神々との邂逅
光輝くのが止むと、辺りが白い空間に包まれる。
麗漓と要は辺りを見回す。
「真っ白だわね」
「ですね。どこでしょうか、ココは」
「そうだねー。少なくとも部道場ではないわね」
「学園都市や日本にこんな場所ありましたっけ?」
どこまでも白い空間は、落ち着かない。
麗漓は落ち着ける手段はあるようだが、要は少し落ち着かないようだ。
何も無い白い空間だからこそ、だろう。
「ほう、この空間でも落ち着いている者がいるとはの」
二人のいるところとは、あらぬ方向から声がした。女性の声だ。
「そうですね。主様、もう一人の方は辺りを見回してますが」
「うむ。まあ、仕方なかろう」
もう一人、また女性の声がした。
先程の女性より、高い声だ。
喋り方は、気品というにはあまりにも神々しい。
「気配でいうなら、目の前にいるわね。というか人間の気配じゃないわ」
「ほう。なかなかじゃの。褒美に姿を現わすとしようかの」
目の前に椅子に座った二人。
中央に座った女性は黄金で派手な髪飾りに、純白の御子衣装。
隣に座っている方は、桜色の着物衣装に包まれた女性。
「ん?何か見た事あるなぁ」
「麗漓先生、知ってるんですか?」
「んにゃ。知ってるというより、思い出しそうって感じかな」
麗漓は、腕組みしながら答える。
その答えに、中央の女性が口を挟む。
「流石じゃの。我のカケラを持つだけはある」
「カケラ?」
「そうカケラじゃ」
麗漓は女性に鸚鵡返しに聞きかえす。
カケラといったか、女性のカケラね。まさかね。
「まさかの回答していい?」
「ふむ、答えてみい」
「思い出した。その衣装、髪飾り……。そしてカケラ。あんたは、天照大神そのもの」
何故、麗漓が答えられたかというと、麗漓は日本史教諭だからである。答えられて当たり前。
「そうじゃ。我は天照。其方の刀に我のカケラが入っておるゆえな」
「まあ、確かにこの刀も《天照》だけどね」
麗漓の所持している刀。
『天照・暁』
巴家に代々伝わる宝刀で、使い手を選ぶとされていた。麗漓はそれを難なく使って見せた。
「わたくしのカケラも感じますね。わたくしが分かりますか?」
「まあ、ここまで麗漓先生たちの話で、わからないとね。木花咲耶姫ですよね」
要も麗漓と同じ、教師。要の受持ちは国語。聴き取り出来ているようだ。
「はい。わたくしは木花咲耶。貴方の刀にわたくしのカケラが入っていますね」
「そうですね。この刀の銘も《此花咲耶》ですから、刀身も姫様の衣装の色と同じですよ」
要の愛刀。
『此花咲耶・絢爛」
本来は宝刀でもなかった。桜の木の近くで良質な玉鋼が採れた。桜の木の近くで採れたせいかどうかは、定かではないが、淡い薄紅色の玉鋼だった。
この玉鋼を素材に打たれたのが、この刀である。