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抗えない

ご覧いただき、ありがとうございます!

 次の土曜日。


 俺は学園の校門前で木崎さんが来るのを待っている。

 といっても、まだ朝の七時半だし、木崎さんはまだしばらくは来ないだろう。


 というか。


「はは……習慣っていうのは恐ろしいな……」


 そう、俺は決して木崎さんとの“グラハム塔”領域(エリア)探索が待ち遠し過ぎて、こんな三十分も前に来ているわけじゃない。

 これは藤堂先輩と待ち合わせする時、いつも先輩は待ち合わせ時間の一時間前には来ているからだ。

 だから俺も、いつも待ち合わせの一時間前に来るようになって……。


「はは、むしろ先輩が俺に逢うのが待ち遠しくて……って、そんなわけないか」


 うん、先輩は俺みたいなクソザコモブと違って、完璧美少女だからな。単に先輩の几帳面で優しい性格から早めに来てるだけだ。勘違いするな、俺。


 などと考えていると。


「望月さん、おはようございます!」


 待ち合わせの十五分前、木崎さんは女神のような笑顔を(たた)えながらやって来た。

 というか、今日も超可愛い。ごはん三杯いける。


「お、おはよう」

「ひょっとして……待たせてしまいましたか……?」


 俺が先に来ていたからか、木崎さんが不安そうに尋ねる。


「あはは、お、俺も今来たばっかりだから……」

「そ、そうですか……よかった……」


 俺がそう言うと、木崎さんはホッと胸を撫で下ろした。


「そ、それじゃ早速行こうか」

「はい!」


 俺はいつものように校門の横にある通用門をくぐると、木崎さんもその後に続く。

 ここは、先輩が俺のためにっていつも開けておいてくれるよう、用務員さんに頼んでくれてあるのだ。


「うふふ、楽しみです!」


 木崎さんは俺の隣で嬉しそうに微笑む。


「えー、で、でも、木崎さんだって見学の時に入ってるんだから、そうでもないんじゃ」

「だって、今日は第二階層より上だって行くんですから!」

「あー、確かに」


 といっても、先輩の言いつけ通り今日は第五階層までしか行くつもりはないけど。


「あ、そうです! 探索を始める前に、お互いの精霊(ガイスト)のステータスを確認しておきませんか? お互い知っていたほうが、探索もスムーズですし!」

「ああ、そうだね」


 確かに彼女の言う通りだ。

 俺は制服のポケットからガイストリーダーを取り出すと、画面を木崎さんに見せた。


「わ! すごいレベルです!」


 俺の[ゴブ美]は、今じゃレベルが四十一になっていた。

 これも全部、先輩のおかげだ。


「あ、私の[グルヴェイグ]のステータスです」


 そう言うと、木崎さんはおずおずとガイストリーダーの画面を見せてくれた。


 —————————————————————

 名前 :グルヴェイグ

 属性 :女神(♀)

 LV :13

 力  :F

 魔力 :B+

 耐久 :D

 敏捷 :D-

 知力 :B

 運  :B

 スキル:【聖属性魔法】【光属性魔法】

【闇属性魔法無効】【回復量増加】【誘惑】

 —————————————————————


 ……うん、知ってる。『まとめサイト』で見たし。

 ちなみに、知ってることと素直に受け入れることは別だからな。


「あ、あはは、木崎さんの精霊(ガイスト)すごいね……」

「とんでもない! 望月さんの精霊(ガイスト)だって、すごいレベルじゃないですか!」


 確かに、レベルだけは(・・・・・・)、ね……。


 俺は無理やり微笑みを作りつつ、そっと心の中で涙を流しながら、 “グラハム塔”領域(エリア)の扉をくぐった。


 ◇


「[グルヴェイグ]! 【ライトアロー】です!」


 木崎さんがそう叫ぶと、[グルヴェイグ]の掌から光の矢が飛び出し、幽鬼(レグナント)の身体を貫通した。


「うふふ、やりました!」


 木崎さんが嬉しそうに飛び跳ねる。

 それに合わせて、その……木崎さんの先輩にも負けない程の大きな胸がたゆんたゆんしてる……。


「だ、だけど木崎さんなら、この第五階層だって余裕だね」

「うふふ……そう言っていただけるど、その、嬉しいです……」


 木崎さんが少し恥ずかしそうにしながらはにかんだ。

 というか、可愛い。超可愛い。


「え、ええと、とりあえずは第五階層も一通り見て回ったし、もう戻ろうか」

「ええ!? そ、その、もっと上の階層まで行きましょうよ!」


 俺がそう提案すると木崎さんは反対し、さらに上を目指そうと言ってきた。


「で、でも、今日は休日だし、何かあったら……「だ、大丈夫です! まだ(・・)第五階層ですし、それに、望月さんは第十階層まで探索した経験があるんですよね?」

「ま、まあ……」


 というか、いつも先輩と一緒だから常に第十階層まで行ってるけど……。


「お、お願いです! 私を第十階層まで連れて行ってください!」

「うああああ!?」


 木崎さんは俺の腕にしがみ付き、瞳を潤ませながらお願いする。

 というか、顔がメッチャ近い!? しかも胸! 胸が当たってる!?


「……駄目、ですか……?」


 うう……こんなの、抗える男はいるんだろうか……いや、いないな。

 というか、抗う気力そのものがなくなっていく感じだ。


「わ、分かったよ……ただし、本当に第十階層までだからね? 俺もそれ以上の階層には行ったことないんだから」

「! あ、ありがとうございます!」

「うああああああああ!?」


 き、木崎さんに抱きしめられてしまった……!


 というわけで、結局俺は木崎さんと一緒に第十階層を目指すことになった。


 でも……俺の心が、どうしても彼女に抗えないんだよ……!

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価をよろしくお願いします!

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