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線は点を結んでいるか

作者: 蔵部こきり

僕らガキの頃はさ、まだケータイもネットもなくて、友達の家電の番号は指が覚えてた


毎日学校で会ってるのに、家に帰ってまで長電話して親に怒られたもんだよ


授業中は配布プリントにまぎれて手紙が回ってきた


どんな話題をやりとりしていたのかなんて思い出せない


それはどうせた他愛もないどうでもいいことで、そもそも内容なんてなかったんだ


なんであんなに自然に、いつもいつも一緒にいることが当たり前だったのかな


用事もなく意図もなく、理由もなく目的もなく、僕らには本当は共通性すらもなかった


そういうものじゃない何かで繋がっていたんだ



いつから僕は、誰かの傍にいることに口実を必要とするようになったんだろう


いつの間に僕は、林檎を食べてしまったんだろう


もう裸の心では人と触れ合えない


繋がるツールはあの頃よりもずっと増えたのに、それを無駄遣いすることができない



今日も光る画面の中に浮かぶあいつの名前を見つめて


文字を打っては送信ボタンを押せずに削除キーを押してるんだ


別にこれは恋とかじゃないよ


一緒にいたいなんて言うと、なんかそういう意味になってしまうことがむしろ面倒くさいなって思う


そんな口実いらないんだよ


あの頃友達だからという理由で話しかけていたのか?


違うよ、つい話しかけてる相手が友達だったんだよ


気づいたらつるんでる相手が仲間だったんだよ


僕らは繋がるために用意された便利なツールを提供してもらわなくても


その時手に入るものを使って自らの手で知らずに紡いでいたんだ



どうして上手にできなくなっちゃったのかな


理由も目的もない旅に出かけ、用事も意図もない交流に戯れるすべを、僕はもう思い出せない


共通性を案内してくれる道路標識から外れて、草むらに寝転ぶ勇気がない


これが大人になるということなのか?


もしそうなら大人はちっとも面白くないな


子供の頃にできたことができなくなることを成長とは呼べないだろ



だけどそうやって立ちすくんでいる間にも、時は流れてゆくんだ


実りを求めないありかたに眉をひそめる老けた自分に


かまうことこそ不毛だとその老人自身が僕を諭す


だからもう一度、雑踏の中で独り言を呟いてみようと思った

これは2015年2月に閉鎖した某創作SNSでのつながりに思いを馳せて、2017年6月に書いた文章に加筆修正したものです。

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