所属になった時、一緒に食事に行ってから仲良くなった。入社式に他とは違う印象を受けた眼鏡をかけた女性が彼女だ。

 仲良くなった経緯も彼女から誘ってくれた形だが、意外にも七海さんは会社とプライベートでは顔を上手に使い分けている。


「いいよ。いつもの所?」

「ええ」


 そんな感じで、週に一回程の頻度で週末に夜ご飯を食べに行く。高校、大学の頃から父の影響もあって友達の様な関係の知人は居なかったので、七海さんと友達になれたのは素直に嬉しかった。


「よし、何を食う?」


 小さな洒落たバーに入る。店に着くや否や、七海さんは社会人モードを解除して取り繕わない口調になった。


「仕事は問題ねぇけどよ、社内の“体制”ってヤツが不安定って話が少し気になるよな」

「そうだね……」


 働いて見てわかった。今の会社の福利厚生や待遇は、今の時代では珍しい程に社員に寄り添ったモノなのだ。

 課長の手腕もあるかもしれないが……毎月、殆んど残業無しで帰れるのはその、“体制”とやらが深く関係しているのかもしれない。


「噂だと、前社長の“置き土産”を今になって、返済してるらしいぜ」

「でも……給料や休みはキチンとあるよね?」

「だから不安なんだよ。溜まりに溜まって、爆発して倒産、なんて洒落にならねぇからな」


 新入社員の大半は今の仕事と定時で帰れる現状に満足して、会社の中身を深くは考えていないが私は違った。

 やっと父の庇護下から逃れて働く事が出来たのだ。この環境を手放したくない。


「……私たちに出来ること……ないかなぁ」

「まぁ、その話を深掘りする為にも、情報源を呼んできた」

「情報源?」


 すると、店の扉が開き、そこから新人式を最後に姿を見かけなくなった“綺麗な人”が現れた。


「遅かったな、詩織」

「少しもたついてね。ケイ、その人――」

「前に話しただろ? 同期の甘奈だ」

「あ! 轟甘奈っていいます!」


 彼女の持つ雰囲気から思わず立ち上がり、頭を下げて挨拶する。


「かしこまる必要は無いわよ。鬼灯詩織(ほおずきしおり)です。同期だし、詩織って呼んで頂戴」

「シオリ……さん?」

「もう一つ、ランクを下げて」

「シオリ……ちゃん?」


 ニコ、と微笑む様に思わず顔が赤くなる。


「わ、私も……甘奈で良いです」

「そう? よろしくね、甘奈」

「おいおい、俺の方が付き合い長げぇのに、もう詩織の好感度が上になっちまったか?」

「あ、そ、そんなことないよ!」

「じゃあ、俺の事は何て呼んでくれるんだ?」

「えっと……ケイ……ちゃん?」

「ハハ、悪くねぇな」


 これが私にとって、生涯で掛け替えのない親友となる二人との出会いだった。


「中々に良い店だ。気に入ったよ」


 と、シオリちゃんの後ろから男の人の声が聞こえた。その声に私はケイちゃんの後ろに隠れる。


「うげ……詩織、連れて来たのかよ」

「信憑性を高める為にね」

「相変わらず辛辣だねぇ、子犬ちゃんは。子猫ちゃんの立ち振舞いを見習えば、男受けはいいぜ?」

「あー、そうっすね」


 現れたのは日本人ではなく、イギリス人だった。仕事終わりの様にスーツを緩く着ており、普段はキッチリして居る様が伺える。視線が私に向く。


「ん? その子はニューフェイスかい?」


 そこで社会人として失礼な事になっていると思い至り、キチンと自己紹介せねばとケイちゃんの影から出る。


「と、轟甘奈といいまふ!」


 噛んじゃった……


「オレは会社の筆頭顧問弁護士アーサー・スタンリーだ。君たちからすれば先輩かな? よろしくね、小鳥ちゃん」


 なんか、この人……苦手になりそう。






 シオリちゃんは私たちと同期だけど会社の顧問弁護士の一人として活躍しているらしく、課には所属していない。だから新人式には出席していたが、その後の新人研修には姿を見せなかったそうだ。

 そして、顧問弁護士と言う立場上、今の会社の現状について知れる状況にあるらしい。


「今、この会社に社長は不在なの」

「ええ!? そうなの?!」


 私は、社長は代替わりしているとだけ聞いていたので、まさか……トップの席が空席とは思わなかった。


「甘奈、驚き過ぎだ」

「小鳥のさえずりは、もう少し可愛くお願いな」

「あ……ごめんなさい」


 シオリちゃんの発言に、つい声を上げてしまった。


「マジでやべー事になってんだな。大丈夫なのか?」

「全然大丈夫じゃないわ。なるべく、情報には蓋をしてるけれど……人の耳と目は思ったよりも鋭いの。不穏な空気が一気に押し寄せたら、退職を希望する人も出てくると思う」

「そんな……」

「まぁ……俺たちがそれを止める事は出来ねぇよ。沈む船に乗り続ける意味は無いからな」

「君たちもまだ若い。再就職を考えるなら今の内から転職活動をしておく事をオレなら勧めるかな」


 アーサー先輩は私達の事を気づかってその言葉を出したのだろう。


「俺は降りねぇよ。この会社には色々と関係が多すぎるんでな」


 ケイちゃんは今の1課課長の実娘と言う事もあるのか、会社を去るつもりは無いらしい。


「私も出来る限りの事をやります。それに、まだ希望はあるでしょう? アーサー先輩」

「やれやれ、子猫ちゃんは察しているか」


 一度、シオリちゃんにお酌されたオチョコの日本酒を飲んだアーサー先輩はポツリと語り出す。


「黒船正十郎。前社長の息子さんで、色んなツテを使って旅をしている所を突き止めた。それで、現状を伝えたよ」

「そ、それで! どうなったんですか?!」


 全員がアーサー先輩の次の言葉を待つ。そして、


「すぐに会社を継ぐ事を選んでくれた。と、言うよりも前社長と会って、継ぐ事を前提に帰国する最中だったんだよねー」

「先輩……変に言葉を溜めないでください」

「良かったぁ……」


 私とシオリちゃんは一安心に息を吐くけれど、ケイちゃんはどこか表情が浮かない。


「……やっぱりアイツか……」

「ケイちゃん?」

「ん? あぁ、ワリィ。空いた席が埋まるのは良いことだな」

「子犬ちゃんは、彼と何か因縁があるのかい?」

「大した事じゃないですよ、アーサー先輩。プライベートな事なので」

「なら踏み込むのはよそう。訴えられそうだ」

「どーも」


 と、ケイちゃんはビールを飲む。


「問題は山積みだが生き残る道もある。違うルートを個人的に模索するのは悪くない事だ。君たちは、今後も会社でやって行くつもりかい?」

「何度も言わせるなよ。俺は降りる気はないぜ、先輩」

「私も新人ですが、状況は理解しているつもりです。まだ諦めるには時期尚早かと」

「わ、私も! 出来ることは……そんなに多くないかもしれませんけど……頑張りまふ!」


 と、各々で宣誓する中、もっとも派手に転んだ様に最後を噛んでしまった。うぅ……恥ずかしい……


「そうだな。俺も頑張りまふ」

「私も頑張りまふ」

「もー! 二人とも止めてー!」


 ははは、ふふふ、とからかってくる二人に少し酔いが回った私は眼をぐるぐるさせて怒っていただろう。


「フッ、なるほど。オレはどうやら君たちを見くびっていたようだ。今後の君たちの活躍に期待して、『アーサーブレンド』をご馳走するぜ!」


 すると、アーサー先輩はどこからともなく、簡単なコーヒーセットとカップをテーブルに置いていく。先輩の手持ちは鞄だけだったハズ……どこから取り出しているんだろう……


「マスター、少しお湯を貰っても?」

「構わないよ」

「もう、淹れる流れになってやがる……」

「ふふ。こう言う人なの。面白いでしょ?」

「面白いって言うよりも……変?」

「アーサーブレンドは、ほろ苦い大人の味だ。ミルクと砂糖は野暮。これで乾杯と行こう」


 一緒にコーヒーを飲むのって乾杯で良いのかなぁ?

 ちょっと答えの出そうにない杯を掲げつつも、私は今後の会社の為に自分に出来る事をすると、決意を新たにした。

 『アーサーブレンド』は苦かったけど、普通に美味しかった。






 その後、何度か四人で集まる事が多くなった。

 アーサー先輩が新しいブレンドを作ろうとしてお腹壊して入院したり。(ケイちゃんは、アホか、と呆れていた)

 ケイちゃんは道場に通う、かなり腕の立つ格闘家だったり。

 シオリちゃんは非の打ち所が無いくらいに仕事もプライベートもこなしていたり。


 四人で出掛けたりして充実した日々だったと思う。月に一度帰る実家で祖母には毎回、良い土産話をすることも出来た。

 祖母も楽しそうに話す私に、よかったね、とおはぎを作ってくれた。


 けれど、新しい社長は人前には現れなかった。忘年会でも新年の挨拶でも、事情があり欠席と言う事になり一般社員はその姿を見ることもなく、二年の歳月が流れる。


 ある日、週末の食事に行った時に、シオリちゃんからアーサー先輩が会社を辞めた事を教えられた。


「は? どう言うことだよ?」

「え? な、なんで?」


 ケイちゃんも驚いている。やっぱり、急な事だったんだろう。


「私も解らないの。減った人員の補填はしてくれたのだけれど……理由は言わなかったわ」


 けど、シオリちゃんはある程度推測は立てていた。

 アーサー先輩は世界の司法を学ぶために日本に来たと言っていた。日本での契約は前社長と交わしたそうで、正式に会社が代替わりしたら去る様な事を仄めかしていたらしい。


「んだよ。無責任だな」

「去っても問題ないって思ってくれたなら喜ぶ所なのだけれど……私も急な事でちょっとね」


 週末はよほど忙しく無ければ四人で過ごすのが当たり前だっただけに、少し寂しく感じる。


「あ、そうそう。ケイと甘奈に伝言があるわ」


 そう言って、シオリちゃんはアーサー先輩からの手紙を私たちに手渡した。


「今時手紙かよ」

「年賀状以外で貰ったの初めてかも……」

「私のデスクの上に置いてあったのよ」


 ケイちゃんは手紙を開けると中身を読む。


「えー、なになに? “子犬ちゃんは上を目指せ”なんだこれ?」


 手紙の真ん中にポツンと書いてあった一言を私たちに見せる。


「何て言うか……言葉で済みそうね」

「置き土産も意味わかんねぇ先輩だったな」


 ちょっと不安になりつつも、私も手紙を開ける。


“小鳥ちゃん。君が彼には必要になる”


「…………」

「なんだ? 甘奈、お前……男いんのか?」

「い、いないよ!」


 心当たりは全く無い。そもそも男の人は苦手なのだ。二人きりで合うなんて考えた事もない。

 ちなみにケイちゃんと同じでポツンと書いてあるその一言以外は白紙だ。


「ちなみにシオリは何だったんだ?」

「はい」


 シオリちゃんは、自分宛の手紙を見せてくれた。

 そこには、シオリちゃんが如何に優れていて、将来どの様な仕事に就いても人の上に立つことが出来る旨を、二枚目までびっしりと書かれていた。英語で。


「……あのヤロウ……この手紙で余力全部使い切っただろ。これだけ自分の国の言葉で書きやがって」


 ケイちゃんは、もう居ないアーサー先輩に悪態をつく。

 アーサー先輩は最後まで、私たちに強い印象を残して去ったのだった。






 アーサー先輩が会社を去ってから1年後に、遂に会社にも表立った変化が起こった。

 なんでも、会社は多くの負債を抱えていて、それが社員にしわ寄せが来るとか、根拠もない噂が流れ始めたのだ。


「え……? 平野さん辞めちゃったの?」


 その波は1課にも現れ始める。


「みたいだ。ったく……どこかで誰ががトチったな。噂が誇張し続けてやがる」

「シオリちゃんは……」

「アイツはここ二週間は裁判にかかりっきりだ。相手が相手だからな。顧問弁護士総出でぶつからないと勝てないらしいからよ」


 ケイちゃんが言うには、前社長の件に関して、多くの事案が動いているらしく、中でも弁護士界隈の『無敗』と『伝説』がこちらを的にしたらしい。


「……大丈夫だよね?」

「アイツが負ける事を想定できるか?」

「ううん」


 俺たちが信じてやらねぇとな、とケイちゃんは仕事に戻った。

 自分に出来る事をやる。その志しは三人とも同じだ。そして、こんな時にアーサー先輩が居てくれれば、と思うのも同じだった。


 けれど、不穏の波は止まらなかった。

 情報はまるで洪水のように流れて、会社が裁判沙汰になっている事や、相手が『無敗』と『伝説』である事も周知され、退職者が後を経たない。

 先輩も何人か辞めて、ケイちゃんは繰り上がりの様な形でグループリーダーになった。いずれは、そうなる仕事振りだったけど、それがだいぶ早まった形だ。


 自分の仕事をこなしつつ、部下の動向にも気にかける。そんなケイちゃんの負担を減らしたくて、私は出来る事を選択した。


「その仕事、私がやります」


 私は今まで1課の業績を落とさない為に、出来る事として膨大なマルチタスクをこなす事を選択する。

 高校時代で良くやったことだ。ソレを思い出せば良い――――






 甘奈はその日から多くを引き受けた。

 辞める先輩の仕事を引き継ぎ、顧客先や取引先へ赴いてこれまでと変わらない業務を提供する。

 そして、社に戻れば別の業務に取り掛かる。

 本来なら二、三人でやる仕事を甘奈は一人で捌いて行った。

 グループリーダーになった七海は、大きな仕事にかかり、鬼灯も忙しさから週末の集まりもその時から途絶える事になる。

 そして、月に一度は帰っていた実家への帰省も電話で済ませる程に余裕が無くなって行った。

 技量も内容も問題ない。ただ、問題があったのは、時間と人手だった。


 3課の援護を貰いつつも、社の業績を落とさない為に、2課はどんどん仕事を取ってくる。それは悪い事ではない。元々、それを捌けるだけの人員と人材は十分に揃っていたからだ。


 しかし、会社が裁判沙汰になっていると言う不安は、自分達の経歴に傷がつくのでは? と退職者が後を経たない。

 課長たちも一度は引き留めはするものの、やはり強くは言えず人は減って行き、噂から新たに入社する人員も増えなかった。


 残った社員の負担も大きくなり、それが原因で更に人は辞めて行く。それに伴って、甘奈の抱える事案は増えて行った。

 それでも、彼女が辞めなかった理由はただ一つだ。


 七海や鬼灯、課長たちも会社を何とかしようと戦っている。それに背を向ける事はまったく考えられなかったからだ。


 出来る事は目の前の仕事を捌き続ける事だけ。絶対にこの会社は良くなる。そうでなければ、残った人たちが一生懸命に仕事をする意味が無くなってしまう。

 私が……少しでも皆を助けるんだ!


 その思いだけが甘奈を動かす。


 そして、七海の関わっていた大きな仕事に原因不明のミスが発覚し、顧客に呼び出され強制的に対応する事になった。

 例の噂もあってこちらへの不信感が高まったからだろう。

 課長と七海がその対応に追われ、一週間ほど会社を離れる事になり、顧客先へ原因の究明へと赴く。


 そして、1課では一番仕事が出来て、状況を把握するのは甘奈だけとなった。自分よりも先輩社員は皆、辞めていたからである。


 指示を出して、自分の仕事もこなし、後輩の質問等も嫌な顔をせずに対応した。

 負担はいつもの倍。自分のやらなければならない仕事は進まない。それでも埋め合わせをするために、彼女は休む時間を削る。


「轟先輩。手伝います」

「私よりも、あっちを手伝ってあげて」


 常に会社に居る甘奈を見かねて後輩の一人が声をかけるも彼女は断った。


 今の甘奈は複雑なロジックを元に、一人で何件もの仕事を動かしていた。誰かに仕事を振ればその説明に時間を取られ、チェック等を含めると、自分がやった方が早いと言う結論に至っての行動である。


「私は大丈夫だから。何かあったら質問してね」


 それでも、甘奈が誰も頼らなかったのは、それをこなすだけの能力を持っていたからだ。

 ミス無く、顧客の要望には滞りなく対応し、会社の質を落とすこと無く仕事を捌き続ける。端から見れば超人的な動きに見えただろう。

 唯一、彼女に足りなかった物は時間だけ。しかし、それも徹夜をすれば帳尻を合わせられると睡眠時間を削りに削った。


 24時間の中でどの様に効率的に動くかを常に模索し、いつもなら強制的に帰らせた、七海や課長の存在も無いその時ばかりは、ブレーキを失った様に物事を詰め込み続けた。


 そして……遂に限界が来る――


「ちょっと、お客さんと打合せに行ってくるね」


 荷物を持って1課のオフィスを出る。いつ眠ったのか忘れる程に己のスケジュールをこなし、本日帰ってくる課長と七海の二人を問題なく迎えられる事を少しだけ考える。


「甘奈」


 廊下へ出た所で帰ってきた七海と鉢合わせた。


「ケイちゃん……」

「おいおい。お前……寝てるか?」

「うん……ちゃんと仮眠取ったよ」


 大丈夫、と笑って見せるが七海から見ると甘奈は今にも倒れそうな雰囲気だった。


「今日はもう帰れ。課長には俺が話しとくから」

「……ダメだよ……打ち合わせに……終わったら……資料を確認して……今日中には返答しないと……後、現場に行ってる人の進捗の確認も――」


 今、必死に仕事を回している様子を察した七海はそれらが一段落しなければ甘奈は絶対に帰らないと悟った。


「わかった。俺も一緒に行くぞ。道中で打ち合わせの説明をしてくれ」

「私は大丈夫だよ。ケイちゃんは自分の仕事をやって」

「大丈夫じゃねぇ。いいか、お前が何と言うおうと俺も一緒に行く」

「轟先輩! よかった……あ、七海リーダー、お疲れ様です!」


 その時、オフィスから後輩が慌てて駆け寄ってくる。


「どうしたの?」

「今、お客さんから電話がありまして、打ち合わせは午後にして欲しいと」

「そうか。丁度良い。甘奈、お前はちょっと仮眠を取れ。何かあったら俺が対応して――」


 ドサッ、と何かが倒れる音に七海は視線を向けると、甘奈がうつ伏せに倒れていた。


「甘奈!!」

「轟先輩!」


 打ち合わせ……午後になったなら……返答を繰り上げて……先に対応を……あれ……身体……動かない……起きなきゃ……皆に迷惑……かけちゃ……う……


「救急車呼べ!」

「は、はい!」


 やらなきゃ……仕事……まだ沢山……


 甘奈の意識は己の意欲に判する様にゆっくりと暗転して行った。






「…………」


 ピッ……ピッ……ピッ……

 断続的な機械音に甘奈はゆっくりと眼を開けた。見えるのは真っ白な天井。そして、点滴に――


「甘奈!」

「お祖母……ちゃん?」


 大好きな祖母がこちらを覗いていた。自分はベッドに横たわって点滴の管が肘から伸びている。


 何で……病院……? お祖母ちゃん……私は会社に……


「本当によかった……倒れたって聞いてね……」

「倒れた……私――」


 そして、記憶が一気に戻ってくる。こんな所で倒れている場合ではない!

 甘奈はガバッと身体を起こすと時間を見る。時計は朝礼前の時刻を指していた。

 あれ……? 時間が巻き戻ってる?


「お前は一日寝てたんだよ」

「一日……一日も!?」


 まずい……質問の返答を出来て無いし、打ち合わせも出来なかった。まだまだ、終わっていない事案は後ろに並んでいると言うのに、急いで帳尻を合わせなければ!


「甘奈、お前が起きたら七海さんが連絡する様にって言ってたよ」

「え? どっちの七海さん?」

「女の人さ」


 甘奈は近くに置かれたスマホを取り、七海へ連絡をかける。すると、一、二コールで出た。


『よう、目を覚ましたか』

「ケイちゃん! お客さんとの打ち合わせは!? 私、すぐ戻るから!」

『大丈夫だ。俺が対応したよ』

「質問も来てたの! すぐに答えないと――」

『それも、もう終わってる』

「それだけじゃなくて――」

『お前の抱えてた事案は、皆に配って何とか回してるよ。ったく……これ全部一人でやろうとしてたのか?』

「うん……十分に終われるスケジュールを組んでたから……」

『そこに、お前の休む時間はどれだけ入ってる?』

「一日、一時間くらい……」

『この馬鹿』


 その罵倒は、悪意あるモノではなく、呆れた様な口調だった。


『課長からだ。お前は一週間、会社に出てこなくていいってよ』

「ええ!!? ダメだよ! そんな! 今……皆大変なのに!」

『これは課長からの命令だ。会社としては労働基準を大きく逸脱した行為による措置なんだよ。社員が倒れるまで働かせたなんて、訴えられたら、間違いなく負けるからな』

「私……訴えるなんて――」

『お前じゃなくてもお前の身内がな。とにかく、きちんと休め。課長から追って指示が出るから。そんじゃな』


 と、通話が切れた。

 訴える……そんな事は私は絶対にしない。祖母も私が頼めば溜飲を抑えてくれるだろう。問題は――


「さっきまでね、剛三郎が居たんだよ」

「…………」

「お前が病院に運ばれて、眠ってる間、ずっと居たんだ。頭を下げる男の七海さんに、怒鳴りはしなかったけど本気で怒ってたよ」

「…………」

「甘奈。頑張るのは良い。でも、無茶はしちゃ駄目だよ。何度もこんなことが起こったら……お祖母ちゃんはお前の事を応援出来なくなる」

「……ごめんなさい」

「約束だよ? 一人で絶対に無茶はしないって」

「うん……」


 その返事に祖母は笑みを浮かべる。


「それと、剛三郎からの着信拒否は解除してあげなさい」

「それは……考えとく……」


 すぐには埋められそうにない息子と孫娘の関係を祖母は末長く見守る事にした。


「おはぎ、作ってきたけど食べるかい?」

「食べる」






 それから甘奈は実家で過ごした。

 前までは仕事でひと月に一度の帰省が出来なかった事もあって、祖母へ存分に孝行したかったのだ。

 ジローと遊んだり、祖母の肩を叩いたり、悩んだ末に父からの着信拒否を解除したり、久しぶりに仕事を忘れた一週間はすぐに過ぎ去った。そして、


「轟です」

『元気そうで良かった。体調はどうだい?』


 ジローのブラッシングをしていると課長から連絡が来る。


「もう、完璧です! これからでも全然働けます!」

『ハハ。良い意欲だが、今回の件に関しては我々も看過できない事案だ。私も忙しかったとは言え、気付けなかった事は、本当にすまないと思っている』

「そんな……私が悪いんです。課長も会社は……何も悪くありません!」

『いや、これは私の監督不行き届きだ。処罰が下るだろう』


 人が倒れるまで働かせたと言う事実は社内外でも会社の評判を落とすには十分な事例だ。


「そんな……」

『だが、問題は私だけでは無いと言う事だ。轟君、理不尽かもしれないが、君にも処罰がくだされる』

「え……?」

『会社の労働規則に逸脱した行為だったからだ。綿密に調査をして、回りに仕事を頼める環境にあったにもかかわらず、一人で無理をしたと言う点がかなり問題でね』

「そ……そんな……」

『私もその事に関しては社長に説明したのだが、規則は規則はだと一蹴された』

「うう……ごめんなさい」


 会社は只でさえ大変な時期なのに問題を作ってしまった事に甘奈は申し訳ない気持ちで一杯になる。


『轟君、明日出社したら社長室へ行ってくれ。そこで、社長が君の今後の処遇を言い渡すそうだ』






「…………」


 次の日、少し早めに出社したが、私は1課のオフィスには寄らずに最上階の社長室の前に直接足を運んだ。

 1課の面々には会わす顔が無くて、真っ直ぐここに来たのだ。


「やっぱり……クビかなぁ……」


 社長自ら言い渡す程だ。間違いなく良い話では無いだろう。それでも……何とか会社に残して貰えるように説得しなければ!


「おや? 早いね」


 ノックをしようとした時、横から声をかけられて思わず、身体がビクッとする。


「お、おはようございます!」

「やぁ、おはよう」


 そこに居たのは若い社員だった。年齢的には私と同世代と思える程に若々しく、エネルギーに溢れている様を感じる。しかし、同期の中に彼の姿はなかったと記憶がある。


「社長に何か用かい?」

「え? あ、はい! 呼ばれてまして……」

「ああ、君か。なるほど、うん、良いね!」


 何がだろう……

 じっと見られたが、それは下卑た視線ではなく、人の本質を見抜く様な……力を与えるような視線だった。


「私も用事があってね! 取りあえず、中に入ろうか!」

「え? あ、はい!」


 ハキハキとした物言いに、彼はノックもせずに社長室へ入る。あわわ、と私は思ったが社長は不在だったのでほっと胸を撫で下ろす。

 すると共に入室した彼は奥のデスクへ行くと、荷物を置き寄りかかる様にこちらを見る。

 え……?


「私が社長の黒船正十郎だ!」


 腕を組んで、堂々とした突然のカミングアウトに状況が追い付かず、暫しフリーズ。そして、


「しゃ、社長!? わ、私……失礼しました!」

「ふっはっは! 別に良いよ! 硬っ苦しいのは好きでなくてね! あ、ココア飲む?」

「え? あ、はい……いただきます……」


 社長は社内の自販機で買ってきたであろう“美味しいココア”を手渡してくれた。

 どうしよう……言いたいことは沢山あったのに……出鼻を挫かれて、言い出せないよ……


「轟甘奈君」

「は、はい!」

「君は中々に派手な事をやってくれたみたいだね」

「……はい」

「様々な人に君に関する話を聞いた結果、君は1課には適さない人材であると判断した。私と課長全員がね」


 その言葉に、私はもう何を言っても無意味だと悟った。間違いなく解雇だろう。


「そこで君には私の隣で仕事を手伝って欲しい。どうかね?」

「……え?」


 それが、人生で最も多くの時間を共に過ごす事になる正十郎さんとの出会いだった。






「阿見笠」

「ん? 珍しいね、お前からオレに話しかけるなんてさ、火防」

「お前の利用しとる情報屋、名前は何と言う所じゃ?」

「スイさんのトコ? 『スイレンの雑貨店』だけど」

「どうすれば依頼を受けてくれる?」

「オレの紹介だって言えば良いよ。後、行くときは閉店後から10分以内にドアをノックすれば良い。けど気まぐれだからねぇ、スイさんは」

「そうか」

「どうしたん? なんかあった?」

「娘が倒れた。そこまで追い込んだ会社を潰す」


 それが理由ならスイさんは受けてくれるかもね、と阿見笠流(あみかさながれ)は同期の火防剛三郎(ひぶせごうさぶろう)を見る。


「後で連絡先を教えるよ」

「おう」


 やれやれ、火防の親バカ具合に甘奈ちゃんも大変だねぇ、とナガレは肩を竦めた。

甘奈

挿絵(By みてみん)


30代。女。一人称“私”。

社長の黒船に付き従う社長秘書。

元は一課の社員で、七海、鬼灯とは同期。二人の事は下の名前で呼んでおり、プライベートでも仲が良い。

内気な性格で自己評価が低く何かと悩みを抱えがち。しかし、ガツガツと踏み込んで来る黒船によって解消される事が多く、彼女の方も頼りにしている。

何かと褒めちぎる黒船の言動に常に顔を赤くしているものの、仕事関係においてはミスをせず、社外では特に黒船の補佐と諫める役回りを担う。


黒船とはプライベートでも親密であり、彼の過去と追い求める“理想の全て”を聞き、それを全力で支える事を決意した。

父親とは仲が悪く、何かと距離を置くような対応をしている。

残業のプロ。二徹くらいは普通にできる。秘書になってからは止められている。

社員旅行編では意図せず黒船と混浴した。

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