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情報収集用ゲーム

ナカイドのゲーム情報チャンネル【辛口】

人気ゲームの運営を訴訟したらまさかの…ヤバすぎる炎上事件【KOF'98 UMOL】

https://www.youtube.com/watch?v=qlYrB9wtbdE


のネタバレを含みます。

見ていない人は先に見ておいた方が良いかもしれません。


 あなたはソーシャルゲームにここ最近嵌っていた。

 課金誘導ばかりに注力しているゲームが多い中、そのゲームはとても良心的な作りになっていて、無課金でも充分に楽しめた。“掘り出し物を見つけた”とあなたは機嫌が良い。まだあまり話題にはなっていなかったが、そのうちもっと広まるかもしれない。

 そのゲームの最大の特徴は、仲間同士との協力プレイだった。しかも、プレイヤー同士で競わせて、課金を促すようなゲーム内が殺伐となるシステムは採用していなかった。

 敵は飽くまでコンピュータ操作キャラのみ。その敵を知り合いになったプレイヤー同士で倒すのだ。課金していない戦闘能力の低いプレイヤーも、課金している高レベルのプレイヤーと協力し合う事で、強い敵を倒せる。もちろん、強い敵を倒せば、貴重なアイテムや金や経験値をゲットできる。

 高レベルのプレイヤーにとっても、強い敵を見つけて来てくれる無課金のプレイヤーはメリットのある存在だった。どうやら、弱いプレイヤーばかりを狙うタイプの敵もいるらしく、そのお陰で「足を引っ張る」と無課金のプレイヤーが煙たがられる事もなかったのだ。プレイヤー同士の絆が深まるようによく考えられた素晴らしいシステムだ。

 しかも、ロード時間も短く、運営の対応も非常に良好で、ストーリーもグラフィックスも秀逸だった。

 

 「これは、神ゲーなのじゃないか?」

 

 あなたは今日も楽しくそのゲームをプレイしている。

 しばらく進んで、ゲームの進行が止まった。ポップアップウィンドウが表示され、あなたに情報を入力するように求めて来る。

 「またか」と、あなたは思わずそう漏らしてしまった。

 それが、このゲームの唯一の煩わしい点だった。何故か頻繁に情報を入力するよう求めて来るのだ。

 初めの頃は性別、身長、年齢といった他愛のないものだったが、やがては住んでいる場所から大体の年収など細かく訊かれるようになって来た。

 もっとも、その入力した情報はゲームに活かされていた。そのゲームには、位置情報ゲームとしての特性もあり、住んでいる場所や行き先によってゲーム内のイベントや遭遇する敵が変化するのだ。ゲームサイトの説明によれば、データマイニングによって、その他の情報もプレイ内容に活かされているらしい。つまり、あなたが入力した情報によって、あなたがより快適に楽しくプレイできるようにゲームが調節されているのだ。

 “良ゲーを楽しむ為だ。仕方ない”

 と、あなたはゲーム内の指示に従って情報を入力しようとする。しかし、そこでふと不安が過った。

 それは、メッセンジャーアプリであるLINEのサーバーが中国にあり、しかもシステム管理者なら情報をいくらでも閲覧可能だったというニュースが少し前に流れていたのを思い出したからだった。

 LINEを運営するのは韓国系の企業で、韓国に情報が流れているのでは?という疑惑はかつてからあったが、まさか中国だったとは。

 そのニュースそれ自体よりも、日本人のほとんどが知らないうちに、中国にあるサーバーに日本人の情報が流れていたという事実にあなたは不安を覚えた。

 何気なく使っているアプリが、他の国に繋がっていて、いつの間にか不正利用されている可能性だってあり得るのだ。

 ならば、或いは、このゲームだって。

 

 「まさかな……」

 

 と、思いつつもあなたはその不安を払拭する事ができない。

 そこで、今までは大して気にていなかったそのゲームの運営会社を調べてみた。すると、それは間違いなく日本の会社だった。

 “これなら大丈夫か”とあなたは思う。

 日本は法治国家だ。実質的に、自由に情報を扱えるような法整備の緩い国とは違う。不正利用はし難いはずだ。

 が、再び情報を入力しようとして、指が止まった。

 そこでまた別の話を思い出してしまったからだった。

 あなたは“ナカイドのゲーム情報チャンネル【辛口】”というYouTubeチャンネルをよく楽しんでいるのだが、そこで見た動画の一つで、中国の企業が日本企業を騙って運営を行っていたという事件を扱っていたのだ。

 略称を『KOF‘98 UMOL』という日本の格闘ゲームを元にしたスマホゲームがあるのだが、このゲームの運営に対して、訴訟を起こした人物がいたらしい。

 ところが、その訴訟を受けた日本の会社は、そのゲームを運営などしていなかったというのだ。本当に運営していたのは中国の会社で、その所為で訴訟も成立しなかったらしい。

 

 もし、このゲームの運営会社も、そのように日本の会社を騙っていたとしたら?

 

 そこであなたは更に不安になる。

 このゲームは、どうしてこのようにサービスが良いのだろう? ソーシャルゲームは、普通、いかにして客に課金させるかを重視しているものだ。それなのに、このゲームはいかにして客に情報を入力させるかを考えているように思える。

 

 もしかしたら、このゲームは、そもそも情報を集める為に開発されたゲームなのではないか?

 

 ――そう思ったあなたの指はもう動かなかった。この電子画面の先の先にいるのは、果たして、どんな国のどんな人間なのだろう?

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