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閑話 やんちゃ丸

とあるコンビニの駐車場。遠巻きに様子を窺う野次馬たちの視線の先には赤色灯の灯と警察官の姿、そして十人近い男性が血塗れで倒れている光景が広がっていた。


「ねえ、何があったの?」


「いや、よく分からないけどそこにたむろしていた連中が誰かとトラブルになったみたいだよ」


「話では女子高生一人にやられたらしいぜ」


倒れている男たちは誰もが顔を腫らし、流血している者も少なくなかった。何人かは膝を抱えて震えている。警察官も事情聴取に手間取っているようである。



「もっとよく分かるように説明してくれないか? 相手の数や特徴を……」


「だから何度も言ってるじゃねぇか! 相手は木刀を持った女子高生一人だって!」


「ふう……じゃあ君たちは十人もいるのに、たった一人の女子高生にこのような目に遭わされたと?」


「くっ……悔しいがその通りだよ……!」


髪を金髪に染め、ダボっとした服を着たヤンキー風の男は悔しそうに言葉を吐く。


「じゃあそれが本当だとして、何故トラブルに?」


「…………」


「言えないことがあるのかね?」


「ねえよ! ただ、短いスカート履いたいい女だったから、パンツ見せろよってからかっただけだよ。そしたら……」


惨劇を思い出したのか、金髪の男は体をガクガクと震わせそれ以上の言葉を紡げなかった。



「巡査部長、ほかの者にも聴取しましたが、皆んな内容は同じですね。可愛い女子高生だったのでからかったら、いきなり木刀で襲われた、と。しかもめちゃくちゃ強かったみたいですよ」


「まあ、こいつらがここまで一方的にやられてるの見りゃ分かるさ。それにしても、こんなこと警官が言っちゃいけねぇが、女だてらに大したもんだ」


くつくつと笑う巡査部長に若い巡査は咎めるような視線を向ける。乱暴されそうになり反撃したのなら正当防衛も成立するだろうが、今回のはやりすぎだ。


ただ、男たちはボロボロにされてはいるものの、大きな怪我をした者はいない。警察もそこまで暇ではないので、この件の捜査に多くのリソースを割くことはないだろう。


「ほんと、いったいどんな子なんだろうな」


若い巡査はいまだガクガクと体を震わせる男たちを一瞥してからパトカーへ乗り込んだ。



「ちょっと優衣。いくら何でもやりすぎだったんじゃない?」


「はあ? あいつらこのあたいのパンツ見ようとしたんだぜ? あれくらいで済んでむしろ感謝してほいんだが」


事件があったコンビニから数キロ離れた公園。優衣と呼ばれた女子高生はベンチに腰掛けたまま、空になった空き缶をゴミ箱へ投げた。


「つーかタケル。てめぇJKがピンチだってのに助けようともしなかったよな?」


「どこがピンチなんだよ。あっという間に全員叩きのめしてたじゃん。絶対今ごろ警察来て大変なことになってるよ」


「……しばらくあのコンビニ行けねぇな。まあいいけど」


優衣の実家は古流剣術、影宮一刀流の道場を開いている。古くから続く実戦的な古流剣術であり、優衣の一族は開祖の血を引いているらしい。


幼少時から剣の修行をさせられてきた優衣の強さは目を見張るものがある。そこらへんの男が束になっても敵わないだろう。


「てゆーか優衣さ、常に木刀持ち歩くのやめなよ。昭和のスケバンじゃないんだからさ」


「うるせーよ。一応竹刀袋に入れてるからいいだろ」


「そういう問題? はぁ。ほんと昭和のヤンキーかぶれというか……」


「昭和ヤンキー最高じゃん。あー、いずれ鉄仮面とかヨーヨーとかも欲しいなー」


「いや、それヤンキーじゃないし」


優衣の昭和ヤンキー文化好きにも困ったもんだ、とタケルは肩を落とす。


「おし。そろそろ帰ろうぜタケル」


「……だね」


幼馴染である二人は家もすぐ近所なので、学校への行き帰りもいつからか二人一緒に行動することが多くなった。


二人並んで公園から出ようとしたが──


「あ、あの。すみません」


後ろから声をかけられ振り返ると、メガネをかけた大人しそうな女子高生が立っていた。


「あ? なんか用?」


「あ、あの、これベンチの上にあったんですけど、あなたのじゃ……?」


彼女が手にしているのは優衣のスマホだった。どうやらベンチに置き忘れていたようだ。


「おー! あっぶねー! マジサンキュー、助かったわ」


「い、いえ。それじゃ失礼します」


髪を三つ編みにした地味めな女の子は、ぺこりと頭を下げると踵を返し小走りに去っていった。


「優衣と違って真面目そうな子だったね」


「ああ。多分趣味は読書だな」


「かもね。まあ優衣とは一生縁がなさそうな女の子だわ」


「るせー」



その後、三人はさまざまな理由で転生し、ラミリアにヴァン、ルナマリアとして深く関わり合うことになるのである。

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