表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/41

竜帝がやって来た

 事の起こりは、アロイージ王国がバリオーニ帝国との協定を破ったことだった。それを取り繕うのに嘘と言い訳を並べ立てた。当然、関係は悪化してしまう。


 同時期、バリオーニ帝国の友好国がドラーギ国に攻め入られ、バリオーニ帝国軍がドラーギ国に攻め入り、あっという間に国都を陥落させてしまった。


 バリオーニ帝国は、ドラーギ国に攻め入るときには別の国を通過した。それが最短ルートだから。しかし、帰還するのに時間の制約はない。わざとわが国の領土を通過し、脅しをかけようとしているのに違いない。


 バリオーニ帝国軍がやって来たのは、わたしが竜帝に嫁ぐよう命じられた数日後だった。


 竜帝の噂は、うんざりするほど耳に入っている。


 そのどれもが怖ろしいものばかり。一つとしていいものはない。


 謁見の間に現れた竜帝は、はっきり言って異様な出で立ちだった。


 長身で筋肉質っぽい体を鎧に包み、黒いマントを翻している。


 なにより、銀色の仮面が怖すぎる。


 謁見の間にある高窓から射し込む陽の光が、その銀色の仮面に反射してよりいっそう仮面を異様なものに見せている。


 玉座にいるアデルモも、わたしたち同様その異様な姿形なりにのまれている。


 だいたい、アデルモが玉座にいることもおかしい気がする。彼の周囲が「大広間に迎えた方が」と最後まで進言したにもかかわらず、彼は玉座について迎えると譲らなかった。


 竜帝は、軍こそ王都外に待機させている。だから、彼の気持ひとつですぐにでも攻め入らせることが出来る。王都を守る守備隊に、それをとどめる力はない。


 この大陸で最弱のアロイージ王国軍が、この大陸で最強と名高いバリオーニ帝国軍に勝てるわけがないのである。


 というよりかは、そもそもこちらが協定を破ったのである。こちらが悪いのに、玉座から見下ろそうという。


 よくもそんな気持ちになれるものだわ。


 プライドだけはムダに高いアデルモらしい。


 正直、わたしから言わせればそんなプライドは愚かでしかないんだけど。


 それにしても、竜帝はすごいわよね。


 敵ではないけれど、充分敵になりえる状況の中、親衛隊、それとも近衛隊かしら。とにかく、二十名ほどだけ連れ、堂々とここにやって来たんだから。


 わたしたちが謁見の間の両端で見守る中、竜帝は玉座の前の階段下までやって来た。


 一応、近衛隊は控えている。でも、彼らはわたしたちよりも遠くにいる。


 竜帝は長剣を佩いている。三段しかない段差なんてあってないようなもの。


 長身で足がうらやましいほど長い竜帝が一歩大きく踏み出し長剣を突けば、アデルモの心臓を貫くくらい造作ないでしょう。


 そうなれば、玉座の横にこれみよがしに添うているお姉様は耳をつんざくような悲鳴を上げるでしょうね。


 どうでもいいかもしれないけれど、お姉様は目をそむけたくなるほどの大胆な胸のカットで目がチカチカしてしまうほどド派手なピンク色のドレスを着用している。


 今後、彼女はこの国を一人で守らねばならない。大聖女であり、正妃になるのだから。

 それにふさわしく、もうちょっと、いえ、かなり控えめなデザインに色合いのドレスにすべきだと思うわ。


 自分のドレスを見下ろした。


 所持する数少ないドレスの中でも一番マシなものにした。


 そんなどうでもいいことをかんがえている内に、アデルモがおざなりに名乗った。


 だけど、竜帝は無言である。ただ、そこに佇立している。


「そちらも道中を急ぐだろうから、さっさと終わらせよう」


 アデルモは、いかにも迷惑そうに切り出した。


「さっさと終わらせよう」って、どういう意味?


 なにか用事があるとすれば、あなたじゃなく竜帝の方じゃないの?


 なに様って感じよね。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ