ヴィヴィアンヌの反撃
ヴィヴィアンヌは、目一杯おしゃれして王太子に会いに行った。
王太子の言葉で、気になることがあったのた。
『僕は今のヴィヴィアンヌも以前のヴィヴィアンヌと同じように好きだよ』
今の私って、デブだってこと?前の私をどれぐらい知っているの?
ディアランが気を使って言った言葉は、女心の悪い方に刺さった。
それは、ディアランが強引にキスした悪影響である。
言葉は、その時の心境で、悪い意味にでも良い意味にでも感じれるのである。
好きって告白は、嬉しいけど私の事を見てるの?
太かろうが細かろうが好きって、どういう事?
ジェラルディンに会う為に登城した時に、会った事はあるけど挨拶しかしていない。
好き、ってなんだろう?
ジェラルディンを好きって思っていたけど、それって何だろう?
ともかく、目一杯オシャレして、ノックアウトしてやる!
強引な事ができないように、してやるんだから!
ガンバレ、私!
ヴィヴィアンヌは決意もあらたに、打倒未来の横暴夫! と拳を握りしめる。
王宮では、ディアランがヴィヴィアンヌの登城の知らせに舞い上がっていた。
オーデンとレベックに言われて嫌われたか、と心配していたのだ。
普段のディアランは、オーデンやレベックに何かを言わせやしない。完璧な実力主義であり、ディアラン自身が誰よりも能力がある。
だが、2年間こじらせた想いは、結婚が決まり無意識に浮かれていたようだ。
庭園でヴィヴィアンヌを抱きしめた時、ヴィヴィアンヌの纏う空気に触れて理性が砕け散った。
もう、あんなマネはするまいと思っても、ヴィヴィアンヌの登城に気持ちがはやる。
「殿下、ヴィヴィアンヌ様を私室のサロンにお通ししました」
ヴィヴィアンヌを迎えに行って、戻ってきたオーデンが報告をする。
「そうか」
ディアランは立ち上がり、レベックが後に続いて私室に向かう。
ディアランには空気を辿れば、ヴィヴィアンヌの場所は聞かなくともわかる。
ヴィヴィアンヌの空気は、この2年間、何度も王宮に漂うも弟の部屋に消えた。だが、今は自分の部屋から漂ってくるのだ。
オーデンが扉を開け、ディアランが室内に入ると、ヴィヴィアンヌが優しく微笑んで・・・
・・・くれなかった。
「王太子殿下、ヴィヴィアンヌ・トラファルガー、お呼びにより参内いたしました」
ヴィヴィアンヌは立ちあがると、美しいカーテシーを披露する。浮かべた笑みは淑女らしく、気品にあふれている。
ジェラルディンと一緒にいた時はこんな表情をしていなかった、キスした時は頬を染めて可愛かったヴィヴィアンヌ、ディアランの焦燥は広がるばかりだ。
ディアランは、ヴィヴィアンヌとの距離が大きく開いたのを実感する。
ディアランがヴィヴィアンヌの手を取ろうとすると、ヴィヴィアンヌに避けられて手が空を切る。
「王太子殿下のご命令であれば、動きません」
嫌がるヴィヴィアンヌに命令しろ、ヴィヴィアンヌの心はない、と言うのだ。
それは、嫌がるヴィヴィアンヌを抱きしめてキスしたディアランに対する反抗だとわかる。
ディアランを見つめるヴィヴィアンヌの強いまなざしに、ディアランは絡めとられるようだ。
済んだ空気に導かれてヴィヴィアンヌを見つけた時、生きる為に必要だと悟った。
だが、今は惹かれてやまない。
「ヴィヴィアンヌにキスしたことは謝らないよ。
ヴィヴィアンヌの気持ちを待てなかった事は、急ぎ過ぎたと思っている。
次は、君の気持ちを尊重したい」
ディアランがヴィヴィアンヌに座るように、ソファーに手を向ける。
ヴィヴィアンヌが座った横にディアランが座ろうとして、ヴィヴィアンヌに睨まれる。
向かいの席に座ると、オーデンが二人の前にティーカップを置く。茶の香りが漂い、部屋に広がる。
「次があるといいですわね。殿下」
お茶を一口飲んでカップを手に持ったまま、ヴィヴィアンヌは上目遣いにディアランを見る。あきらかに計算しての上だ。
それを分かっていても、惚れた者の負けであるディアランは、茶で気持ちを抑えながら足を組む。
「ヴィヴィアンヌに好意を持ってもらえるよう努力は惜しまないつもりだ。
今日も綺麗だね、ヴィヴィアンヌ」
有言実行とばかりに、ディアランはヴィヴィアンヌを褒めたたえる。
「ありがとうございます」
ヴィヴィアンヌは、ディアランを王太子として尊敬しているし、婚約を解消する気持ちはない。
だが、今はディアランに意趣返しをしたいのだ。
女の子が、いつも自分の思い通りになると思わないで。
読んでくださり、ありがとうございます。




