16.ダンジョン1日目
たいていの人は周囲の人はもちろん、親さえも幸せになどしてあげることはできない。それどころか迷惑をかけるばかりである。
さらに、その結果、本人が幸せになるかというとそんなこともないのだから、迷惑をかけられた側も浮かばれない。
(どうせ周囲に迷惑をかけながら生きているのだから、まずは自分が満足する人生を送ろう。)
仲間が増えて、責任も大きくなった俺は、前世での反省も踏まえて、心を引き締めた。
「開け、ゴマ豆腐!」
俺はダンジョンの扉の前に立って、そう唱えた。
ユーコとゴブリン達がずっこけたように見えたが、
「ゴゴゴゴゴ・・」
すぐに扉が地響きを立てながら開いていった。
「すごい魔素だ・・」
俺にはわからなかったが、ユーコがそう言うと、4頭のゴブリンも頷いた。
「よし、行くぞ」
300年ぶりに開いたダンジョンの中に、俺たちは入っていった。
・・・
魔素が溜まっているとはいえ、ダンジョンの1層目はスライムしか出てこない。
スライムは、あんみつの中に入っている賽の目の寒天のようにつるつるしており、ピョンピョン跳ねて動いている。
俺はパンチで、ユーコは棒切れでスライムを倒し続けた。
「おりゃあ!」
このダンジョンではレベルが自動で上がることはない。
自動でレベルが上がるようなゲームを作る技術がなかったせいだが、とりあえず、ダンジョンの中では、敵を倒すとポイントが溜まり、後で経験値やアイテムに交換できるシステムだ。
また、敵を倒すと、ポーションアイテムとゴールドを落とす。これまた確率で落とすような面倒なことはしなかったため、必ず落とすようになっている。
1層目では、HPを10回復するポーションと1ゴールドを落とす。それを荷物持ちのゴブリンに拾ってもらいながら奥に進んだ。
「ボス、もう持てない」
2時間もしないうちに、袋を一杯にしたゴブリンが俺に言ってきた。
「しょうがない。今日はここまでにしよう」
ダンジョンの中でリュックを開けると、魔素がリュックに入ってしまうので、ダンジョンの中ではリュックは使えない。
俺たちは心地よい疲れを感じながら、ダンジョンの外に出た。
☆今日の収穫☆
ポイント
リョータ、ユーコ:約1000Pずつ(800P+200P)
ゴブリン:約200Pずつ
HP10回復ポーション 約200個
ゴールド 約400G
回復ポーションは時々飲みながら戦闘したので、倒した数よりは少なくなっている。
俺とユーコが、それぞれ1時間当たり約100匹のスライムを倒したことになる。
ポイントは戦闘したものが1回につき4ポイント、仲間には1ポイントが入る。
「これは多いのか、少ないのかなぁ」
これがいかにチートか、この時の俺にはわかるはずもなかった。