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夏 肉持ち
<夏>
本部長へ、大変質の良い肉を運ぶ。
会食が大変多い人で、一度「もう寿司など飽きてしまった」と聞こえたことがある程だ。
黒塗りの大皿には、恐らくA5ランクの、とか星がいくつとかそういう、縁のない枕詞がついているであろう少量の霜降り肉が、恭しく鎮座している。
運ぶこちらは大変みっともない人間なので、不似合いで仕方ない。
案の定、運んできたこちらを見て本部長は、何故お前がという目で声もなくせせら笑った。
皿を差し出すと、物言えぬ獣にやるように手で「そこに置け」と示された。
その通りにすると、もう彼はこちらを二度と見ない。
立ち去る事すらできず、俯いたまま木偶の坊でいるより他なかった。