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レベル上げ


 一週間ほどかけて、レベル3になった。

 パラメータはまた上がった。

 レベル1の頃の三倍の強さだ。

 力を調節しないと、いろいろ壊してしまう。


 パラメータの意味も調べてみた。

 力は筋力に置き換えられる。

 殴る、蹴る、投げるなどに関わる数値だ。

 絶妙なのは力のパラメータを上げても、足が速くならない点だ。

 移動に関する筋力は、速さで変わる。

 筋力と一口に言っても、用途によって関わってくるパラメータが変わる。


 見かけ上の筋肉量が変わっていないので、体を動かす際に、各パラメータによって補正が入ると言うべきか。


 HPは文字通りヒットポイントだ。

 怖くて実験できていないが、怪我をすると減るものと思われる。

 ゼロになると気絶するのか、それとも死ぬのかは不明だ。


 防御は体の頑丈さを表す。

 物理的な衝撃を加えられたときの怪我のしにくさだ。

 今の俺は常人の二倍以上の頑強さを持つため、多少のことでは怪我をしない。


 一度、山の急斜面を転げ落ちたが、HPが1減っただけだった。

 死んでもおかしくなかったと思う。

 だが、落ちたあとも体は動いた。

 擦り傷が治ると同時に、HPも回復した。


 幸運はよくわからない値だ。

 初期値のまま動かない。

 たぶん、まんま幸運を示すのだろう。

 運の良し悪しを感じたことがないので、実感はないが。


 そして、魔力だ。

 レベル3でついに1増えた。

 何が起こるかというと、何も起こらなかった。

 何のためにあるのか要調査だ。


 最後に全く新しい要素が加わった。

 スキルだ。

 レベル3になると、一つのスキルが与えられた。

 鏡を見ると、パラメータウィンドウに映っている。



【コマンダー】

 自らをコントローラで操作できる。



 正直、よくわからん。

 コントローラってなんだ? ゲームか?

 PF3ならうちにもあるが……。

 リビングからPF3用コントローラを持ってくる。

 スティックを操作する。

 何も起こらない。

 そりゃそうだ。

 コントローラがどこにも挿さってないんだから。


 ……挿さないとダメなのかな。

 仕方ない。

 俺はズボンを脱ぎ始める。


 尻に挿して◯ボタンを押す。

 右手が勝手に動いてパンチが出た。


 おぉ! 動いた!


 ×ボタンを押す。

 キックが出た。洗面台を蹴り飛ばし、棚に穴が空いた。


「……」


 なんて使いづらいスキルなんだ。

 俺は尻からコントローラを抜いて元に戻した。



 以下、悔しい余談。

 実験を繰り返したところ、コントローラは実物でなくてもよかったことが判明した。

 頭で思い浮かべてボタンを押すと体が動くのだ。

 これなら便利だ。

 格闘技の初心者でも、鋭い攻撃が放てる。

 しかも型通りに正確に。

 武術ってのは、型をマスターするまでが大変なのだ。

 その道のりをすっ飛ばしたわけだから、十分、強い。


 不満があるとすれば、説明文の不親切さだ。

 きちんと書いてくれれば、親に叱られることもなかったのに。



「兄さま、最近楽しそう」


 ある日、珠美はそんなことを言った。

 俺の家で格ゲーをしながらだった。


「そうか?」

「うん。ウキウキしてる」


 バレてたか。


「家にもいないし、何をしているの?」

「山に行ってる。鍛えてるんだ」


 嘘ではない。


「えー。引きこもりの兄さまが?」

「はっきり言い過ぎだ」

「熱を測ろうね?」


 珠美はゲームを中断して、体温計を持ってきた。

 水銀体温計なんてどこにあったんだ……。

 てか、俺より俺の家に詳しいな。


「いや、熱はないから」

「本当?」


 珠美は残念そうに体温計をしまう。


「困ったことがあったら、私を頼っていいからね」


 珠美はいい子だ。

 ぜひ五年後もきれいなままでいて欲しい。


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