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お姉様がやって来た

 ドラーギ国の統治のゴタゴタは、あらかた片付いたらしい。


 以前と同じように、またフランコといっしょにすごしている。


 約束していた遠乗りにも行った。それから読書をしたり散歩をしたり話をしたりと、することはたくさんある。ときには、エルマとカストと四人で乗馬を楽しむこともある。


 カストの乗馬の腕がすごいことに、そのときになって初めて知った。


「わたしより乗馬の腕がなくっちゃね」


 エルマは、常々言っている。


 はたしてその意味は、彼女が認める相手のことなのか、それとも認める男性のことなのかはわからない。


 だけど彼女が認める相手にしても男性にしても、カストはクリアしている。


 乗馬に関しては、わたしも男性に負けてはいないと密かに自負している。だけど、カストには負けたわ。


 それにしても、二人の関係が謎すぎる。


 幼馴染以上のくせに、おたがいそういう素振りは見せない。


 それこそ、口に出さなくてもわかりあっているくせに。


 フランコに尋ねると、「時期がきたら、『結婚しちゃった』ってことになるんじゃないか?」って言われた。


 そう言われてみれば、そんな気もする。



 フランコは、控えめに表現してもわたしを甘やかしすぎる。気を遣いすぎている。


 正直、それに甘えることが怖くなるときがある。


「やっぱりきみは愛せない」とか、「きみは思っていたような人じゃなかった」と言われ、いつか捨てられてしまうのではないか。皇宮から放り出され、他の国やこの帝国の貴族のもとに行かされるのではないか、そんなことをふとかんがえてしまい、怖ろしくなってしまう。


 しあわせで静かでやさしいときをすごしていながら、不安と恐怖で震えもしている。


 そんなある日、どうしても会いたいと皇宮にやって来た一団があった。


 皇帝であるフランコにではない。わたしに、会いたいと言っているらしい。


 なんとなく、それがだれだかわかった。だれだか、というよりかはだれの使いでやって来たか、をである。


 だけど、その予感は半分当たっていて半分外れた。


 アロイージ王国の国王アデルモ・ブラマーニの使いということは当たっていた。


 その使者が、お姉様のビアンカということが意外すぎた。


 当然、彼女だけではない。外交官が数名付き従っている。


 一応姉だから、会ってみた。


 案の定、聖女の加護がなくなっているアロイージ王国の惨状を救うべく、ただちに帰国せよという内容だった。


「ナオ、すぐに戻るのよ。国王であるアデルモの命令よ」


 庭園の東屋で彼女と会った瞬間、彼女は高飛車に言い放った。


「まったくもう。最近の天災は、わたし一人の手に負えないわ。「役立たず聖女」のあなたでも、いれば何かの役に立つ。さあ、さっさと帰るのよ」


 彼女はわたしが黙っていることをいいことに、さらに高飛車に出た。


 というよりかは、彼女はまだ自分に聖女の力がないことに気がついていないわけ?


 驚きだわ。


「あら?そこの侍従、カッコいいわね」


 彼女は、美しい男性に目がない。


 いまも、東屋からすこし離れて立っている人たちの中の一人を目ざとく見つけた。


「ほら、はやく。そこのカッコいい侍従にでも準備をさせなさい」

「お姉様……」


 非常識すぎるお姉様に、正直なところなんと言っていいかわからない。


 口を開きかけたところに、「カッコいい侍従」がゆっくり近づいてきた。


「久しぶりの姉妹の再会だから遠慮していたが……。話にならんな」


 フランコはわたしの横に立つと、手を取ってその甲に口づけしてくれた。


「はじめまして、ではないな。これで二度目だ。たしか、『見るに堪えない顔なんでしょう?』と言われたな」


 彼は、そう言って乾いた笑声を上げた。


 そうだったわ。お姉様は、フランコに対して言った気がする。


 彼の仮面の下の素顔は、「見るに堪えない顔」であると。




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