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ラフ&スムース  作者: 新田 やすのり
ZERO(第零章)
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ラフ&スムース ZERO  ―深山三姉妹編― 伍話



「ラフ&スムース ZERO」





「けほっ! えほっ!

……………………えへ! いっぱい出たね♡」


「そんなエロかわいく言っても駄目!」


ぴしっ! っとデコピンをまぽりんの額に放つ。


「あんっ! 折角タカ先輩に奢ってもらったタコ焼きが

焼く前の状態に戻っちゃいました~

……また焼いたら食べられるようになるのかなあ?」


「食うな! …………いや、冗談言ってる場合か? 大丈夫なのか?」


「あは、大丈夫じゃないれすよぉ……うぷ!」


「お、おいおい!」


「ムネがくるしーです、先輩」


「俺にどうしろと?」


「さすってください」


「ええっ!? む、むむむむ、胸を!?」


え? なにその展開?

なんてエロゲ?


「あはは、やですねえ、背中ですよ、せ・な・か」


「あ、ああ、ま、まあそうだよな!」


「そもそも真歩の胸なんて、さすってもぜんぜん面白味ないですよ。

ひー姉ちゃんとかならさすり甲斐あるでしょうけど」


「……あ、ああ、ま、まあそうだよな!」


テンパって、それしか言えなくなっていた。


「……ぐすん、面白味ないんだ……」


「え? あっ! いや! 日影のことだろ?

も、もちろんそっちの方を言ったんだよっ!」


「ひー姉ちゃんのおっぱい揉みたいんだ……」


「あーいや! やっぱ今の、全部無しっ!」


「ふーんだ! どうせ真歩の胸と背中は区別つきませんよーだ!」


「さすって欲しくないのか?」


「さすってください」


「ったく、もう……」


そんなやりとりを交わした後に彼女の背中をさする。


「ああ、そこそこ……ん、ぅんっ……もっとぉ……」


「い、いかがわしい声を出すなっ!」


ただでさえ背中とは言え女子の身体に触れて変な気分になってるのに。

ていうか、さするたびに手にはブラ紐とかキャミソールとかの

下着の感触が伝わってきてドキドキして

なんだか妙に落ち着かない。


「も、もういいか?」


「……うん、いい……いい、よ……」



「……なにやってんのよ、あんたたち?」



「うひゃあっ!?」


なんとなく罪悪感に駆られながらの作業だったので

思わず変な声が出て飛び上がってしまった。


「な、なんだ……日影か……」


彼女はまぽりんの様子を伺ったあと

ジロリとこちらを睨みつけ悪態をつく。


「……なんだとはご挨拶ね!

阿部のチャリが校門のところに見えてるのに

いつまで経っても姿を現さないから見に来てあげたのに

まさかこんな所でウチの妹相手に

いかがわしい行為をしてるなんて、思いもよらなかったわ」


「ちょ、ちょっとマテ!

いかがわしい行為ってなんだよ!

ぼ……俺はただだな!」


「そうですよ! 

センパイにはただ気持ちいいことしてもらってただけですから!」


「うおおおい! まぽりんー!?」


「…………あんた……」


日影は軽蔑混じりのジト目で俺を見つめていた。


「ち、チガウー!

ただ単に一緒に買い物に行ってただけで

そしたらお前の妹が自転車に酔っタンダヨおー!」


「センパイ! 妹じゃなく”まぽりん”です!

そこ! 重要ですよ!」


「…………」


いや、重要な箇所は別にあると思うんですけど。


「……はあ、わかってるわよ。

本当は、結構前から様子見ていたし」


ええっ!?


「ま、まえって、……いったい……どのくらい?」


俺は恐る恐る訊いてみる。

いや、何もやましいことなんかしてなかった筈……だよな? 俺?

なんか自信なくなってきたんだけど。


「阿部が私の胸を揉みたいって所くらいからかなあ?」


「ち、ちがうー! 僕はそんなこと言ってないー!」


「やっぱり! 本当にそう思ってたんだ!

タカ先輩のえっちすけっちわんたっちー!」


「ええー!?」


まぽりんまで一緒になって、俺を変態にしたてあげようとしている!?

俺はハメられたのかー!?

しかも今日日えっちすけっちわんたっちなんて誰も言わねーぞおいー!


「……冗談よ。 ちょっと焦るあんたが面白いから、からかっただけ。

……ね? ”僕”ちゃん?」


「……あっ!」


にやりと口端を釣り上げながら俺の発言の揚げ足を取る。


しまった。 やられた!


「ふふっ、ざーんねん! 二年生になって後輩の前では

一生懸命自分のこと”俺”って言ってたのにねえ……

先輩デビューしそこねちゃったねえ、阿部くん?」


「どど、どうでもいいだろ! そんなこと!」


「か、かわいいいー! ……センパイ、もっかい! もういちど”僕”って言って!」


「い、言わん! 今のは幻聴だ! まぽりんは忘れなさい!」


「ええー! ぜったい馬鹿にしませんからあ! もういっかいー!」


「ほ、ほら! もう気分も落ち着いたろ?

それじゃあ俺はコートに戻るから!

後は日影に任せる。 お前らもすぐ来いよな!」


「ぶー! センパイのいぢわるー!」


「はいはい。 わかったから、

水無月がさっきからずっと首を長~くして待ってるから

阿部はさっさと行ってあげてね」 


「あ、ああ、わかった!」


そんなにあいつ、大判焼きを楽しみに待っていたのか?

遅れた分、俺のも余分に付けてやれば機嫌も治るかな?

まだほんのり温かいから大丈夫だよなきっと。










「…………真歩、あんた、また無理してたのね?」


「……無理なんて、別に……してないもん!」


「まったく、貴女は身体弱いんだから無理しなくていいって言ってるのに。

家のことは水無月や私に任せておけばいいのよ」


「だって! やっぱりそれは……違うと思ったんだもん!

真歩は、真歩の役割がきっと何か、あるはずだから!

だからお姉ちゃん達には頼りたくない!

真歩の問題は……真歩が解決したいから!」


「真歩……そんなに頑張らなくてもいいのよ?

私たちだって、ただ与えられた役割を果たしてるに過ぎないの。

だから、気にしなくても……」


「……これは、真歩の挑戦です!

ひー姉ちゃん。 真歩はこれからタカ先輩と一緒に特訓をして

ひー姉ちゃんと……そして、みー姉ちゃんに、挑みます!」


「!」


「もし、もしも、真歩が……

お姉ちゃん達に引けを取らない実力を示せたなら……その時は!

真歩を、認めてくれますか!?」


「真歩……」


「おうちではもう、真歩は練習にも参加させて貰えません。

だけど、テニスでお姉ちゃん達と渡り合えたなら……

もしも、打ち勝つことができたなら!

真歩は……真歩は! もういちど……!」


「……わかった。 貴女の納得いくまでやってみなさい。

やり残しや後悔はいつまで経っても残るわ

だったら、やれるだけをやってみたらいい」


「い、いいの!?」


「結果を見て自身で判断するのね。

もちろん、私達は手加減なんて、しないから」


「そ、そんなの当たり前だよっ!」


「水無月には私からうまく言っておくわ

そんなので仲違いするのは、貴女も本意ではないでしょ?」


「う、うん…………ありがとう! ひー姉ちゃん」


「…………それで選んだのが、姉妹揃ってあいつ、か……」


「……お姉、ちゃん?」


「……まったく、真歩といい、水無月といい

あんな冴えない奴のどこがいいんだか、理解に苦しむわ!」


「ひー姉ちゃん…………センパイは、きっと……」


「ええ、真歩に取ってはそうだと、いいわね」


「…………うん」


たぶん、それはひー姉ちゃんに取ってもおそらくは同じ。

普通は有り得ないことなんだけど

何故か、私にはそんな予感がしました。




ここから、私の

己の尊厳を賭けた戦いが――始まったのです。










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