表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

出陣式

 「魔族」が住むミゲルクルス大陸への、人間軍の総攻撃は、いよいよ明日に迫っていた。

 蒸し暑い夜の20:00。今回の軍事作戦の出撃地点となる軍港のそばには、巨大な会場が設けられ、そこに何万もの人間の戦士たちが、集結していた。

 これから人間軍の最高司令官(ガーセレン聖護国の皇帝)による演説が、始まるのである。


 今回の軍事作戦には、人間の国家・全てが――30ヵ国以上の人間の国々が、参加していた。それゆえに、会場に集まった人間の戦士たちの格好はバラバラで、まるで統一されていなかった。さまざまな軍服や民族衣装が入り乱れ、肌の色や顔立ちまで、それぞれ違っていた。

 ただ彼らに共通していたのは、心に激しく燃え上がる「戦闘心」と「魔族への憎しみ」のみであった。


 この雑多な人間軍を、まとめあげ率いるのは、人間界の中でも最強の国である「ガーセレン聖護国(せいごこく)」の若き皇帝ラズヘルク4世である。

 会場に設けられた壇上には、皇帝ラズヘルクが、ただ1人、立っていた。そして彼は、眼下に広がる戦士たちを、鋭い目つきで見下ろしていた。


 至るところに設置されている、かがり火が、戦士たちの横顔を、照らし出していた。


 深く息を吸い込むと、皇帝ラズヘルクは演説を始めた。

「旧き伝説は、伝えている。魔族は『幸福の実』を食べ、そして我々人間は『不幸の実』を食べた、と。

『不幸の実』を食べた我々人間に課せられた、その後の運命は、たしかに不幸なものであった。

我々人間の歴史は、過酷で、そして血塗られた歴史でもあった。

人間は、お互いに争いを続け、さらに太陽の光さえも奪い取られた。


これらの悲劇は、人間が背負いこんだ全ての不幸は、悪しき魔法使いども――魔族が、もたらしたものである。


我々は明日、この呪いに、永遠に終止符をうつ。

我々人間が、歴史的呪縛から解き放たれる時が、近づきつつある。

『魔族』との歴史的な戦いが、今まさに、はじまろうとしている!」


 ウォーという歓声が、戦士たちの間から上がった。

 しばらくして歓声が落ち着くと、皇帝ラズヘルクは演説を続けた。


「これが、我々人間にとって『史上、最後の戦争』となるだろう。

明日から開始される『魔族との戦い』において、我々人間は、邪悪な魔族どもが巣くう『ミゲルクルス大陸全土』を、ついに制圧するだろう。

そして我々は『7色の神器』を、全て手に入れるだろう!」


 再び大きな歓声が起きた。

 皇帝ラズヘルクは、戦士たちに向かって、最後の檄を飛ばした。


「我々人間は、『7色の神器』を全て手に入れることで、『旧き力(太陽)』を取り戻し、『新しき力(魔法)』を手に入れる!

1300年に及ぶ『魔族』との、つらく長い戦いが、ようやくこれで終わる!

この歴史的集会に集った諸君!

この戦いに勝利せよ!

偉大なる戦勝を、自らの手で、つかみ取れ!

さすれば我々人間は、平和で豊かな生活を、手にできるだろう!

我々人間は、現世の、あらゆる苦悩から開放されるだろう!

そして再び昇る太陽が、我々の未来を、明るく照らし出すだろう!!」


 ウォーーー!という大歓声が、会場をおおった。それは、遠く大海原にまで鳴り響いた。拍手は鳴りやまなかった。戦士たちをとらえた興奮は、いつまでも、おさまらなかった――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ