表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/41

なにか様子が違うかも

「ナオ、と呼んでも?」

「もちろんです」

「では、ナオ。そちらにかけてくれ」


 さきほど握手したおなじ手が、長椅子を示した。


「兄上、ぼくはこれで」


 カストが言った。


 兄上?兄上って?


 兄上よね?えっ、まさか兄弟?カストって竜帝の弟なの?


「おいおい、カスト。おまえは、いつも愛想がないな」

「皇宮が好きではないですからね。それに……」

「なんだ、なぜ途中でやめる?」

「いえ、別に」


 そんな二人の会話をききながら、ようやく美貌の青年がだれなのかがわかった。


「りゅ、竜帝?」


 驚きすぎて、思わず叫んでしまった。


 二人が同時にこちらを見た。


「ああ。わからなかったかな?」

「兄上、当り前です。素顔で鎧やマントもありません。竜帝の仮面の下は、見るに堪えない醜い顔というもっぱらの評判ですからね」

「ちょっと待て。おれの素顔は、そこまでひどいことになっているのか?」

「あなたがわざと流す噂に、勝手に尾ひれがついてしまうのです。もうすぐしたら、目が三つに鼻が四つに口が二つあって、尻尾が生えている。なーんてことになりますよ。カッコをつけて仮面などつけるものじゃないですね。しかも銀仮面だなんて……。古典小説を読みすぎなのではありませんか?」

「おまえ、ふだんからそんなことを思っているのか?」

「おや?他人ひとの心をのぞくことの出来るあなたが見抜けなかったと?」

「おまえの心をのぞくほど、おれは嫌な兄じゃないつもりだがな。というよりか、おまえの心はおれの力でものぞけん」


 ニヤニヤ笑いのカストに、必死の表情の竜帝。いえ、フランコの言い合いを見ていると笑いが込み上げてきた。


 口に手を当てたけど、笑いを止めることは出来ない。


 クスクスと笑いはじめると、今度はそれを止めることが出来ない。


「ほらみろ、カスト。彼女に笑われているぞ」

「それは兄上が、です」


 笑いは伝染してしまう。二人も笑いはじめた。


 三人でしばらくの間笑い続けた。



「アロイージ王国の王宮ではすまなかった」


 フランコは、みずから淹れた紅茶を一口すすった。


 結局、カストは残ることになった。


 正直、ホッとした。


 初対面のときよりかはマシになったけど、それでもフランコのことが正直怖い。


 カストがいてくれれば、間がもつかもしれない。


「いいえ。謝罪するのは、わたしの方です。王宮では、国王が非礼きわまりないことを……。アロイージ王国の王族と廷臣たちになりかわりまして、心より謝罪いたします」


 遠い東の方の大陸には、土下座という謝罪の仕方があるらしい。お詫びの方法の最高峰ってところかしら。


 アデルモのしたことは、その土下座でも足りないくらいの非礼だわ。


 ただただ謝罪するしかない。


 あのとき、本来なら王都外で待機していたバリオーニ帝国軍が王都に攻め入ってもおかしくなかった。


 だけど、フランコはそうはしなかった。


 これは、アロイージ王族にとっても王国にとっても幸運以外のなにものでもない。


「ナオ、きみが謝罪する必要はない。さあ、飲んで。冷めてしまっているがね」


 紅茶を勧められるままに一口飲んでみた。


 ジャスミン……。


 気分が落ち着く。


「彼は、きみに寝首を掻かせるつもりだと思ったんだ。聖女と言えば、おれが油断するだろう。そこで、きみが……」


 ローテーブルをはさんだ向かい側で、フランコは手刀で自分の首を斬る仕草をした。


「まさか、わたしが?わたしが陛下の首を?」


 小さな虫を殺すのもためらうわたしが、フランコの寝首をかくですって?


 まったく想像がつかないわ。


 わがことながら驚いてしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ