もふもふな星
なろうラジオ大賞用小説第一弾。
世界人口が五十億人を突破し、人口の増加を原因とする様々な環境・経済問題がさらなる悪化を見せた近未来。
国連はそれらの問題に対処するため、これまで国家間で競い発展させてきた宇宙開発を、国家間で協力し合い発展させる事を表明。
この決定に一部国家は自国の利益を考え反対したが、最終的に全ての国が、次代の若者の事を思い、一致団結して宇宙開発に臨んだ。
――そして月日は流れ、十数年後。
ついに人類は、移住可能な星を見つけるため外宇宙へ旅立った。
果たして彼らが行き着く先は人類のさらなる発展か、それとも破滅か。
※
人類が新天地に旅立ち始めて百余年。
私が乗る宇宙船は奇妙な星を発見した。
クラゲのようにゆらゆら揺れる何かに、全体が覆われた不気味な星だ。
光学スキャンで調べたところ、その何かの構成成分はタンパク質に水分、脂質、そしてメラニン。
揺れる物の正体はまさかの毛だった!?
しかもその下に地面が存在する事が分かった。ついでに空気も存在していた。
とても信じがたいが……この星の地面から、普通に毛が生えている事になる。
もしかすると移住可能かもしれない。
私達は一応宇宙服を着て、小型船に乗り換え星に降り立った。
にしてもこの星から生えた毛は、近くで見るとさらに奇妙だ。
星の毛だからド太いかと思ったら、私達が知る毛と同じ太さなのだ。
『ダニやノミになった気分だ』
船長がぼやく。
私も同感だった。
『キャー♡ もふもふぅ♡』
『こら、ちゃんと調査しろ!』
船長が毛にダイブしたクルーに注意する。
それはそうと、確かにこのもふもふは良い。
まるで雲に乗っているような快感を覚える。
私もぜひダイブしたいが怒られるので自重する。
『ん? これは?』
穴だらけの石のような物が、毛と毛の間に落ちていたのを船長は発見した。
って、これは!?
『ず、頭蓋骨!?』
クルーの一人が叫ぶ。
まさかこの星にはかつて人がいたのか。
『ていうか、頭から毛ぇ生えてません、それ?』
別のクルーが指摘する。
言われてよく見ると……確かに頭蓋骨から長い毛が生えている!?
『ま、まさかと思うが』
船長は言う。
『この星の民の毛は、何らかの要因により異常に伸び続けるようになり、その毛が惑星を覆って……そのまま滅んだんじゃ?』
その推測に誰もが納得した。
毛にダイブしたクルーは死者の毛だと分かり驚愕した。
そして後に、この星には移住できないと判断された。
移住した私達も同じ運命を辿るかもしれないから当然だよね。