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三年生最強の二人

ご覧いただき、ありがとうございます!

「望月さん、露店の場所の割り当て、まだ調整が終わってませんがどうなっていますか?」

「望月くん、すまないがこの書類を整理しておいてくれ」

「ヨーヘイ! 学園祭用のアーチの発注はどうなってますノ!」


 先輩とサンドラと一緒に“ぱらいそ”領域(エリア)でのレベル上げ作業を開始した次の日の放課後……俺は三人から、いいようにこき使われていた。


 いや、確かに学園側との折衝なんかは藤堂先輩じゃないとダメだし、氷室先輩も学園祭の会計作業があるし、サンドラもその二人の補佐で手一杯だし……。


 うん、俺にできることは、むしろ雑用しかない。

 ということで。


「すいませーん。生徒会ですが、露店の割り当てのことで相談があるんですけどー」


 俺は一つでも仕事をこなすため、まずは吹奏楽部に来た。

 というか吹奏楽部って、学園祭で演奏とかするんだよな? なのに、なんで露店とか出す余裕あんの? 練習しろよ。


 すると。


「鈴原センパーイ! 生徒会が来ましたー!」


 練習もしないでおしゃべりをしていた女子生徒の一人が、音楽室の奥でトランペットを吹いている女子生徒に声を掛ける。


 フーン……あれが“鈴原カエデ”、だな。

『攻略サイト』では吹奏楽部の部長で、美人ではあるけれど、どこか挑戦的な態度とキツイ言動でメインヒロイン・サブヒロインの人気投票では常に下位ってなってたな。


「生徒会が何の用?」


 コッチに来るなり、早速睨まれてしまった。

 まあ、先輩の手下である俺に対して、いい顔するわけがないか。なにせ、そのせいで吹奏楽部は恩恵に預かれなくなったんだから。


「はい。露店の出店場所の割り当てについてなんですけど、実は希望いただいた場所が好立地のために、他の部活と競合してまして……それで、各部活に抽選のくじを引いてもらってるんです」

「はあ!? なんでうちがそんなことしないといけないのよ! 去年はそんなことなかったじゃない!」


 くじ引きを提案すると、鈴原カエデは露骨に顔をしかめ、俺に食って掛かった。


「いや、そう言われても……」

「ナニヨ! そんなの、生徒会がなんとかしなさい!」


 ハア……というか、まるで話を聞きやがらない……。


「……分かりました。では、生徒会が吹奏楽部の代理としてくじを引いた上で、その結果に基づいて割り当てますね。ああ、もちろん、後でやり直しだったり苦情は受け付けませんので」

「は? アンタ、一年生でしょ? ちょっと生意気なんじゃない?」

「すいません、仰ってる意味が分からないです。とにかく、ご自身でくじを引いていただくか生徒会が代理で引くかのどちらかですので」

「この……!」


 鈴原カエデは拳を握りしめながらプルプルしてる。

 いや、当然だろ。


「……いい度胸じゃない」

「すいません、仰ってる意味がよく分かりません。それで、どうされますか?」

「分かったわよ!」


 そう言って、俺が差し出した封筒の中から、鈴原カエデはくじを一枚引いた。


「……B—七よ」

「ああー……そうなると、こちらの体育館側の場所になりますね」


 鈴原カエデの引いた場所は、希望の場所ではないものの、それなりに悪くない場所だった。

 ここなら、やり方次第で繁盛するんじゃないだろうか。


「…………………………フン」


 だけど、それでも気に入らない鈴原カエデは、キッと俺を一睨みすると、鼻を鳴らして練習に戻って行った。感じ悪い。


「ハア……次、行くかあ……」


 そう呟くと、俺は肩を落として次の部活へと向かった。


 ◇


「エー……ウチ、イヤだし」


 次にやって来たのは陸上部。

 そして今、目の前で拒否を示した金髪ギャルが、陸上部キャプテンの“和気チアキ”だ。

 というかコイツも態度悪いな。人と話してるんだから、小指で耳の穴ほじるのやめろよ。


「そう言われても……今回はくじ引きで手を打ってもらえませんか?」

「ハア? そーだなー……ならさ、アンタがルフランのジェラート奢ってくれたら、考えてあげてもいーけど?」


 ん? ルフランのジェラートかー……って、なんで真剣に奢る方向で考えてんだよ。

 だけど、ルフランのジェラートねだるって、まるで[シン]みたいだな。


「ネ? ネ? 奢ってよー! 今月ウチ、ピンチなんよー」


 などと愛想笑いを浮かべながら上目遣いで拝む和気チアキ。

 ウーン……ジェラートの一つでくじ引いてくれるんならいいかなー……。


「……分かりました。それで手を打ちますよ」

「ホント! アンタ、生徒会の一年生なのに話分かるじゃん!」


 そう言って、ぱあ、と満面の笑みを浮かべた和気チアキは、俺の背中をバシバシと叩いた。というか、馴れ馴れしいな。


「それじゃ、早速くじを引いてください」

「ハイハイ」


 和気チアキは封筒に手を突っ込み、ガサガサとかき回すと。


「ホイこれ」

「えーと……A—四だから、希望していた場所ですね」

「ヤッタ! どーよ、ウチのくじ運は!」


 そう言って、和気チアキは満面の笑顔でピースサインをした。

 いや、どうって言われても……。


「ハア……それで、ルフランのジェラートはいつ奢ればいいんです?」

「ンー……ウン、今は部活が忙しーし、そん時になったらまた声掛けるし! エート、アンタ名前は?」

「あ、ああ……俺は“望月ヨーヘイ”っていいます」

「そっかー! じゃあモッチー(・・・・)、またね!」


 和気チアキは笑顔で手を振りながら、また練習に戻って行った。

 まあ、鈴原カエデよりは接しやすかったし、生徒会だからって露骨に嫌な顔されなかったから、まあいいか……。


 俺は頭をガシガシと()くと、残りの部活を回ってから生徒会室へと戻った。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価をよろしくお願いします!

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