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2番目の恋物語  作者: violet
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ジェラルディンの暗躍

ジェラルディンは焦っていた。

婚約披露で兄とヴィヴィアンヌの並んだ姿を見た時は、飛び出しそうになった。

人間の感情など持っていないと思っていた兄が、嬉しそうにしていた。

兄は、何もかも自分から奪っていくのだ。

先に生まれただけで王太子の地位を得、王太子ということでヴィヴィアンヌもトラファルガー公爵家も奪っていく。


あんな化け物を始祖返りというなら、この国は化け物の国だ。

同じ王家の血筋であるが、自分は母の血統を継ぎ、人間としてうまれたと思っている。


「母上、叔父上からの返事はきましたか?」

ジェラルディンは眼の前に座る母親に確認する。

王妃である母親は、ベネッセデアの第2王女である。

武力侵略て領土を拡大してきた国てあり、武器開発に力を注いでいる。

母親の結婚も講和のためであるが、機会さえあれば、破棄するのを躊躇しないだろう。

自分がその機会になればいいのだ。

この国の戦力はベネッセデア軍とは比べものにならない。兵士は少なく精鋭の騎士で構成された中隊一軍のみである。しかも、軍隊長は兄の側近で文官のレベック・ハーツである。

兄は飛び抜けた能力があるが、それだけだ。数の前ではどうしようもないだろう。


『王位簒奪の援助をお願いしたい』

ジェラルディンは叔父であるベネッセデア国王に宛てた手紙には、他には、参謀の必要性と、早急にベネッセデア王国に行きたいと書き綴った。

直ぐに返事のくる内容ではないが、ジェラルディンはディアランの結婚式までには蜂起をしたいのである。


「ジェラルディン、お兄様からの返事はないけれど、里帰りということてベネッセデアに行こうと思ってます。

陛下も、王太子の婚姻後は忙しくなるから、今のうちに里帰りしたいと言えば反対しないでしょう」

王妃は、出産直後に王太子を見た時に気を失っている。我が子であっても毛嫌いするほどの異様な赤児であった。王が緘口令を引き、始祖返りと公表したため古くからの貴族は諸手を挙げて喜んだという。

次に生まれたジェラルディンを、王は王太子と同じように可愛がったが、王太子に期待をしているのは、誰もがわかっていた。

反対に王妃は、表向き二人を公平に扱ったが、何かにつけジェラルディンを贔屓した。


ジェラルディンは兄が生まれた時のことは知らないが、8年前の事件は現場を見た。


だから、ジェラルディンが王妃を味方につけたのは、当然のことであった。


王妃が里帰りの準備を始める頃、ベネッセデアから返信がきた。


『国境に迎えをよこす』


検閲を想定されて書かれた短い文には、深い意味が隠されていた。


王妃と王子が、護衛の騎士、侍女、何台もの馬車を連ねて出発したのは、2週間後であった。


その隊列を見送る王は、表情にはだしていないが、戻って来ないかもしれない、と思っていた。

婚約解消してからの、ジェラルディンの行動に不信を抱いていたのだ。

ヴィヴィアンヌと婚約中はあれほど固執しているように見えた令嬢とも会っておらず、軍と図書室に顔を出していると報告を受けていた。

ほとんど自室に居らず、公務や外出に時間を費やしていた。

ヴィヴィアンヌはよく登城していたので、ジェラルディンは自室にいることが多かった。

あれは、ヴィヴィアンヌを待っていたのか・・・

ジェラルディンなりにヴィヴィアンヌを気に入っていたとしたら、ジェラルディンとの婚約を解消させて王太子に彼女を与えたように思っているだろう。

いや、ジェラルディンの態度にヴィヴィアンヌが婚約解消を申し出てきたのだ。

今更だ、と王は思考を止めた。



そしてジェラルディンは、ベネッセデアの軍師ミハイル・ドロセラに会う。

どんな卑怯な手でも勝つためには(いと)わない軍師、ミハイル。


お読みくださり、ありがとうございます。

ジェラルディンが動き始めました。

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