王家の秘密
「王家の始祖は、人ではないと言われているのだ。
数代に一人、その血を色濃く持った者が生まれる。それが僕だ」
ディアランの昨日の姿を見れば、その言葉を信じるしかない。
王家は神の末裔というのが、創生逸話として国民に知れ渡っている。
「王家には受け継がれている家系史書があって、そこには始祖の血が現われた者の記録が残っている。
知力、体力、全てにおいて秀でていて、人知を超えた力を持っていた。
その力を行使するときは、始祖に近い姿になった。
だから、昨日のような姿で僕が生まれた時に、父は始祖返りとすぐにわかった。
けれど、母は僕の姿に衝撃をうけて気を失ったそうだ」
出産直後の母体に、生まれた赤ん坊に鱗があったらショックが大きいだろう、とヴィヴィアンヌも理解する。
「史書には、始祖返りの者で子孫を残したのは僅かだ」
そういうディアランは、ヴィヴィアンヌを見つめる。
「その意味を、僕はヴィヴィをみつけて知った。
僕は、ヴィヴィ以外には欲情しない。
我々は、政略結婚をしても同衾することはできない。
ヴィヴィを初めて見た時、ヴィヴィだけが特別なのだと分かった。
先祖達は、そういう相手に巡り合えなかったのだろう」
もしくは、相手から拒否されたのかもしれない、とディアランは思う。
ヴィヴィアンヌは自分に欲情すると言われて、なんと答えていいか困っている。
ディアランを見れば、顔色が悪いし、身体が大きくなった気もする。
「殿下、お顔の色がさっきより悪くなったのではありませんか?
私を助ける為に、無理をしてくださったから。
それに、一晩でありえないのに、身長が高くなった気がして・・」
「ヴィヴィは昨日の僕の姿に嫌悪しない?」
ディアランは、ヴィヴィアンヌの問いかけには答えすに、反対に聞いてくる。
「驚きました。
でも、助けに来てくれたことが嬉しくって、嫌悪はありませんでした」
部屋から飛び出した時に、遠くにいるディアランの姿が見えた。絶対に認識できない距離なのに、ヴィヴィアンヌ自身が不思議に思っている。
ディアランの姿が変わっていても気にならなかった。誘拐に、ジェラルディンとの再会、暴力を振われ、驚くことが多すぎて、感覚がマヒしていたのかもしれない。
「身長は高くなっただろう。
ヴィヴィアンヌを探すために、力を使い過ぎたようだ。それで身体が変化した、大きくなったようだ。
さらに人間離れしたかもしれない。
僕自身でも、どれほど変化したかは分からないんだ。
過去にもこういうことはあった。これからもあるかもしれない。それは誰もわからない」
一息ついて、ディアランは言葉を続ける。脱皮したとは、怖がられたくなくて言えない。
「もしかしたら、人間の形でなくなるかもしれない。
それでも、僕の側にいてくれるか?」
ヴィヴィアンヌはディアランに抱きついた。
「そんなの分かりません。
でも分かっていることもあります」
ヴィヴィアンヌの体温が、ディアランに伝わってくる。
「殿下は優しいから、私の意志を大事にして、私を遠ざけようとするの?
殿下が王太子として国の事を大事にしているのを知っています。能力が高いだけではなく、努力しているからだわ。
殿下は絶対に私を傷つけないし、助けに来てくれる。
人の姿をしていても、誘拐して暴力を振う人間より、殿下の方がずっと大事です」
抱きついているヴィヴィアンヌの髪をディアランは撫でる。
「嬉しいけど、体力が戻ってないんだ。
ヴィヴィを支える事が出来なくて、情けないな」
ソファーにもたれているディアランは、ヴィヴィアンヌに押し倒されたように抱きつかれているのだ。
「ああ、ごめんなさい」
ヴィヴィアンヌは身体を起こして、ゆっくり寄り添う。
「もしディアラン殿下が人でない姿を見たら、驚くと思う。でも。知っているから・・・
殿下だって、私が太っても嫌いにならなかったでしょ。同じです」
太るのと、人外になるのは、ずいぶん違うが、外見の問題という点で同じなのか、とディアランも納得する。
「そんなヴィヴィの魂だから、僕は惹かれたのかな」
はは、とディアランの乾いた笑いが響いた。
お読みくださり、ありがとうございました。




