助っ人
ガンドルフィ公爵令嬢たちのレベルは、アロイージ王国のご令嬢たちとかわりはない。
きいたこともないような誹謗中傷を投げかけられることはない。どれもおなじような内容ばかり。
だから、どの質問や嫌味も笑顔で答えたり受け止めることが出来た。
質問に関しては、かぎりなくほんとうのことを答えた。ごまかしたり見栄をはったりはしない。ある程度までは伝えた。
もちろん、伝えられることと伝えられないことがある。伝えられることは、惜しみなく伝えた。
自分でも最高って思える笑顔を添えて。
彼女たちは、わたしのそんな態度が気に入らないらしい。
とくに公爵令嬢のイライラは、見ていて面白い。
その内、彼女は取り巻きたちにあたり始めた。
「女のヒステリーって、イヤよね」
公爵令嬢たちから離れて席につき、スイーツをもくもくと食べている人が言った。
彼女は、最初からそこでスイーツを食べ続けている。
だからこそ、ずっと気になっていた。
いま、彼女は手に持つフォークを振りつつ爽やかな笑顔でいる。
口の端にクリームがついていることに気がついた。
彼女は、ガンドルフィ公爵令嬢同様髪と瞳がきれいなブラウンである。公爵令嬢にひけをとらないほどとってもきれい。
公爵令嬢は派手できつめなきれいさだけど、彼女は地味でやわらかいきれいさね。
彼女の恰好がドレスではなく乗馬服姿なので、よけいに気になっていた。
たしか、エルマ・ボルディーガという名前よ。
公爵令嬢の名がデボラ・ガンドルフィってかろうじて覚えている。だけれども、他の五人のご令嬢の名前は覚えていない。というよりかは、覚える気もないので右から左へ抜けてしまっている。
でも、彼女だけは覚えている。彼女は、他のご令嬢とは違っているように思えたから。
もちろん、いい意味でだけど。
「なんですって?」
「デボラ、だってそうでしょう?虐めたい相手が思いどおりの反応を示さなかったからって、癇癪を起しちゃって。みっともないったらないわ」
「侯爵のくせに生意気だわ。一応、今日は声をかけてあげただけよ。めずらしく顔をだしたと思ったら……。なるほどね。弱小国から逃げてきた聖女の力でなにかしようというわけ?」
「デボラ、今日は誘ってくれてありがとう。誘ってくれたことがとってもうれしかったから、参加させてもらったの。参加してほんとうによかったわ。この帝国には聖女はいないけれど、聖女の偉大さはだれもが知っている。そんな人とお近づきになれるなんて、光栄以外のなにものでもないんですもの。これで、わがボルディーガ侯爵家の栄誉は間違いなしね。あっそれと、侯爵のくせにって言うけれど、侯爵はわたしのお父様であってわたしじゃないわ」
「不愉快だわ」
ガンドルフィ公爵令嬢が立ち上がった。
彼女は、回れ右したかと思うと顔だけこちらへ向けた。
「ナオ、わたしの誕生日を祝うパーティーに招待してあげるから来なさいよ」
彼女は、そう言い捨てるとさっさと去ってしまった。
「デボラ様」
「デボラ様っ」
取り巻きたちが慌てて席を立って追いかける。
東屋が静かになってしまった。
いえ、訂正。
エルマ・ボルディーガの笑い声がきこえてくる。




