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理不尽なる非難

「このナオはね、隣国アロイージ王国で偽聖女とか役立たずの聖女って言われてこの帝国に逃げてきたのよ。そのせいで、隣国はいま最悪な状況なの。いますぐにでも滅びてもおかしくないわ」


 デボラは、腰に手をあてエラソーに言った。


 そして、その横ではジルドがエラソーにこちらを睨みつけている。


「はぁ……」


 としか反応のしようもない。


 別にアロイージ王国でのことを言われてもかまわない。


 だけど、そんなことを大勢の前で告げたところで、どうでもいい話なんじゃないかしら。


 だって、誰の得にも損にもならないんですもの。


 わたしがこの国で誰かの聖女としての立場を奪ったというのなら、話は違ってくる。


 でも、もともとこの国に聖女はいない。


 はっきり言って、わたしが聖女の力を持っていようとなかろうと、この場にいる人たちには関心がない。

 だから、わたしやアロイージ王国のことなどどうでもいい。


「ねぇ、公爵令嬢。どこから仕入れた情報か知らないけれど、それは誤報もいいところよ。だって、かんがえてもみなさいよ。彼女がいなくなって、アロイージ王国が最悪の状況になっているんでしょう?それは、ナオの聖女の力、つまり彼女の加護がなくなったからよ。ということは、彼女は偽聖女じゃないし、ましてや役立たずでもないわ。そんな簡単なこと、三歳の子どもでもわかることじゃないかしら」


 エルマが言い返してくれた。


 彼女の言うとおりである。


 わたしに聖女の力があり、ちゃんと加護をしていた。わたしがこの国に来たことによって、アロイージ王国は加護されなくなった。だからこそ、アロイージ王国は最悪な状況になっている。


 よって、わたしは偽聖女でも役立たずでもない。


「そんなわけはないわ。お父様が得た情報なんですもの」


 デボラは、金切り声をあげた。


 いまので、彼女の父親である宰相が仕入れた情報だということが知れたわね。


「まぁまぁ、デボラ。彼女の過去をここで言ったところで、だれも関心を持たないさ。どうせ取り沙汰するなら、パートナー必須の舞踏会にお一人様で参加している件についての方がよくないか?」


 ジルドが、助け舟を出してきた。


 まぁ……。


 残念なデボラの彼氏もまた残念なのね。


 それにしても、皇子だから左竜将軍でいられるんでしょうけど、「ほんとに大丈夫なの?」って思ってしまうわ。


 彼は邪悪なばかりか、残念でもあるのね。


 周囲の人たちも、蔑みというよりかは気の毒そうな表情で彼を見ている。


「やめないか、デボラ」


 そのとき、宰相が悠然とやって来た。


 それから、得々とわたしについて述べはじめた。


 当然、非難である。遠まわしに、だけど。


 娘可愛さかどうかはわからないけれど、宰相も「大丈夫なの?」って思わざるを得ない。


 宰相は、早い話がフランコがわたしを連れてきたことが気に入らないらしい。


 まるでわたしが、「宰相を代えた方がいい。でなければ、この国は災厄に見舞われるであろう」って告げた魔女のように、わたしを非難している。


 遠まわしに、だけど。


「宰相、大人げないですな」


 ボルディーガ侯爵と侯爵夫人がやって来た。


「というよりかは、ナオを口実にして陛下に不満を持たれ、非難されている。陛下が招いた客人を非難するということは、そう捉えられてもおかしくありませんね」

「外務卿、きみが不甲斐ないからアロイージ王国になめられているのではないのか?しかも聖女ごときにつられ、だまされたわけだ。陛下は、このご令嬢の魔力にだまされた挙句に隣国を許すことになる。それどころか、援助までするというではないか。バカバカしいかぎりだ」

「宰相。であれば、陛下に直接おっしゃられてはいかがかな?」


 侯爵と宰相が言い合いをしている間に、大広間の入り口辺りが騒がしくなった。


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