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第十一話 鍛治師

「へー。ルナマリアも向こうじゃJKだったのか」


「うん。まあいつも本ばかり読んでる地味で暗い子だったけどね」


あれ以来、ルナマリアはラミリアのもとへよく訪れていた。美味しい紅茶のお礼にといつもお菓子を持ってきてくれている。


「真面目な女子高生だったんだね。ラミとは大違いだ」


「うるせーよ、ヴァン」


嫌味を言われたラミリアは隣に座るヴァンに肘打ちを喰らわす。


「あ、そうだルナマリア」


「なーに?」


「腕のいい鍛治師に心当たりないか? この国は鍛治師そのものが少なくてさ」


「うーん、鍛治師かぁ。やっぱりドワーフかなぁ」


ドワーフはモノづくりに喜びを感じる種族である。高度な鍛治技術をもち、加工の難易度が高い希少な金属も扱えるという。


「ラミ、鍛治師に何か作ってもらいたいの?」


可愛く小首を傾げるルナマリア。馬鹿な男ならコロっといきそうな小悪魔ぶりだ。さすが魔王。


「ああ。日本刀がほしい」


「あ〜。ラミはもともと剣術やってたんだよね。それならこの世界の剣は使いにくいよね」


そうなんだよなー。この世界の剣は直剣だから抜刀術が使えない。できなくもないが、日本刀に比べると剣の走りが段違いだ。


ラミやヴァンが使う古流剣術の真髄は抜刀術である。それが使えないのは少々もどかしい。


「直接は知らないけど、私の側近ならドワーフの知り合いいるんじゃないかな?」


「おお。できればでいいから紹介してくれねぇか?」


「うん、いいよ。ジン、いる?」


ルナマリアが独り言のように口を開くと、彼女の影から何かが出てきた。


まるで執事のような格好をした若い男。一見すると人間のようだが額には二本の角が生えており、何より禍々しいオーラを纏っている。


「ラミ、この子は私の側近でジン。今日は私の護衛で影に潜んでついてきたの」


おお。魔族マジぱねー。つーかずいぶんとイケメンだなー。ルナマリアの趣味とか?


「お初にお目にかかります、イングリド王国の第一王女ラミリア様。私は魔王陛下ルナマリア様の忠実なる側近、ジンと申します。以後お見知り置きを」


「あ、ああ。よろしくな。で、さっそく聞きたいんだがよ、ドワーフの鍛治師に知り合いいねぇかな?できれば凄腕の」


「そうですね……一人心当たりがあります。ただ……」


「ただ?」


「気難しい性格と言いますか、普通に依頼してもまず断られると思います」


ふむ。ドワーフは気難しいってファンタジー小説で昔読んだことがある。でも、日本刀みたいな武器ってドワーフならきっと作ってみたいと思うんじゃないかな。


ラミリアは「ちょい待ってね」と言うと机へ向かい紙に何かを記し始めた。やがて書き終わった紙を封筒に入れてジンに手渡す。


「ジン、これをそのドワーフに渡してくれないか? 渡してくれるだけでいいからさ」


「は、かしこまりました」


あとは様子見かな。あれ読みゃきっと日本刀を作ってみたいって思うはず、多分。


それから一時間ほど談笑し、「また来るね」と言ってルナマリアは帰っていった。いや、魔王の仕事はええんかい。




「あれ? ラミリアじゃないか」


ルナマリアが帰ったあと、ラミリアとヴァンは練兵場で汗を流そうと移動していたのたが、その途中で声をかけてくる者がいた。


「あ、兄さん!」


長身に彫りの深い顔立ちに白銀の髪。ラミリアの兄であり第二王子でもあるロジャーだ。


ロジャーは何年か前に国境近くの拠点で守備を固めるよう命令を受け城を出て行った。それ以来会う機会は少なくなり、この日が久々の再会である。


「やっぱりラミリアか。あの頃よりさらに綺麗になったね」


「あはは、ありがとうございます、兄さん。めっちゃ久しぶりですね」


「そうだね。もっと頻繁に可愛い妹に会いたいけどなかなかね。今日も父上に報告したらすぐに戻るよ」


ふう、と深いため息をつくロジャー。どこか疲れたような顔に見える。無理はよくないと伝えると苦笑いしながら父のもとへ報告に向かった。




「ジン、ここにいるの?」


「はい。どこへも行っていなければ、ですが」


魔王ルナマリアと側近の魔族ジンは、ラミリアからの依頼で例のドワーフのもとへ足を運んでいた。ある国の国境近くに広がる森。例のドワーフは一人でその森に住んでいるようだ。


「あれです」


森の奥には煙突つきの小さな家が建っていた。どうやらここが住処らしい。


「おーい、シオン! いないか!?」


ジンがドアをノックしながら呼びかける。少し待つとドアが開き住人と思われるドワーフが出てきた。


眉間にシワを寄せた低身長巨乳な女ドワーフは、不機嫌そうにジンを睨みつける。


「何だよいきなり来やがって……何か仕事か? 違うならさっさと帰る……ん……」


不機嫌さを一ミリも隠そうとしなかったドワーフだが、ジンの背後に尋常ではない者がいることに気づく。何となく周囲の気温が下がった気がした。


「な、なな、何だよそいつは……」


ジンの後ろにいるのは黒いワンピースを着用しニット帽を被った十歳くらいの美少女。膨大かつ凶悪な魔力を撒き散らす少女にドワーフは戦慄する。


「シオン、無礼な発言はよせ。こちらは魔王陛下、ルナマリア・ディル・スタンダール様である」


シオンと呼ばれたドワーフはヒュッと息を吸い込むと即座にその場へ跪いた。魔王の威厳は魔族だけでなく人間以外のあらゆる種族に有効なのだ。


何はともあれ話ができそうでよかった。これでマブダチの願いを叶えてあげられそう。


魔王ルナマリアは跪くシオンを見てにっこりと微笑んだ。



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