食事
フィオレは、大いに驚いた。
彼女自身は、他の使用人たちといっしょに厨房の隣にある使用人用の食堂を使っているらしい。
わたしもそこで一緒に食べたい旨を伝えると、叱られてしまった。
だから、正直に話をした。
すると、彼女は侍女長のアーダに話をしてくれた。そして、アーダから執事長のジェラルドに話がいってしまった。
やはり、ダメだと言われた。だけど、それでもねばった。
いいえ。ワガママを言った。わたしは、この国の人ではないので地位や身分がない。そんな小理屈を平気で述べた。
「ナオ様は、陛下の貴賓です」
彼らは、取り付く島もない。
が、結局折れた。
ジェラルドやアーダたちが、である。
宮殿には、当然皇族がいる。だけど、ほとんど表には出ず、彼らはわたしに会うつもりがないらしい。そして、フランコもわたしを彼らに会わせるつもりがないらしい。
したがって、フランコが戻ってくるまで、わたしは一人で食事を摂らなければならない。
一人の食事が寂しいことは、ジェラルドたちも重々承知している。
だから、いっしょに食事をするのを許してくれた。
ワガママついでに、レシピもおなじものにしてもらった。
豪華すぎて品数が多いのは、もったいなさすぎる。
いわゆる賄い料理、というものの方がわたしの口に合う。
彼らは、そんなワガママもきいてくれた。
ずいぶんとワガママな女だと、呆れ返られたに違いない。
というわけで、また食事が楽しくなった。よりにぎやかになった。
侍女や執事や料理人、庭師や美術家などなど、大勢の人の話をきくことが出来た。
驚くべきことに、みんなお喋りである。噂話も多い。だから、信じられないほどの情報を得ることが出来る。
エルマの言っていたことがわかった。
彼女も、こうして情報を得ている。
もちろん、わたしの場合はそれが目的ではない。単純に独りぼっちで食事をしたくないだけ。
だけどみんなと一緒に食事をすることで、フランコやカスト、それから宰相や大臣や官僚、公爵など上位貴族、ついでにまだ見ぬ皇族たちのことを知ることが出来た。
その情報が役に立つかどうかはわからない。でも、知っていて損はないはず。
お茶会の夜の食事も、お茶会のことで盛り上がった。
フィオレ同様、みんな大笑いした。
デボラの顔を見たかったと、口を揃えて言った。
デボラがフランコの婚約者であったときも、婚約破棄をされて彼の兄皇子であるジルドと付き合っているいまも、彼女は妻として皇族に名を連ねているかのように振る舞っているらしい。
傲慢で理不尽で思いやりのかけらもない彼女に、だれもが憤っている。
だから、わたしが彼女の誕生パーティーに出席するつもりだというと、食事をしている全員から反対された。
「でも、エルマとバルナバがいっしょに行ってくれるらしいから」
お茶会でエルマと知り合い、彼女が助けてくれたことも伝えた。
その後、厩舎でバルナバとも知り合ったことも。
すると、全員一致で「それなら是非とも参加なさってください」と言ってくれた。それから、「面白いことになりますよ」とも。
そして、エルマとバルナバの話で盛り上がった。
彼女たちのお母様がフランコとカストの乳母で、それはもう素敵な女性だということ。乳母子にあたるエルマと兄バルナバは、喋ったり歩いたり出来るようになった幼児の頃からやんちゃでお喋りで手がつけられなかったこと。
だけど、二人とも周囲にたいして思いやりと感謝の念をいつも忘れない。いまでもそれが続いているらしい。
彼女たちとは友人になったばかりだけど、その友人たちが褒められるのは自分のことのようにうれしい。
そのついでに、泊りに来るよう誘われたと伝えると、ジェラルドが即座に「行ってらして下さい」と許可してくれた。
エルマとバルナバが、というよりかは彼女たちのお母様とお父様が信用があるみたい。
というわけで、さっそくボルディーガ侯爵家に泊りに行くことにした。




