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第三十九話 適材適所

「はーい、注目~」


ここはドワーフとエルフが扱いに関して揉めている森のなか。魔王ルナマリアの命令により、ドワーフとエルフの主だった者たちが森の中心部に集められていた。


ドワーフとエルフ、どちらも戸惑いを隠せない。なぜなら、ルナマリアのすぐそばには今までそこになかった小さな小屋が建てられているからだ。


「今日からこの森には管理者を配置します。管理者といっても、やることはドワーフとエルフの仲介だけどね」


「ええと……すみません魔王様。もう少し分かりやすく説明してほしいのですが……」


先日、魔王城へ訴えに来ていた若い女エルフが手を挙げながら恐る恐る口を開く。


「エルフとドワーフが直接やり取りするとなると必ず揉めるでしょ? だから、管理者をあいだに挟むんだよ。ドワーフは切ってもいい木を確認したいとき管理者に言う、管理者はそれをエルフに伝える、エルフが管理者に伝えてそこからドワーフに話してもらう、みたいな」


「なるほど……それならたしかに俺たちがエルフに頭を下げることもなくなるが……」


「そうね。私たちもドワーフと顔をあわせなくて済むから万々歳だわ」


ドワーフとエルフ、双方が納得したようだ。


「魔王様、肝心の管理者は誰なのですか?」


「ああ。それはね……」


ルナマリアが宙に手を伸ばして何かを取り出そうとする。アイテムボックスだ。


「よい……しょっと……」


アイテムボックスから取り出された、と言うよりは引きずり出された一体の魔族。その顔と様子を見てドワーフとエルフ双方が氷のように固まった。


乱暴に引きずり出されたのは、先代魔王の親族であるレイド卿。すこぶる顔色が悪いうえに片腕が切断されていた。


「管理者はレイド卿にやってもらいます。本人がどうしてもやりたいんだって」


ルナマリアは満面の笑みを携え、ドワーフとエルフたちに視線を巡らせる。誰も言葉を発せない。


「ね、レイド卿? 森の管理者やりたいんだよね? ね?」


ニコニコとしながらレイド卿の顔を覗き込むルナマリア。まさしく悪魔の所業。なぜこのようなことになったのか、話は昨夜にさかのぼる。



――魔王ルナマリアの怒りを買ったレイドの命は風前の灯火だった。このままでは間違いなく殺されてしまう、そう直感したレイド卿は恥を捨てて床に頭をこすりつけて謝罪した。


「もももも、申し訳ございませんでした! すべて私が悪うございます! なにとぞ平にご容赦を~……!」


「だーめ」


残酷なことをかわいく言い放つルナマリアに、レイド卿は涙を浮かべた目を向ける。と、ルナマリアが右手を軽く振った。風の刃が顕現しレイド卿の右腕を斬り飛ばす。


「ぎゃああああああ!」


うーん、このままじゃ死んじゃうか。とりあえず痛みを少しだけ和らげて止血もしとくか。ルナマリアは治癒魔法をレイド卿へ発動する。


「とりあえずこれはお仕置きの第一段階ね。次は……と」


「おおお、お待ちを! いえ、お待ちください陛下! このレイド卿、心を入れ替えて魔王陛下のために粉骨砕身働きます! 本当です! なんっでもします! 何でもさせてください~!」


みっともなく号泣しながら懇願するレイド卿の姿に、ルナマリアは深くため息を吐いた。


「……本当に何でもする?」


「もちのろんです!!」


うーん。どうしようかな~……こんなのでも使い道はあるかな……? ん? 待てよ……そうだ、いいこと思いついた。


「じゃあ、あなたには明日からある森で管理者をしてもらいます」


「へ? 管理者とは……?」


ルナマリアは簡潔に説明する。これくらいの仕事なら片腕がなくてもやれるよね。それに一応いろいろな種族にも顔がきくし、ドワーフとエルフの仲介もうまくやれるでしょ。


「わ、分かりました……」


ルナマリアの説明を聞いてレイド卿は了承するが、その顔には何となく不満の色が見てとれた。なぜ儂ともあろう者がそんなちっぽけな仕事をしなくてはならんのだ、とでも言いたそうだ。


「言っておくけど、裏切ろうとか何か企んでやろうとか思わないほうがいいよ?」


「も、もちのろんですとも……!」


肩をびくっと震わせたところを見ると、すでによからぬことを考えていたみたいだ。はぁ、本当にどうしようもないなぁ。ルナマリアはレイド卿へスッと手をかざす。


「……うん、これでよし。レイド卿、胸を見てくれる?」


「は? 魔王陛下の胸をですか? 申し訳ありませんが、私もう少し大きな胸のほうが好みでして……」


ルナマリアのこめかみにぶっとい血管が浮き上がる。ぶち殺してやろうかな。


「……私の胸じゃないわよ。あなたの胸を見ろっつんてんのよ」


何とか怒りを抑えて言葉を絞り出す。戸惑いつつ自分の胸に視線を移したレイド卿。次の瞬間、その顔が恐怖に染まった。


「ここ……これは……!」


「そう、呪いよ。あなたが私に対して悪意や敵意を抱いたら即発動する呪い。ああ、言っておくけど解呪はできないよ? 私以外はね」


「そ、そんな……」


「まじめに働いてくれるなら何も起きないよ。あ、ちなみに呪いが発動したらその瞬間に体がバラバラになっちゃうから気をつけてね」



と、こんな感じでレイド卿はドワーフとエルフを仲介する管理者となった。ならざるを得なかった。


それにしても失礼しちゃうなー。何が「もう少し大きな胸のほうが好みでして」よ。悪かったわね貧乳で。あーあ、ラミくらい大きければなー。


そっと自分の両胸に手をあて深くため息をつくルナマリア。結局ラミの戴冠式には間に合わなくなるし、踏んだり蹴ったりだよ。


まあ、とりあえずドワーフとエルフの問題が何とか片づいたのは良かったけど。もう少しだけ残っている書類の処理が終わったらラミのところへ遊びに行こうっと。


女王になったマブダチのことを思い浮かべつつ、ルナマリアは気合いを入れ直すのであった。


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