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ⅩⅩⅡ 起死回生?

お久しぶりです。 今年もよろしくお願いします。

まだパソコンは治っておりません。

調子良いときは再起動祭りが開催されます。



「ラフ&スムース 第三章」




じゃりっ


「あんっ」


じゃりっ


じゃりっ


じゃりっ


「あっ、あっ、ちょっ! わかった、わかったからあっ!」



ふ、ふふふ……



先ほどはとんだ醜態をみゆきちゃん達に晒してしまったが

おそらくこれは起死回生の一打になるであろう。


実は昨日もみゆきちゃんはウチに来ていたのだ。 が!

お風呂に入った後、

急激に脳への血の巡りが良くなったのかどうかはよく知らないんだけど

多量の宿題を出されていた事実が次々に思い出されて発覚!


よりにもよって今日一日の授業の全部。 つまり各教科の先生全てから

なんらかの課題や宿題を出されていたのだった。


――って! いや! 

それ忘れていたってレベルじゃ済まないと思うんですけどぉ!?


お泊りしてる場合じゃないでしょ?

大丈夫ですかみゆきちゃん? 


そんなに浮かれていたのですか?

確かに誘ったのは私の方なんだけどさあ……



実は、というかべつに秘密でも何でもないんだけど

うちの学校は塾とか予備校みたいなのはあまり推奨されておらず

基本的には学校内の自習室か図書室、

もしくは寮か在宅での勉強に重きを置いているのだ。


公立の学校とは違い幼稚園から高校大学まで揃っている

この「私立東西学校」(一貫校なので人によっては「私立東西学園」とも呼ばれている)は

形式上、進学に試験はあるとはいえ

半分エスカレーター方式なので

他所の受験のための勉強方法を取り入れる必要性があまり無い為だからだ。


もちろん他校の高校・大学を受ける生徒も少数派だが確かにいる。

理由は、授業について行けなくなりランクを落とす者とか

ここが私立ということもあり授業料が結構割高なので

自身の家庭の家計・財政の圧迫状況などを鑑みて公立に移る者、

もしくは更に上、高みを目指し

国内でも有数の超有名校を受験する者などと、まあ様々だ。


「…………」


いや、ここだってこれでも割とレベル高めなんだよ!


半分エスカレーター式とはいえ

赤点取ってたら当然のように進学させてはくれないし

その赤点の設定基準もそんなに甘くはないし。

大学まで進学しようと思えば

普通に標準的な国公立の大学入試に受かるレベルの

成績はキープしておかないとたぶん無理だし。


もちろん学部・学科によっても難易度は違うので

ちょっと成績の悪い人用の救済的な学部も一応存在はしているんだけど。


だから今現在落ちこぼれでないのであれば

そこまで根をつめて勉強に打ち込まねば

ならないってことはないんだけれど、

とはいえ不真面目にしていればすぐに置いてけぼりにされてしまう。


逆に、春菜ちゃんなんかは中等部からの入学だから

入学試験の難易度はかなり高めで

入るには最低でもいきなりクラスの上位に食い込むくらいの実力がないと受からない。


そうやってこの学園は新たな高いレベルの生徒を外部から吸収し

今までよりも更により高い地位を築き上げて行ってるのだ。


……ま、学校の思惑なんかはよく知らないしそれはさておき。

私に直接関係無いしね。


でも医学部を目指してる私なんかは

きっと課題や宿題だけでは足りないんだろうけどね。

孝志の知識も理科とか偏った一部分以外はそんなにアテにはなんないし。

なんせ底辺工業高校出身だし……


「…………」


……あんま転生チート、無いよね、私…………


後悔先に立たずとはこのことなんだろうね。


今世ではもう少し充実した人生を送ろう。 うん。 そうしよう。

もしかしたら来世でもまたこういうこともあるかもだし

その時はきっとこの努力が役に立つかもしれないし。



みゆきちゃんの今現在の成績は学年では丁度中の中くらい。

調子の良い時にごくたま~にギリ上の下くらいには入るらしいけど

まあ普段は良くもなく、悪くもないというのを地で突き進んでいる。

「将来的には鈴音と同じ学部に行けたらいいなあ……」

とか確か言っていた筈なのですが、これ大丈夫なんでしょうかね?


つまり、全然余裕があるわけじゃないのだ。


その日、彼女は慌ててアパートに宿題を取りに帰って

私の家のリビングでそのまま深夜まで宿題大会を開催することとなった。


私もここのところの色々あったゴタゴタで

すっかり遅れていた勉強を取り返すべく

付き合いで一緒にずっと勉強に集中していたので

(折角上級生が横にいるんだから、わからないところとか訊けるしね)

最後はそのまま二人して力尽きて寝てしまっていたのだ。



結局、なんだかんだでこの子のお披露目はできなかったのである。


部屋のエアコンはずっとかけっ放しだったとはいえ

一日中ケージの中に閉じ込めていたせいか

若干不機嫌な気もしないではないが……


まあ、きっと気のせいだろう、うん。



というわけで作者は忘れていたわけじゃないよという言い訳……ゲフンゲフン!

説明も終わったところで


では、さあ、いざ! 出陣!



「行くよ~……って! ぎゃああああっ! 

だから、髪の毛は駄目だってばあっ!」







トントントン


と、階段を降りてくる音がする。


「……どうやら主役が来たようね。

みゆき、気分を切り替えなさい」


「あ、当たり前です! 

そもそも本来私は鈴音を激励する為に来たのに

それで空気悪くしてどうするんですか!」


「あ、そうなの?」


「……もみじから訊きましたよー、練習試合のこと。

鈴音をコテンパンにしたんでしょ、先生?」


「あらやだ、訊いてたの~?

まあ、まだまだ新人ごときに遅れを取るわけにいかないしね~」


「少しは加減してください!

折角やる気出してくれるようになったのに!」


「……加減、ねえ……」


「……?

まあ、いいです。 今からはアゲアゲでいきますからね!」


「はいはい……」


ガチャ

とリビングの扉が開いた。


「お! 本日の主役、山桃鈴音さんの登場ですよ! ピーピーっ!」


「お、お待たせ、しましたー?」


「いーや、ぜんぜん!

今さっき夕食の準備が整ったところだよ、鈴音ナイスタイミング!

いやあ、ゆるふわなピンクのにゃんこ柄の部屋着が相変わらず可愛らしい。

これ、確か一年ちょっと前に私が選んだんだったよね~!」


「そ、そうだね……」


なんかみゆきちゃんが場を盛り上げようとしてくれてる?

気を使わせちゃってるなあ……


「一年経っても愛用してくれてるところを見ると

嬉しい事に相当気に入ってるんだろうけど

鈴音も成長期だしそろそろ次の部屋着を一緒に買いに行きたいなあ

また今度一緒に買い物に行こう!」


「う、うん……」


「……ん?」


「ふが! ふがふがふがっ!」


どうやら、事前に台詞を考えていたのか

みゆきちゃんは一気にここまで言い切ると

ようやく私の姿の違和感に気が付いたようだった。


「…………」

「…………」

「…………」


「…………えと、鈴音さん?」


「は、はい……」


「……鈴音さんの肩に、何か得体の知れない毛玉が乗っかっているんだけど」


「はい……」


「しかも、鈴音のシャンプー後のしっとり濡れた綺麗な髪が……

――――ヨダレまみれでべとべとにっ!?」


「そ、そうだねえ……ははは……」



「「って、猫ちゃんー!?」」



「えへへ……は、はじめまして。 クーちゃんと言いますこの子」


「く、クーちゃん!? な……なに、これ、かわいいーっ!」


どうやら初見の掴みはバッチリのようだ。


うんうん! そうでしょう! そうでしょうとも!


私はともかく、孝志は幼い頃から今まで

ずっと欠かさずに猫を飼ってきたのだ。

その歴代の猫の中でもおそらくこいつは最強クラスに可愛い。


「灰柄の虎猫、すごいふわふわの毛並みね!

鈴音、いつの間にこんな可愛い猫ちゃんを?」


みゆきちゃんが目をキラキラさせながら近づいてくる。

うん、やっぱ連れて来て良かった。


「外国種との混血なのかな?

まあ……なんとも、ハイカラな猫だねえ……」


「…………」


それは灰カラーとか灰柄をかけてみたのですか日影先生!?

だけど今日日あんまハイカラなんて台詞は使わないと思います先生!

昭和どころか、明治とか大正時代ですよそれ。


「さ、さ、さわっても、いいかな? 鈴音!」


「…………いいけど、気をつけてね」


私の肩の上でしばらく私の髪の毛を

むしゃぶりつくしていたクーちゃんは

ピクリ、と

伸ばしたみゆきちゃんの手に気が付いたようだ。


まん丸の目玉が迫ってくるその手を凝視する。


「あ、ダメだ……」

「え?」


がぶり!


「…………」

「…………」

「…………」


「…………えっと……鈴音…………痛いんですけど?」


「……うん、見事に喰らいついているね」


ぶらーん


釣れた。


みゆきちゃんは指を引き抜こうと腕を引いたのだが

そのまま毛玉猫は指に引っ付いてきた。


「……どうしよう? 鈴音ぇ……」


涙目で私に必死に訴えかけてきた。


「え、と……」


まずい。 こいつ目の色が変わっている。

このままではこいつは更に

みゆきちゃんの手首に前足でホールドかまして

後ろ足で腕を連続で蹴り上げる気だ。


そうなったら流石のみゆきちゃんでも号泣してしまうかもしれない。


折角の起死回生の一打になるはずだったのに……


どうしてこうなったんだろう?



「ふが! ふがふがふがっ!」


「す……鈴音えぇぇっ…………!」


「………………」



年棒、下げるぞクーちゃん。






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