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どこの国のご令嬢もおなじよね

 ガンドルフィ公爵家へは、皇族の馬車で送ってもらった。


 おおげさすぎるから、と断った。だけれども、フランコの客人であるからそれ相応の体裁は必要である。もしも断わられるなら、お茶会に参加させない。


 アーダとジェラルドに、そのようにおしきられてしまったのである。


 馬車はガンドルフィ公爵家の大門をくぐり、森の中を進む。


 そうして、わたしは彼女たちに会ったのである。


 これまでのわたしだったら、両親やお姉様の目があったのでおとなしく従順だった。なにを言われてもされても、気弱な笑みを浮かべるだけだった。


 そうしておけば、心も体も最小限の被害で済ませられる。

 そのことを、幼い頃に学んだから。


 だけど、いまはもう装う必要はない。これまでのように、言いなりの「役立たず聖女」のふりをする必要はない。


 公爵令嬢は、わたしのことをフランコやカストより把握しているはず。

 わたしがフランコの客人としてこの帝国にやってきたことを知ってから、父親に頼んでわたしのことをつぶさに調べさせたはず。


 だから、下手に隠し立てしたりごまかしたり見栄を張ったりしない方がいい。


 なにより、正々堂々としていればいい。ほんとうのわたしを見てもらえばいい。


 そうよ。彼女たちは、わたしが祖国でのことを隠したり卑下したりすることを期待している。全力で蔑み、意地悪をするつもりでいる。


 わたしが泣いたり、懇願したりすることを確信している。


 彼女がこれまで接してきた、多くの貴族令嬢同様に。


 大丈夫、出来るから。フランコの為にもがんばるのよ。


 心臓がドキドキしている。それが、彼女たちに立ち向かう為のドキドキなのか、それとも彼女たちがどのような反応をするかに対するドキドキなのかはわからない。


 大丈夫。わたしなら出来る。


 もう一度、自分に言いきかせる。 


 ガンドルフィ公爵家の執事に案内され、お茶会の場に案内された。


 彼女たちは、庭園に設えられた東屋にいた。


 ガンドルフィ公爵令嬢が、六人のご令嬢を従え待ち構えていた。


 執事のうしろを歩きながら、国が違えどおなじなんだなとつくづく思った。


 東屋は、ムダに大きい。


 七人で囲めるほど大きな丸テーブルが二つあり、その一つにお茶とスイーツが並んでいる。


 公爵令嬢たちは、すでにお茶を楽しんでいた。


 本番前の最後の示し合わせでもしていたに違いない。


 とりあえず、名乗ってから招いてもらった礼を述べた。


 彼女たちも順番に名乗り、席についた。


 意外だったのは、わたしの分のスイーツと紅茶をちゃんと準備してくれていることである。


 侍女がポットから紅茶を注いでくれた。


 食器類はすべて銀製。これも、どこもおなじである。


 毒の混入を阻止する為の慣習。


 ガンドルフィ公爵令嬢は、控えめに表現しても美しすぎる。お姉様同様、顔の造形も化粧も衣裳も振る舞いもすべて派手である。


 サラッサラの長い金髪が、陽光を受けてキラキラしている。


 それにくらべ、わたしは不吉きわまりない短い黒髪に、顔の造形は地味すぎる。化粧はフィオレにお願いして最低限してもらった程度だし、衣裳にいたっては着古した時代遅れのドレス。


 おなじ女性だとは言い難い。


 案の定、ご令嬢たちは見た目から攻めてきた。


 頭の先から胸元まで、ジロジロと観察している。


 いまはテーブル席についているから上半身までだけど、立っていたらそれこそ頭のてっぺんから爪先までチェックされたでしょう。


 靴も爪先がとがって高いヒールのではなく、履き古したぺったんこの靴を履いている。


 二足持っているけれど、どちらもおなじような状態だから仕方がない。


 わたしのチェックが終ると、いよいよ口撃(・・)がはじまった。


「アロイージ王国では、そういうデザインが流行っているの?」

「黒髪の人は多いの?黒色ってあまり気持ちのいい色じゃないわよね」

「ドレスは、お祖母様の形見?」

「髪が短いのは聖女だから?」


 どうでもいいようなことばかり尋ねてくる。


 いっそ「ダサくて醜い女ね」って言えばいいのに。


「その顔は、遺伝なの?それとも、王国民全体的にそのような感じなのかしら?」


 きわめつけは公爵令嬢である。


 そんなわけないわよね?


 心の中で笑ってしまった。



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