2.突然の死
異世界でしか見えぬものがある。異世界でしか聞こえぬ歌がある… 流星劇場、開幕!
俺は田舎のコンニャク屋の息子に産まれ、地元の小中学校では優秀なほうで、順調に大学卒業後、特許庁へと就職した。
「こんなはずじゃなかった」
それが、俺の口癖だった。三十五歳、独身、親の敷いたレールの上を歩くだけの人生で、自身で人生の舵を握ろうとしては、何度も手を滑らせてきた。
毎日、何かを決めようとしては迷い、計画を立てては変更する。その度に心は疲弊し、行動力は削られていった。
「今日も疲れたなぁ、」
そう思いながら帰り道を歩いていると、雑踏の中を進んで来るものがあった。
「オラオラ、どうせ俺の人生はもう終わりだ。」
そんなことを叫びながら、刃物を振り回しながら、男が近づいて来た。
『死ね!』
と言われて腹を刺されると、突然、周りの動きがゆっくりになり、頭の中で、走馬灯のように映像がいくつも流れた。
・・・
「だって、神様が造った世界なんだから、嫌いになったら神様がかっかりするわ。私も自分の描いた絵が貶されたら悲しいもの。」
・・・
「おお、すげー、Sレアだ」
「ああ、初めて見たぜ」
・・・
「えっ、どうしてこんなものを! 間違いなく、特級品です」
・・・
「ダ、ダイアモンド。100カラットはありますよ!」
・・・
「アホ! こ、これは最高品質の玉鋼じゃ! こんなものが、取れるなんてことがロージア国にでも知られたら大変なことになるぞ!」
・・・
次々と流れてくる映像に繋がりはなく、どれも今まで経験したことのあるものではなかったので、走馬灯とは異なるらしい。
それから、もう一度、『死ね!』という声がしたかと思うと、一瞬だけ全身に痛みを感じ、自分の精神的なものがこの世界から消え去った。




