悪魔の質問
掌編小説2
お題:風、悪魔、門
ある夏の夜、私は彼氏と都市伝説について話していた。
朝起きると部屋が異世界に転移していてそこで悪魔に質問をされるという話だった。
話の内容にはさほど興味はないが、私は彼氏と他愛もない話をするこの時間がとても好きだ。
だから「おやすみ」と言うときには毎回心が痛む。
また明日も彼氏と話せることを楽しみにして私は眠りについた。
朝起きて、今日が始まる。
いつものように出かける準備をしようとドアノブに手をかける。
そこで私は違和感を覚える。
夏なのになぜか肌寒い。
私が漠然と外を見ると真夏の朝とは思えないほど暗く、紫がかった雲が空に沈んでいる。
極めつけはゴウゴウと音を立てて人をさらうかのような風が吹く。
早く彼氏に会ってあったまりたいなと思いドアノブを回すとドアの向こうから声が聞こえてきた。
「私は悪魔だ。この部屋は異界へとつながった。元の世界に戻りたければ私の質問に答えろ。」
私は「わかった。」と頷いた。
「一問目」悪魔は言う。
「お前の名は何だ。」
ひどく簡単な質問に私は拍子抜けした。
「美雪」私は答えた。
「正解だ」
悪魔が言うとチリンと風鈴のような音がした。
風鈴、私が彼氏との初デートの際に買ったおそろいのストラップが風鈴型だったな。
そう思っていると
「二問目」悪魔は言う。
「お前の最も大事な人はだれだ」
私は即答する。
「彼氏」
私の最も大事な人は彼氏以外には存在しない。
彼との初デートでの食事も彼と最初にキスをしたあの観覧車も私の心に深く刻み込まれては離れない。
ゆくゆくは彼と同棲をして一姫二太郎を授かりたい。
早く彼氏に会わせて欲しい。
私はドアノブにかけた手を握り直しドアを開けた。
そのドアの前に立っていたのは彼氏だった。
彼氏はバツが悪そうに私を見ていた。
よく見ると手にはボイスチェンジャーが握られている。
「うそ、ちょー恥ずかしい」私は言う。
彼氏は笑いながら言った。
「恥ずかしいのは僕の方だよ。だってこれから驚かそうとしてたのに見られちゃったんだから」
本当は感動する話だったのに