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2番目の恋物語  作者: violet
23/50

ディアランの闇と光

レベックがザイールの処理について、ディアランに報告をしている。

ザイールの証言だけを信じるわけにいかないが、狂犬病の犬の用意、馬車を倒すタイミングなど、ザイール一人で出来るはずがない。

参謀がいるはずだ。

そして、大きな権力が動いているはずだ。それはジェラルディンを駒として動かせるほどの。

「ザイール・テレビアの背後関係は探っても無駄でしょう。それほど綺麗に消されてます。

それが出来る権力が背後にあるということです。

ザイール・テレビアは、それを知らなかったでしょうが」


「僕のヴィヴィアンヌを誘拐し、殺そうとまでしたのだよ。

いらないよね、そんなことを指示する人間は」

片肘をついてディアランは書類をパラパラめくる。

書類で遊んでいるようにみえるが、ディアランはそれだけで頭にいれることができる。


「母上はたいしたことは出来ないが、ベネッセデア王国に潜ませる者を増やせ。

ベネッセデア王国が軍を動かしたら、僕が出る」

「殿下、我が国はこの100年、戦争を経験しておりません。兵はいても警備が主業務で、戦争となると実経験がありません」

進言するレベック自身が、そんなことは関係ないと知っている。


「僕がいるかぎり、それは戦争でなく、一方的な虐殺(ぎゃくさつ)と呼ばれるだろう」

だが、そんな姿をヴィヴィアンヌには知られたくない。ディアランは自分の中に巨大な力があるのを知っている。力を使ったのは、ヴィヴィアンヌが馬車から落ちそうな時だけだ。


「殿下、王宮内からヴィヴィアンヌ嬢が帰るのを外部に漏らした侍女を連行してあります」

レベックが詳細を言わなくとも、そこは軍の尋問室だとわかっている。

ザイールを処分した血の匂いが充満する部屋に閉じ込めるだけで、十分な威嚇になっているだろう。

「ザイール・テレビアより、背後の情報をもっているといいが」


尋問室にいたのは、年若い侍女であった。

自分に何をされるのか、と恐怖で混乱していた。

「違う! 私は指示されただけよ!」

尋問しなくとも、自分から話している。

「北門にいる兵士に(こと)づけたの、それだけよ!」


泣き叫ぶ侍女をレベックに任せて、ディアランは尋問室を出た。

聞いているだけ時間の無駄だ。この侍女の遺体を吊るして(さら)しても、指示した人間は気にも留めないだろう、とディアランは考える。

ディアラン自身がそうであるからだ。

そして向かうは、ヴィヴィアンヌが休んでいる部屋だ。




ちょうど食事を終えたところらしく、侍女と公爵夫人がお世話をしていたが、ディアランの姿を見ると部屋を出て行った。

ディアランは、ヴィヴィアンヌの隣に座ると、デザートの皿を手前に寄せる。

「よかった、顔色が良くなっている。食事も取れたなら安心だ」

「殿下、助けていただきありがとうございます」

お礼を言ってなかった、とヴィヴィアンヌがはにかんで言う。

それだけで生きている意味がある、とディアランはヴィヴィアンヌを見る。そして、デザートの梨のコンポートを切り分けると一切れヴィヴィアンヌの口元に運ぶ。


「殿下、デザートは食べれません」

ヴィヴィアンヌが断ると、ディアランは立ち上がって医者を呼びに行こうとするのをヴィヴィアンヌが止める。

「違います、調子はいいです。食事の量を減らしたいんです」

ディアランはヴィヴィアンヌに食べさすのが好きらしく断りきれずにいたが、今回は違う。

「食べ過ぎた体重を元に戻したいんです」

断固拒否します、食事も少量にしたのだから、ここでデザートを食べちゃダメ、ヴィヴィアンヌの決意はかたい。


「じゃ、この一切れだけ。僕を安心させると思って。

ヴィヴィは、今のままでも十分可愛いよ、痩せる必要ないよ」

はい、と一切れの梨がヴィヴィアンヌの口元に持ってこられる。


「急激に体重が増えたので、誘拐された時に逃げるのに身体がだるかったんです」

食事の時に母親に言えば、協力的になって食事をさげてくれた。殿下だって・・・はなかった。


「でも栄養は必要だよ。今はこれを食べて休むべきだ、回復したらの話だよ」

だから、あーん、とディアランはヴィヴィアンヌに食べさせるのを諦めない。


読んでくださり、ありがとうございました。


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