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2番目の恋物語  作者: violet
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初めての口づけ

王宮の庭園は、花盛りであった。


「王太子殿下、お花をありがとうございました」

花の中を歩きながら、ヴィヴィアンヌはディアランにお礼を言う。


「喜んでくれたのなら、嬉しい。

僕はそういう事には慣れてなくって、すごく悩んだ」

普段は能面のような王太子が、少し照れた様は可愛く見える。


けれど、ヴィヴィアンヌは一目惚れして優しいと思った婚約者が、ヴィヴィアンヌを受け入れず他の女性を侍べらせるというのを2年間耐えたのだ。いつか、振り向いてもらえると努力したが、婚約者は恋人ともいえる女性まで作るようになった。


だから、王太子が優しくっても疑ってしまう。


「ヴィヴィアンヌ、と呼んでも?」

ディアランは、ピンクに咲いている花を一輪手折って、ヴィヴィアンヌに差し出した。


「はい、もう婚約者なのですから」

その花を受け取り、そっと匂いをかぐ。


「僕は、ずっとヴィヴィアンヌを見てきた」

ディアランは、ヴィヴィアンヌが花を持つ手に手を添える。ビクッとヴィヴィアンヌが肩を震わせたが、離すつもりはない。

「貴女は気づいてなかったろう?

これから堂々と貴女を愛でれると、嬉しくって仕方ない」

そう言うディアランの瞳の奥が金色に光った気がした。

それに気を取られたヴィヴィアンヌは、ディアランに距離を縮められたのに逃げそびれた。

眼の前には、ディアランの顔がある。綺麗すぎる顔は、怖いぐらいだ。


「ヴィヴィアンヌ、式は半年後だけど、待てる気がしないな」

ディアランの手がヴィヴィアンヌの頬を撫でて、ヴィヴィアンヌは蛇に睨まれた蛙状態である。

言葉一つ口に出せず、目だけでディアランの動きを追う。


ディアランがヴィヴィアンヌの額にキスを落とした。

ヴィヴィアンヌは目を閉じることもできず、ディアランが次に頬にキスをするのを見ている。


「ヴィヴィアンヌは甘いね」

ディアランが、舌でヴィヴィアンヌの頬を嘗めた。


「ぎゃぁあ!」

やっと金縛りからほどけたように、ヴィヴィアンヌはディアランを押しのけて、悲鳴をあげた。

押した反動で後ろに倒れようとするヴィヴィアンヌを、ディアランが抱き寄せるように支える。


「ちょっと急ぎすぎたね。ゴメンね。

ヴィヴィアンヌが、あまりに可愛いから」

ヴィヴィアンヌが逃げようともがいても、ディアランはヴィヴィアンヌが痛くないように力加減を調整して離さない。


「殿下、申し訳ありません。

こういう事に慣れてなくて」

だから離してください、という言葉はディアランの唇に塞がれた。


2年間で婚約者に、手にキスされただけの経験しかないヴィヴィアンヌにとって、婚約初日のキスはキャパオーバーである。

フルフルと頭を振って逃れようとするが、いつの間にかディアランの手がヴィヴィアンヌの頭の後にまわって固定されている。


絶対に護衛や侍女が近くに待機しているはずなのに、さっき叫んだ時に助けに来なかったということは、王太子が何かしているのだ。

これは、自力で逃げるしかない、とヴィヴィアンヌはさとる。

なんとか顔を横に反らして、王太子の唇を外すも、直ぐにまたキスされそうになって叫んでしまった。

「やだ!」


さすがにディアランも、やりすぎたと身体を引く。

「ヴィヴィアンヌ、好きなんだ」

ごめん、とは言わない。何度でもしたいから。


ディアランの告白に、真っ赤になっているヴィヴィアンヌは気が遠くなりそうだ。血が顔に集中している。だか、そんな事になったらベッドに連れ込まれそうな予感がして、ヴィヴィアンヌはふんばる。

けれど、告白してスルーされる辛さは知っているから、何か応えないとと焦ってしまう。

「殿下、太っちゃって、恥ずかしいんです!」

答えになってないし、支離滅裂である。涙腺が崩壊したかのように、涙が溢れ出た。


「キスされて、嫌だった?」

コツンと、ディアランは額をヴィヴィアンヌの額に当てる。


「結婚する覚悟はしているから、嫌じゃないけど、急だったから怖かったです」

小さく答えたヴィヴィアンヌの声は、ディアランにちゃんと届いた。

「僕が怖い?」


フルフルとヴィヴィアンヌは、頭を横に振る。

「殿下は怖い人なのですか?」


「君以外にはね」

苦笑いするディアランが、そっとヴィヴィアンヌの涙を拭う。


ヴィヴィアンヌは答える代わりに、ディアランの肩に頭を預けた。

ディアランが、微笑んだ気がして、正解だったのかと思う。


「少しふくよかになったのは、気がついていたよ。ヴィヴィアンヌは気に病んでいるようだが、僕は今のヴィヴィアンヌも以前のヴィヴィアンヌと同じように好きだよ。それが原因で体調を崩すのでなければ、可愛いと思うよ」

君の周りはこんなに空気が澄んでいる。いつもと同じだよ。ディアランにとって、ヴィヴィアンヌだけが特別だ。


嬉しいと思ったヴィヴィアンヌだが、ディアランの行動に硬直した。

ヴィヴィアンヌの涙を拭った指を嘗め、そして、直接ヴィヴィアンヌの涙を舐めたのだ。

「ヴィヴィアンヌは涙も甘いね」


こ、怖い!

やっぱり、怖い、でも言う勇気はない。

ヴィヴィアンヌは、気を失ないそうな自分を奮い立たせるのだった。



読んでくださり、ありがとうございます。

2年間こじらせたディアランは、待てが出来ませんでした。

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