鑑賞
三題噺もどき―ごひゃくきゅうじゅうはち。
携帯を片手に階段を上る。
リビングから自室へと戻り、冷え切った空気のこの部屋を少しでも暖めようと、ヒーターを入れる。大きなものじゃないから足元だけしか温められないが、まぁそれでも十分だろう。
オイルヒーターがあるにはあるが、仕事をしないので、部屋の外に出してある。
全く温まらないんだから、この狭い部屋には大きくて邪魔になるだけのものはいらない。
「……」
携帯を机の上に置き、開かれていたカーテンを少し閉める。
開いていた方が光が入るのでいいのだけど、この時間帯はパソコンの画面に反射してしまって見づらいことこの上ないので、ほんの少しだけ開けて置く。
隙間からはいる光でも十分足りるほどに今日はよく晴れている。
「……」
いい日和ではあるが、風が全くかわいくない程冷たいので、絶対に外には出ない。
ホントは色々と掃除をしながら、片づけをして、モノを捨てたり整理したりしたいところなんだけど。あまりにも寒くて、買い物に出るのも嫌なので、何かが必要になりそうな掃除はしない。
明日か明後日から母も休みだから、そのくらいのタイミングで本格的に掃除をすればいいのだ。
「……」
今日はなんとなく興が乗ったので。
一人で映画鑑賞をすることにした。
プロジェクターでもあれば、部屋の壁に映してみたりとかしたかったけど、そんなものはないので、小さなパソコン画面で見ることにする。
「……」
リビングから持ってきた少しのお菓子を適当に置いて。
コースターの上にマグカップを置く。中身はカフェオレ。多分これだけじゃ足りないから、水筒に水も入れてきた。水分補給の癖がないから、集中すると忘れるかもしれないけど……ま、喉が渇いて途中で止めるよりはいいだろう。
「……」
残念ながら、炭酸が飲めないので、コーラ片手にとはいかないが……ほんとはそうでなくても映画鑑賞中に飲み物を飲むこと自体あまりしないんだけど。家だから良いだろうということで、こうして飲み物と食べものを用意した。
映画館ではあまり買わない。というか絶対買わない。音があると集中できないし匂いが充満するので気分が悪くなるのだ。
「……」
まぁ、そんなことはさておいて。
とりあえず、まずはパソコンを起動させなくてはいけない。
電源を入れて、ロックを解除する。顔認証だから何もしないで勝手に開く。
「……」
少し時間をおいて、マウスを動かす。
こう、たまに画面にポンポンとウィンドウが開いたりするんだけどアレはなんだんだろうな……あまりこの手のモノには詳しくないので全く分からない。すぐ閉じると言うか消えるから尚更。ま、起動するのに必要なんだろうなというくらいの認識でしかない。
「……」
タスクバーではなくて、スタートにピン止めしているアプリを開く。
あまり頻繁に見ないからタスクバーに入れていないんだけど、これから見る回数が増えるなら移動しておこうかな……ま、そのうちで良いんだけど。
「……」
見るものは決まっているので、検索をかける。
最近動画サイトで映画の紹介動画を見るのにはまってしまったのだけど。その中で面白そうなのがいくつかあって探してみたら、そのうちの何作品かが自分で登録しているアプリで見れることがわかったので、こうして1人映画鑑賞会を始めているのだ。
「……」
たまにレンタルだったりするんだけど、これは見れるようで安心した。
どういう流れでこの映画の紹介動画に繋がったのかは全く覚えていないが……割と有名な映画らしい。多分。知らないけど。洋画はあまり見ないので詳しくはほんとに知らないのだ。魔法使いの映画くらいしか見てない……。
「……」
B級映画ってわけでもない……と思うんだけど。どうなんだろうか。その辺の判断は誰がしているんだろうな。少々…というかだいぶ残酷描写というかグロイらしいので、当然のようにR指定である。
「……」
こういうのに耐性は確かにあるが、あまり見てこなかった。ホラー系をあまり見なかったのもあるのかな……日本のホラーは割と見たりしていたけど。あんまりグロイのは見てなかったかもしれない。
「……」
まぁ、ある殺人鬼の関わる話の映画なんだけど。
……食べる余裕があるのかなコレ、お菓子とか持ってきたけど食べれないかもしれない。集中して。それとも、多少散漫にしていた方が楽に見れるのかな。というか、これ、最初に見ていいやつなのか……まぁ、いいか。
「……」
再生ボタンを押し、画面いっぱいに映像が映るようにする。
映画鑑賞会の始まりだ。
お題:携帯・殺人鬼・コーラ