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2番目の恋物語  作者: violet
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婚約解消の日の王家

時間は遡って、ヴィヴィアンヌが10回目の告白をした翌日。トラファルガー公爵が王と謁見をした日の話になります。

トラファルガー公爵がヴィヴィアンヌの婚約解消を王と話し合った夜、王家の食事には全員が揃っていた。

王より、王妃、二人の王子に話があると招集されたのだ。

外交団が来る時や、儀式の時など打合せを兼ねて食事会が行われるのは珍しいことではない。


「ジェラルディン、婚約の事だがもう2年になる。通常なら結婚の準備にはいるのだが?」

王がおもむろに話を振ると、ジェラルディンは困ったような顔をして、兄の王太子ディアランをバレないように横目で見る。

王太子は平然としているが、ジェラルディンには兄が神経を(とが)らせているのがわかる。

未だに婚約者を作らない兄は、自分の婚約者であるヴィヴィアンヌに好意を持っているのだ。それが、ジェラルディンには気持ちがいい。

入り婿になるのではなく、ヴィヴィアンヌに()われて仕方なくトラファルガー公爵家を継いでやるのだ。

王になれない王子は1代限りの公爵として、小規模の領地を賜って臣籍降下になる。王領から賜る領地は王都から離れた土地が多い。王家としても代々の王子に領地を分けて、王領が無くなってしまうのを避けねばならない。王家として保有しなければならない領地を除いた地域が、王子に下賜される。そしてよほどの功績を残さない限り、次代からは伯爵か子爵になる。

広大な領地と多数の事業を持つトラファルガー公爵家は、王家であっても次男には極上の物件である。

しかもヴィヴィアンヌは美しい、その彼女が自分に(かしず)いているのは楽しくて仕方ない。


ジェラルディンがヴィヴィアンヌに冷たい態度を取るのを(とが)められたのは、一度や二度ではない。

今回もそれか、公爵家から結婚の時期を打診してきたのかと思い、ジェラルディンはいつものように答える。

「王族として誠意をこめ、トラファルガー公爵家には対応しています。ご令嬢の望むとおりに」

ヴィヴィアンヌが自分を好きだから仕方ないとばかりに、ご令嬢の望む通りに、と強調してジェラルディンは言う。

公爵令嬢が望むから、王子の俺が婚約してやったのだ。

兄のディアランが手にするカトラリーが小さな音を立てたのを、ジェラルディンは聞き逃さない。

先に生まれた、それだけで王位を得る兄。だが、兄の欲しいヴィヴィアンヌは僕のものだ。


昨日も、お慕い申し上げてます、などと言ってたじゃないか。

ヴィヴィアンヌの心は僕のもので、結婚すれば身体も公爵家も僕のものだ。

「父上のお考えのとおりに、進めていただいて結構です。

僕は、これで失礼します」

ジェラルディンはカトラリーをテーブルに置くと、給仕に茶は部屋に運ぶように指示をして席を立った。

結婚したら優しくしてやってもいい。

嬉しそうに笑うヴィヴィアンヌを想像して、ジェラルディンは食堂を出て行く。


ジェラルディンが食堂から姿を消すのを確認して、王はディアランを見た。

「話がある」

そして、王妃から話が漏れるのを警戒して、王と王太子は執務室に場所を変えた。


「公布するまでは、内密にせねばならない」

侍従も下げ、執務室には王と王太子の二人だ。

執務室の応接セットのテーブルに、ディアランはキャビネットから出した酒とグラスを二つ置く。

ディアランは、午前中にトラファルガー公爵が謁見しているのを知っている。そして、先ほどの話でにジェラルディンの態度。

娘に甘い公爵であっても、娘に対するジェラルディンの態度には不信を持っているはずだ。


「トラファルガー公爵家として、ジェラルディンとの婚約を取り下げてきた」

王の言葉に、やはり、とディアランは納得をする。


「お前が、ジェラルディンとヴィヴィアンヌ嬢が二人きりにならないように、侍従達を懐柔して牽制しているのは分かっている」

ディアランからグラスを受け取り、王は一口飲む。


「ならばおわかりでしょう。ヴィヴィアンヌ嬢は僕が娶ります」

カタンとグラスをテーブルに置いてディアランが言うのを、王は静かに聞いている。

王にも王妃にも似ない赤眼、黒髪で生まれた息子。

それは、王家の始祖の血が強く表れた証。

何代かに一人、始祖の強い力を持つ、そういう子供が生まれる。




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