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ラフ&スムース  作者: 新田 やすのり
ZERO(第零章)
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ラフ&スムース ZERO  ―深山三姉妹編― 参話



「ラフ&スムース ZERO」







「真歩を、タカ先輩の…………パートナーに、してくださいっ!」


「……え?」


「…………人生の…………てへっ」


「ええーっ?」


「……冗談ですっ! ソフトテニスのですよっ!」


あ、やっぱ。

まあそうだよねー普通。

でも、なんで半ギレ気味で言うのかな?


だがしかし!


「……君は、確か顧問の先生に選手として認められてなかったよね?」


「……はい」


「医者にも激しい運動は控えるようにと言われてたんじゃなかったっけ?」


「…………はい……」


「今だって、倒れてたじゃないか!

道の端の方だから車に轢かれる可能性は低かったとはいえ

バイクとかなら普通に通行できるような場所だ。

ぼ……俺の対応も確かに不味かったろうけど、

あれがもし他の人の自転車やバイクだったなら、今頃どうなってたと思う?」


「うっ…………そ、それはっ……」


「体力をつける為にゆっくり少しずつ運動をしていくのなら、

もしかしたら身体にも良い方向に作用するのかもしれない。

でも、いきなりダブルスを組んでのハードな動きは駄目だよ。

きっと悪い方にしか行かない」


「きょ、今日はたまたま! いつもより調子悪かっただけですっ!

普段はこんなことないです! けっして、先輩の迷惑にはっ!」


「……そもそも、君は女子部で俺は男子部だ。

混合ミックスダブルスなんてのも確かにこの世の中に存在はするけども

中学の公式戦なんかではまず無いと言ってもいい」


あったらいいなあと思うことはあるけども。


「勿論、それはわかっています!

だからこれは、公式戦の話じゃありません!」


「えっ? じゃあ、それって……」


「真歩も……真歩もタカ先輩のようにっ! お姉ちゃん達に…………

先輩と……タカ先輩と! 一緒に挑みたいんですっ!」


「……!」


「真歩が、お姉ちゃん達に劣らない実力だと示すことができたら、

きっと顧問の先生も選手として真歩を使ってくれます!

真歩は…………真歩は、負けたくないんです!」


「…………それは、お姉さんに、という意味でかい?」


「…………そ、それはっ………………それも、あります……」


「言ってること、わかってるのか?

自分自身の姉を、敵に回すってことだぞ」


「わかってます! だけど、べつに命のやり取りをするわけじゃないです!」


「…………」


この子は


「でも、一番は、一番の理由は、自分自身に、勝ちたいん……です!」


こんなちっちゃい身体で


ひいらぎ先輩には、私の方から説明します!」


今さっきも倒れていたというのに……


「だから! お願いします! タカ先輩!」


まだ生気の無い青い顔をしながら


「…………ダメ……です……か?」


それでも、精一杯生きようとしている。


俺は、どうなんだろう?

本当にここまで真剣にやれてるんだろうか?


「…………」

「…………」


もしかしたら、見習わなければならないのは、俺の方なのかもしれない、な……


「…………わかったよ」


「……!」


「もともと、これはぼ……俺だけの挑戦だったからな。

飛鳥あすかには俺の我侭に無理言って付き合ってもらってただけだから、

そっちの方は特に問題はないだろう」


「そ、それじゃあ……センパイ!」


「それよりも、問題は……顧問の先生から練習試合の許可を取り付けること、

だな。その為にはまず、まぽりんのかかりつけの医者に診断書をもらうなりしないと……」


「それは! お医者さまには短時間の軽い運動ということで

許可をもらえるように、どうにか頼んでみます!」


「だったら、俺も顧問の先生の説得には付き合ってやるよ」


「ほ、ほんとにっ!?」


「ああ、でも医者の承諾をもらえたらだぞ?」


「はい! や、やったー! 約束ですよ? タカ先輩、好きっ! 愛してますー!」


そう言ってこちらに両手を広げて猪のように突っ込んでくるまぽりんを、

俺は華麗に躱す。


すかっ


「…………」


「…………」


べつに嫌とかじゃないんだけど、なんか反射的に避けてしまった。


通り過ぎ、そのまま固まっていた彼女がゆっくりとこちらに振り返る。 

ジト目だった。


「……酷いです。 タカ先輩。 傷つきました。 真歩はキズモノにされました」


「ばっ! キズモノって、誤解を招くような発言はやめて!

……い、いやそのっ! そ、そういうのってなんか恥ずかしいじゃん!

一応俺ら異性同士だし、やっぱ節度って大事だと思うよ! うん!」


まあ実際は単に俺がヘタレただけなんだけれども。


「今のは異性でも同性でもオーケーな流れだったです! ひどいです!」


ぷんぷんと唇を尖らせ、彼女は猛烈に不満をあらわにした。


「ま、まあ……じゃあ、代わりと言ってはなんだけど……」


そう言って、俺は右手を彼女の前に差し出した。


「…………」


「これから、よろしく頼むよ、相棒」


「…………ちぇ……

今の先輩ならここらが限界かな?(ぼそっ)」


「えっ?」


「なんでもないです! いいでしょう! 今回は握手で妥協します。 えいっ!」


「……あっ!?」


虚をつかれた。 彼女が握り返してきたその手は、左手だったからだ。

常識的に考えるなら、左手での握手は相手に失礼に当たる、のだが


「へへー、これからよろしくお願いします! 先輩!」


彼女のそれは違った。

満面の笑みで握り返してきたその左手は俺の右手を絡め取る。 


そう、これは、所謂いわゆる恋人繋ぎというものであった。


「……っ!! あ、ああ! よ、よろしく……な」


「はいっ!」


ぱああっと笑顔になった。

なんかさっきまでは黒いオーラを纏っていた黒まぽりんだったが

どうやら白まぽりんに戻ったようだ。

いやあ良かった良かった。


「…………もう離しても、いい?」


「まだだめー!」


ちっちゃくて、白くて柔らかくて瑞々しくて……

正直ドキドキが止まらないのでそれを感づかれる前に離脱したかった。

下衆な話、この手でお風呂とかで

彼女は自身の身体を直接洗ってたりしてるのかなーとか想像すると

ちょっとやばい! 俺の思考もやばいけど、

事実ではあるだろうからどうしても妄想が止まらない!

彼女に失望されたくないから早々に離して欲しかった。


「先輩の手、大っきくて……

ちょっと練習でできたお豆さんがゴツゴツとあったりして、男らしくて素敵です」


いや、君の方こそ素敵だと思うよ。 もちろん言わないけれど。


「…………は、はい! もうしゅうりょー!」


遂に耐え切れなくなって俺は自ら手を振り払った。


「あっ! もうー! 照れ屋さんなんですから先輩は……かわいい」


「か、かわいい言うな」


「にへへへっ」


彼女ははにかみながらも上目遣いで笑顔を向けてくる。

よほどテニスができることが嬉しいのだろう。

そんな彼女に俺も、やれるだけの応援はしてあげたいなと思った。


「だけど、普段の部活での練習時間には流石に付き合えないぞ。

俺だって男子部の副部長としての責務もある。

女子部の、しかもマネージャーと練習をしてるわけにはいかないからな」


「そ、それは、確かに、そう……ですね…………」


とたん、しゅんと折角の笑顔が曇りそうになった。


「……時間外で、いいか?」


「えっ?」


「朝練の前、他の部員が来ない内なら半時間くらいでもいいなら付き合ってやる。

それで身体が問題なさそうなら一時間くらいに増やしてもいい。

あとは、そうだな……日曜なら、少しは時間が取れるかもな」


「…………いいん、ですか?」


「どうせやるからには、勝つ気でいかなきゃ駄目だろ?

俺だって練習量増やさないとって思ってたところだからな」


「先輩……」


「ペアを組むなら、パートナーの戦力アップも考えるのは当然だろ?

俺達はペアなんだからな」


「はい……はいっ!」


「じゃあ、行くか」


「はいっ! 地獄の果てまでもついて行きますっ!」


「……いや、行かないから、地獄」



これから行くのはもちろん大判焼き屋である。 

読者諸君、一応聞くけど、忘れてないよね?




あとがき


そういえば。

今更なんですが、色々と話題の?

ソフトテニスアニメ「星合の空」観ました。


いやあ、油断しておりました。


普通の和気藹々としたソフトテニス青春物なんかなー?

とおもいきや、いざ蓋を開けてみたら……


なかなかどうして捻くれておりましたわ!

いいですね! この鬱っぷりが本当に素晴らしい!(褒め言葉)


なんか登場キャラ全員が闇を抱え込んでおります。

それでいてちゃんとソフトテニスしていますし

恋愛要素なんかは薄いですが

この年代特有の青春の甘酸っぱさみたいなものはしっかりと描かれております。


トランスジェンダーなんかのお話も出てきたりしてなんか少し親近感。


世間では、かなり賛否の分かれる問題作となってるみたいですが

僕はこういうの大好き! なので高く評価します。


とりあえず、2期希望ということで。


流石にあのラストで終りはあんまりです。w


CMで「買えよ」と新城柊真に言われたので

とりあえずエイトビットショップで「設定資料集とお疲れ様本セット」を

買って支援しておきますね。


BDはまた軍資金があればってことで。

コロナショック、仕方ないですけど

僕の所も仕事激減で結構懐事情が……やばいですね!(^^;



皆さんも感染予防等、くれぐれもお気をつけて。


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