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Ⅱ お隣さんへ、お邪魔しまーす!

最初、鈴木君だったんだけど、名前が鈴音とかぶるので佐藤君になりました。



「ラフ&スムース 第三章」







「ほっ……ほらよ山桃、これが欲しいんだろ?」


(うん……佐藤君の……黒くて太いのが欲しいの)


やべ! ……思わずそう言いそうになった!


孝志OSの弊害が出てるナ~

あいつ若い頃エロゲーしまくってたからなあ……

佐藤がそんなテンプレ的な言葉使うからつい反応しそうになる。


「うん、たぶんこれ……さんきゅ!」


よし、無難な回答だ。

たまたま近くにいた同じクラスの同級生であろう男子部員(たしか佐藤って名前だったと思う)

に声をかけて探してもらったんだが

意外とあっさり見つかったようだ。

なんかあわてて探してくれてたみたいだけど。


「…………ところでさ、山桃」


佐藤がなんか話しかけてきた。

今まで鈴音とこいつがまともに話した記憶は、確かなかった気がするんだけど?

というか、鈴音はクラスメイトとほとんど喋らないけどな!


「うん? なに?」


「……おまえさ、なんかここ数日、先輩たちと揉めたりしてなかったか?」


……う! 男子ソフトテニス部の方にもそんな噂が流れて行ってたのか? 

まあお隣の部だからなあ~、何でもすぐ伝わっちゃうんかなあ?


「え、え~? ……そうだったかな~? 

そういやちょこっとあったような、なかったような、感じ?」


どこまで聞いてるのか知らんが、とりあえずすっとぼけて言葉を濁しておこう


「部活も休んでたし、ちょっと気になってな……

まあ、学校は来てたの知ってるからそこまで心配してたわけじゃないけど……」


「あ、ああ~いやあ……はは……べつにもう、なんともないよ~」


「……そっか、大丈夫なら、それでいいんだけど……

あ! そういやその前に、お前一日だけ休んでたよな?」


「あ! ああ、そうね……それが、なにか?」


何でそんなことまで覚えてるんだよおまえ……

最近はちょっとさぼり気味だったが

僕はこれでも今までできるだけ隅っこで目立たないように生きてきたってのに!


「い、いや、べつになんとも無いんなら、それでいいんだが……」


ちょっとしどろもどろしてきた佐藤。

……いったいどんな噂が流れてたんだろうか? 少し気になってきたな 


「……その感じだと、なんか聞いてんの?」


今がもし鈴音OSだったらたぶんそのまま愛想笑いだけしてフェードアウトしてただろうが

今は僕(孝志OS)だからな、これくらいなら踏み込んでも、まあいいだろ


……あ、そもそも鈴音OSならここ(男子部室)までたどり着けたかどうかもちょっと怪しいですね。


「……ま、まあちょっとだけ、な……羽曳野先輩って綺麗というか、

すげーかわいい顔してる割には性格きついだろ?」


ああこいつ、羽曳野先輩気にしてんのか

確かに黙ってたら超かわいいからなあ、あの先輩。


特に女子ソフトテニス部はそっち方面でも校内でかなりレベルが高いらしいからね

その中でもあの先輩は相当上位にランクしてるんじゃないかな?

実力では四天王最弱かもしれんが、容姿じゃもっと上の方だよな


その恩恵にあずかってかどうかは知らないけれど

男子ソフトテニス部って部員数はかなり多いみたい。

お隣のコートで練習風景が常時見られるってのは、この上ないメリットだからね。


そんでもこいつあれだな、羽曳野先輩のきつい性格も十分わかってるみたいだし、

……もしかして……それがいいのか? 

こいつ、佐藤だからSかと思ったら(偏見)まさかのMだったか!


「それで、山桃みたいなおとなしいやつが絡まれて、無事でいられるのかな? 

って思って、他の一年にな、ちょっと聞いてみたんだわ」


げ! 余計なことを! 

そういうところから噂ってのは尾ひれがついて拡散していくんだよ!

本人は心配して聞いてくれてんのかもしれんけど


「いったい、誰から聞いたの?」


情報源を知っておく必要もあるな

人によったら曲解して、ただただ面白おかしく馬鹿にして言うだけの屑人間もいるしな


なんとなく女子ソフトテニス部一年生全員の顔を順に思い浮かべてみた。

学校規模で言えば我が部は人数少ない方ではあるんだけど

それでもなんだかんだで二桁はいるしな……

その中でも、クラスメイトは確か……3人か、春菜はクラスメイトじゃないし

陰険そうなやつっていたかなあ?


「あ、ああ……それは……その……な」


それは?


……ゴクリ


「……なんか、一人にこっそり聞いたつもりだったんだが、

ほぼ一年生全員が来て話してくれたんだよ」


「……え?」


「すまん! 山桃! 

ちゃんと全員に噂は広めないように口止めはしといたからっ! 許してくれ!」


「ええ~っ?」


な・ん・じゃ・そりゃ~!?


なんで一年生全員がこいつのとこ来て僕のことべらべらべらべら喋ってんの?

しかもそれだと元々あんまり知らなかった子も

潤沢な情報を得て拡散波動砲発射体勢が完全準備完了してんじゃねえか!?


良いように言ってくれてんのならまだいいが、

どう考えても悪い方にしか考えがいかねえよ~っ!!


「い、……いったいどんな話だったのか、ちょ~っとだけ興味あるけど~? 

ちゃんと聞いたらめっちゃ時間かかりそうだよね~」


僕は眉をひくひくさせながら、辛うじて笑顔でそう言った。


「い、いやっ! みんな心配してただけだって! 日向部長のペアなんていう重責を任されて、

そのうえ羽曳野先輩怒らせたりして潰れなきゃいいよね~(はあと)とか言ってただけだからっ!」


……なんだその(はあと)は? いったいそこにはどういう意図が組み込まれてんの?


「……ふ~ん、そう……」


「ごめんな、こんな大ごとにするつもりなんか、

まったく無かったんだ……ただ、おまえのこと心配して」


「わかった!」


こいつの本当の意図はどうであれ

もう起こってしまったものはしようがない


これからは本件を踏まえて、そのように対応・行動していくしかないということだ。

でも、一年生全員にか……


「心配かけてごめんね? でも、もう平気だから、ありがと!」


ま、この辺で引いておこう


「お、おう! またなんか困ったことがあったらいつでも言ってくれ! 

相談くらいならいくらでも乗るから!」


「うん!」


するかよ! とは言えず

とりあえず、僕はにっこりと微笑んだ。


しかしこの女性の集団行動の心理っていまいちよくわかんないな

鈴音もほぼぼっちに近いから、たぶん鈴音OSになったとしても同様によくわからんだろうし……


……まあいい、目的は果たしたし、そろそろ撤収を……


「それじゃ……」


と言いかけながら、何気に佐藤の手の中にある目的のブツに手を伸ばしながら、

それをしげしげと眺めてみた。



「……って、太っ! 本当に太くて硬くて黒いよ! 

佐藤君っ! こんなの、僕(の手)に収まりきらないっ!」


……あ! しまった! つい……


鈴音の女の子声がエロゲやってる頃のヒロインを彷彿とさせたもんだから

口がぺらぺらと動いてしまった。


なんかちょっと、カ・イ・カ・ン! 

……などと思ってる場合じゃねーーーっっ!!


「えっ?」


ちょっとびっくりしたような顔で佐藤はこちらを見ていた。


とたんに彼は今の会話内容を頭の中で反芻したのか、みるみる顔が赤くなり

同時にゴクリと、佐藤の喉元が鳴るのがこっちに聞こえてきてしまった。


「……あっ! いや! いやいや! グリップね、グリップ!

これ、男子用でしかも昔のものだから、やたらと太いなあ……と思って、あははは~」


「あ……ああ! グリップ、グリップね! ……なんだ、びっくりした……

(そりゃそうか、山桃がそんなこと言う訳無いだろうし……)」


「え? 最後の方、小声でよく聞こえなかったんだけど?」


「あっいや! 確かに、これは俺でも少し太いなと思ったけど……

あいにくこれしか部室に残ってないしな……」


「そっか、なら仕方ないよね……うん、これでいいから、借りるね」


そう言いながら僕はラケットのグリップに手を伸ばして受け取った。

その時、佐藤の手を上からかぶせてちょっと握ってしまう格好になってしまった。


「う、うわっ!」


あわてて彼はラケットから手を離す。


「「あっ!」」


カラーン!


まだグリップをしっかり握っていなかったため、そのまま地面に落下してしまった。


「ご、ごめっ!」

「いや、べつにいいよ」


二人同時にラケットを拾おうとして、またしてもお互いが手を握ってしまった。


「~~~~っ」


彼は顔を真っ赤にしてこっちを凝視していた。


「……手、離してくれて、いいよ?」


僕は彼を覗き込みながら、そう言った。


「……あっ! う、うん……ごめん!」


後ろにいた他の男子部員たちが、こっちを見てニヤニヤとしている。

まあ、気持ちはわからなくもないが……なんだかなあ……

なるほど、”こっち側”から見たら、こんな感覚なんだなあ


まあ、初々しくてかわいく見えないこともない…………のか?

孝志だった頃は男子は絶滅しても構わないと思ってたが

まあ、だからといって今も興味は無いけれどもね……少なくとも、僕は。


「ありがと、じゃあ借りてくね、たぶん数日したら返すから」


「あ、ああ……また返す時は声かけてくれ」


「お~い、山桃~ラケットのレンタル料はお前の下着でいいぞ~、上下セットでな~」


後ろで僕らのやりとりを見ていた先輩らしき人がなんか言っている。

はあ……まったく、どこの世界にもちょっと自分の方が立場が上だと思ったら

すぐにつけ上がる奴って出てくるもんだよなあ……

めんどくさいが、一応応対はしといてやるか、なんせこっちは借りる側だ。


ニコリと笑って返事を返す。


「いいですよ~お金さえ払ってくれたら、ちゃんと新品なら買ってきてあげますから~

タオル代わりに使用して汗くらいなら付けときますんで、

それで使っちゃったらどうですか~? セ・ン・パ・イ」


「うっ!」


先輩方も顔を赤らめて、固まってしまったようだ。 若いのう……


「……冗談ですよ。 まあどうしてもと言うなら普通に新品なら買ってきてあげますけど?」


「じょじょ、冗談に決まってるだろう、こっちだって!」


そう言いながらも目が泳いでいた。

他の男子部員も、なんだかごにょごにょと妄想しているようだった。


うーん、流石にちょっとまずかったか……

まあもし本気で頼んで来られてもそれくらいならべつに構わないんだけれど、尼でポチるだけだし


「そうですか、それじゃあこれ、お借りしまーす!」


そういい残して

てててっと自分の陣地(女子ソフトテニス部のコート周辺)に戻ってきた。


「お、おい……あの一年って、あんなキャラだったか?」


「い、いや……俺に言われても……知らないっすよ! 俺の知ってる山桃とは……」


「これは……設定変更を要するな……」(ぼそっ)


「な、なんの設定っすか? 先輩! ま、まさかっ!?」


「皆まで言わすな! おまえも今夜、バージョンアップ、するんだろう?」(ぼそぼそっ)


「す、するわけないでしょっ!」


……なんか、後ろで男子達がぼそぼそ言ってるような気がするな

楽しそうでいいナ~……僕も昔はあんな中に入って…………

どんな話とか、してたっkeかな~?(白目)


春菜と、羽曳野先輩がこっちを見ていた。


「……魔性の女だ」


ぼそっと先輩が口を開いた。


「ふえ?」


「ちょ、ちょっと鈴音え! なに男子部員に色目使ってるのよう!」


「い、いやちょっと待て! 今の会話でなんで僕が色目使ってることになるんだよ?

そもそも向こうがセクハラ発言してきたんだぞ?」


「そのいなし方が鮮やかすぎんだよ、お前はプロか!」


何のプロだよ羽曳野先輩。


「なんでそんなに男慣れしてんの鈴音……

もしかして、もう……経験済みだったり……

あ、アナ開いちゃってるの~っ!?」


「アナ言うな! 開いてねえよっ! 

……い、いやいや! なに言ってんだ春菜! 

馬鹿も休み休み言えってんだ! って…………ハッ!?」


「…………」


い、今の台詞、まさか男連中に聞かれてはいない、よな?


「見てみなさいよう、よりにもよって……学年でも1・2位を争うイケメン男子が

骨抜きになっちゃってるじゃない!」


「……え?」


そんなにあいつ、人気あったんだ?

先ほどの台詞も気になって、おそるおそる後ろをそっと振り向いた。


鼻の下が伸びた男子部員が、まだこっちを見ていた。

目が合ってしまったので、とりあえず営業スマイルをして手を振ってみた。

向こうも手をぶんぶん振ってきた。


どうやら聞かれてはいないっぽいようだ……ほっ、良かった。


「だ・か・らっ! 手玉に取りすぎだってばさっ!」


「う~ん……そう?」


おかしいな、普通に対応してるだけなんだけどなあ……

そもそも僕、男子に興味無いし

……いや、だからって百合じゃないぞ僕は! ……たぶん、だけど


……なんとなく、もう一度振り向いてみた。


「……おい、聞いたか? 山桃は処女確定らしいぞっ!」(ぼそぼそ)

「そ、そうか、よしっ!」(ガッツポーズ)

「何がよしっスカ先輩! そんなの当たり前じゃないですかっ! 

っていうか、なに狙ってるんですか? 絶対あげませんよ!」(ぼそぼそ!)

「なに貴様あ! たかがクラスが一緒だからってだけで

図に乗ってるんじゃないぞコラ!」(ぼそぼそぼそ!)

「まあまてまて! これはおまえら2人だけの問題ではないぞ、

ここはキャプテンである俺が部の代表としてまずだな」


「「「お飾りキャプテンは引っ込んでろ!」」」


「なんだどごらあーーーっっ!!」



……な、なんだかさっきのポワポワした感じとは打って変わって

どんどん険悪な雰囲気になってきてる、ような……

遠目なんで会話はいまいちよく聞こえないけど、これって大丈夫なんだろうか……ねぇ?




余談だが、後で鈴音OSにチェンジした時

僕は沸騰するほど顔を真っ赤にした涙目の鈴音さんに

何故か鏡に向かってプンプン怒られまくられたのであった。


……なんでなん?












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