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プロローグ

 体中に深い傷を負った2匹のケモノが、腹をすかせて、荒野をさまよっていた。

 あわれに思った神は、彼らに「2つの果実」を与えた。


 この「2つの果実」は、両方とも同じ形をしていたが、色だけが違っていた――それは「黒い色」と「赤い色」をしていた。

 「黒い色をした果実」は「不幸の実」であり、「赤い色をした果実」は「幸福の実」であった。


 「不幸の実」を食べたケモノは、のちに「人間」と呼ばれる生命となった。

 そして「幸福の実」を食べたケモノは、のちに「魔族」と呼ばれる生命となった。


***


 「幸福の実」を食べた「魔族」は、「魔法」という奇跡を起こす力を、手に入れた。

 手を使わずに岩を動かし、水や火を自在にあやつり、空を飛ぶことさえも出来るようになった。

 さらに「魔族」には、約1000年の長寿が与えられた。

 「魔法」によって、大きな力を得た「魔族」は、豊かな生活を手にして、お互いに争いもせずに、幸せに暮らした。


 その一方で「不幸の実」を食べた「人間」は、魔法を使うことが出来ず、しかも短命であった。

 非力な人間たちは、貧しい生活を強いられ、そのため人間同士の争いが、たえなかった。


 この「2つの実」の話は、伝説として、後世に語り継がれていった――


***


 それから長い時が経過した。

「人間」と「魔族」の2つの種族が、世界を支配していた。

 世界は、2つの大陸に分かれていた――

「人間」だけが住む「ネファーンド大陸」と、「魔族」だけが住む「ミゲルクルス大陸」の2つである。

 「2つの大陸」の間には、広大な海が横たわっていたこともあって、「人間」と「魔族」は、大きな戦いもせずに、長い間、共存していた。


 しかし今から1300年前、「人間」と「魔族」両者の、平和的な共存関係は、終わりを告げた。

 そのきっかけとなったのは、大きな天変地異であった――「人間」だけが住むネファーンド大陸に、太陽が全く昇らなくなったのである。

 そのため人間の世界は、「暗黒の世界」と化した。人間界の荒廃が進み、人心は暗くなり、これまで以上に、人間同士の争いが増えた。


 その一方で「魔族」だけが住むミゲルクルス大陸は、これまでと変わらず、太陽の光が降り注ぐ、明るい恵みの大地であり続けた。


 人間の世界から、太陽が消えた――この天変地異は、「魔族」の仕業とされた。


 人間たちは、口々に叫んだ――世界支配をもくろむ、悪しき魔法使いどもが、我々人間を絶滅させるために、ついに行動を開始した!

ヤツらは魔法を悪用し、人間から太陽を奪ったのだ!


 以後、人間たちは、太陽を取り戻すために、なによりも生き残るために、邪悪な敵である「魔族」への戦争を開始した。

 人間は「7色の神器」を魔族から奪うため、魔族が住むミゲルクルス大陸への侵攻を繰り返した。


 「7色の神器」とは、絶大な魔力がやどっている聖物であり、虹のように7色に光り輝き、「幸福の実」と同じ、丸い果実のような形をしていた。

 そしてこの「7色の神器」は、全部で「7個」あった。


 魔族が人間から太陽を奪った際、魔族はこの「7色の神器」の力を借りて、太陽を封印した、といわれてきた。

 つまり人間が「7色の神器」を全て、魔族から奪えば、魔族が太陽にかけた呪縛は、効力を失い、人間は太陽を取り戻すことが出来るはずであった。


 また「7色の神器」は、7個、全てそろった時、「全ての7色の神器」を手にした種族に、魔力を与える、と伝えられてきた。

 つまり人間は「7色の神器」を全て手に入れれば、「魔法」を身につけることができるはずであった。


 1300年に及ぶ戦争の中で、人間は「7色の神器」が安置されている「魔族の聖地」に、次々と攻撃を仕掛け、7つある「7色の神器」のうち、6つまでを奪い取った。


 これで人間が手にしていない「7色の神器」は、残すところ「あと1つ」となった。

 「最後の1つ」さえ手に入れれば、人間は、魔族にかけられた呪縛から解放され、太陽の光を取り戻すことが出来るはずであった。

 そして「7色の神器」を全て、手に入れることによって、人間たちは「奇跡の力(魔法)」を身につけることが出来るはずであった。

 そして「人間」こそが、真の「世界の支配者」となることが出来るはずであった。


 人間は「最後の戦い」に打って出ようとしていた。1300年に及ぶ「人間」と「魔族」の戦いが、今まさにクライマックスを迎えようとしていた――

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