事情
天照、木花咲耶。
日本の女神達は、何故ここに呼んだのだろうか。
世間話する為にわざわざ、呼ぶわけでもないし。人間には人間の事情もあるだから、神々にもそういう事情があるのだろう。
麗漓が、挨拶とかカケラとかどうでもいい風に、切りだした。
「で、あなたたちが、あたしと要を呼んだ理由をさっさと話してくれない?」
「麗漓先生、相手は神様ですよ」
「確かにそうなんだけどさ」
要に注意されるが、麗漓はめんどくさそうに髪を掻く。
「言葉遣いなど、どうでもよい。麗漓、好きなように話せばええ」
「そうですね。堅苦しい事は無しで行きましょう」
「わかってるじゃない」
「はぁ……」
天照、木花咲耶の二人は、そういうことを気にしない神様のようだ。
「呼んだ理由じゃが、その前に二人に聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
麗漓は本当に面倒臭そうに、訝しげな表情で腕組みした。要もそれは分からないでもない。
理由を聞きたいだけなのに、逆に聞きたいこと、らしい。
「変な事言うようですが、二人は異世界というかのを信じます?」
「異世界、ねぇ」
「先生、これが理由でしょうか」
「だろうねぇ。まあ、うちらにも世界があるんだし、別の星や場所にも世界があってもおかしくはないわね」
確かに世界は一つじゃない。
星一つ違ったら、異世界となる。興味が無いといったら嘘になる。
「で、その異世界とやらがなんだっていうの?」
「興味ありそうじゃの」
「まあ、無いと言ったら嘘になります」
異世界。
文字通り、異なる世界。
向こうに行ったとして、帰れるかどうかという事に尽きる。二人には家庭を築いているためだ。
学園の教師をもしている二人は、異世界に興味持てても、こればかりはどうしようもない。
「悩んでおるようだのう。無理ない事だがの」
「そのようですね。まあ、向こうの神も大丈夫みたいですが」
異世界の神様もようこそウェルカム状態らしい。
日本の神々と異世界の神は繋がりがあるみたいだ。神と名乗るのだ、問題は無さそうだが確認はしときたい。
「天照様、確認したいんですが」
「なんじゃ?」
「異世界に行ったとして、行き来は可能なのですか?」
麗漓もそれが聞きたかったのか、左手を右手でポンと軽く叩きながら、首を縦に降る。
「それについては、大丈夫じゃ。行き来は出来るがの」
「で、そもそも異世界とやらで何が起きているのよ」
「ん?いや、何も起きておらんぞ?」
麗漓の問いに、天照は首を傾げながら、答える。天照に補足するように咲耶姫が口を挟む。
「向こうは、今のところは平和ですね。行き来は問題ありませんが、建物ごとか街ごとするかもしれません」
「ちょっと待って、待って。街ごとって、街の住民はどうなんのよ」
麗漓は咲耶姫の補足に食ってかかる。
まあ、分からないでもない。街ごと若しくは建物ごととは、正に寝耳に水とはこの事だ。街ごと転移されたとしたら住民は一緒に転移されるのではないか。
「その事じゃがの。もし街ごと転移されたとしてもお前らだけじゃよ。そこは案ずるな」
「その為に私たちも、同行しますから」