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1.プロローグ
彼女は立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。彼女の歩みは、まだ不確かなものだったが、確かに一歩一歩が未来へと向かっていた。
その先に、何が待っているのかは誰にも分からない。しかし一つ確かなことがあった。それは、彼女がどんな存在であっても、自分自身であることに誇りを持ち続けるだろうということだった。
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ほんの数時間前、深い森の中に薄暗い夕暮れが差し込む頃、一匹の犬が草むらに横たわっていた。彼の毛はぼろぼろで、体は痩せ細っていた。
犬は、動けなくなった足を引きずりながら、何度も何度も目を閉じては開け、必死に自分を励まそうとした。痛みが体中に広がり、喉は渇き、心は切なくなった。しかし、彼の心にはただ一つの願いがあった。それは、もう一度だけ誰かに愛されることだった。