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ラフ&スムース  作者: 新田 やすのり
ZERO(第零章)
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ラフ&スムース ZERO  ―深山三姉妹編― 零話

お久しぶりです。 新田です。

なんやかやで遅くなって誠に申し訳ありません。


予告通り、今回は前日譚となってはおりますが

鈴音さんも前半ちょこっとだけ出ていたりします。





「ラフ&スムース」





「…………」



……やばいっす!


いや、モチロン! 鈴音だってちゃんと抵抗はしたんだよ?


なのに、みゆきちゃんったら強引に入ってくるんだもん!

な~にが「先お風呂頂いたから、次、鈴音入ってね~」だ。


カラスの行水で出てきてやがっただけじゃん!


くそ! 完全にカモフラージュだったのか! してやられたわ!


「こうでもしないと、鈴音一緒に入らせてくれないもんね~♪」


だとさ。

よくわかってんじゃん!

流石のマブダチですわ


まあ、鈴音OSだったなら、それでも辛うじてセーフですよ。


でもここで変わりますかね!?

お互いが一緒にざぶんと湯船に浸かって10数秒。


そんな時に孝志OSに切り替わってしまいましたわ!


「…………」

「…………」


「鈴音……どーして壁の方に向きっぱなしなの? ねえねえ!」


「い、いや! ちょっとこの辺の壁のシミ汚れが気になっちゃって!

後でお掃除しないとね! あはははは!」


「どれどれ~? あ、本当だー」


ぴと!


「!!」


あんまり見ないように、見えないように向こう向いて入ってたのに

そしたら、みゆきちゃんが背後からぴったりとひっついて来た。


そして更に僕に手を回して抱きついて吐息を吹きかけながら

こんなことを言うんですよ!


「鈴音自身はシミ一つない、白くて艶々の珠のような綺麗なお肌なのに……ねえ?

ねえ、鈴音……一緒に背中、洗いっこ、しよっか?」


なーんて、ぷにっと何かがモロに生で当たってるんですけど!


「あわわわわっ!」


生中一丁! いや、二丁!?

だめだー! 尊すぎるんですけどっ!


振りほどこうにも

みゆきちゃんの身体を触らなきゃいけないし

もがけばもがくほどプニプニと何かが当たってくるしで

どうすればいいのかわからないっ



そうだ!

前後左右が駄目なら、下があるじゃないか!


ざぶん!


「きゃっ?」


ごぼごぼごばごぼ……


僕はみゆきちゃんの腕をすり抜け潜水モードに移行し

みゆきちゃんの背後から脱出しようと試みた。

が……


どんっ! むにゅん!


「あんっ! 鈴音、そんな変なところ触っちゃ、だめっ!」


「ごばはっ!?」


変なところって、いったいどんなところー!?


ウチの風呂は一般家庭の浴槽よりは若干大きいとはいえ

流石に人間が対向できるほどの幅は無かったようだ。

みゆきちゃんの横をすり抜けようとしたが失敗に終わり

即座に水面に顔を出す。


「ぷはあっ!」


ほぼゼロ距離で真ん前にみゆきちゃんの顔があった。


「「……っ!!」」


お互いの顔が真っ赤になった。


じっとみゆきちゃんの顔を見つめる。


ていうか、顔以外を見ると色々とやばいから顔しか見れないんだけど!

しかも距離を取ることもできない。 見えちゃうから。 つまり、離れられない。


じいいいいいいいい


睨めっこの状態が続くよどこまでも


じいいいいいいいい


「な、なによ、鈴音……そんな改まって見つめられると、

流石にちょ、ちょっと恥ずかしいんだけど……」


さて困った。 どうしよう?


目の前にはお湯も滴るいい女の子が頬を染め

はにかみながらも僕をずっと見つめている。


改めて見るまでもなくなんだけど、やっぱ凄く可愛いよなあ……

なんでこんな可愛い娘が僕と一緒にお風呂に入ってるんだろうか? 謎だ……


「…………あ!」


……そっか、夕方の会話の内容を思い出したけど

よく考えたらみゆきちゃんって、あの剣道場の関係者だったんだよな。


だとすると、みゆきちゃんは僕、

すなわち孝志の記憶の中の人の誰かの子供ってことになっちゃうわけだが……



みゆきちゃんや睦月さんが両親のどっちに似てるのかはわからないけれど

僕は初めて睦月さんを見たときに、既視感を覚えた割に

すぐにみゆきちゃんが出てこなかったのは

たぶん、他にも選択肢が、心当たりがあったということなのだろう


赤石中学の制服を着た彼女、睦月さんは

僕の過去の記憶のイメージと重なっていた。


目の前の、みゆきちゃんに赤石中学の制服を着せるイメージで

もう一度よく考えて一人一人照合してみる。


……って、えらい肌色の多い制服だなっ!


一緒に湯船に浸かっているのだ。

そんな簡単に肌色が制服に脳内変換できるわけもなかった。


うう、顔をあまり下に向けられないし、困ったなあ……


……!


「…………あっ! でも、わかったかも!?」


「へ? なにが?」


検索範囲を一気に数人に絞ったおかげで答えが見えてきた。

そもそも”あいつ”は既に違うとわかっているし

となるとあと二人に絞られるわけだが、

どちらに似ているかとなると……


なるほど! 確かによく見ると目元とかそっくりだ。


「ああなるほど、そっかあ、まぽりんかー! ……って、あわわ!」


口が滑ってしまいそうだった。

ていうか、ほぼ滑っていた。


「…………まぽりん?」


「あわわ! い、いやなんでもない!」


「……?」


……ホッ

良かった。 どうやらみゆきちゃんは気がついてないみたいだ。

まあそりゃそうか

鈴音が会ったこともない筈のみゆきちゃんの親を、

ましてやそんな愛称で呼ぶなんて普通ありえないしな。


元気にしてんのかなあ?

久しぶりに、会ってみたいような気もするけど

よく考えたらそれは僕の役目じゃないしなあ……


まあ、みゆきちゃんと一緒にいればいずれは偶然会うこともあるかもしれないし

今後のめぐり合わせに期待しておくかあ……


そっか、まぽりんか……うわー、懐かしいなあ……






◇◆◇◆







「先輩っ!」


「おっ? いつも元気そうでなによりだな。

今日もよろしく頼むな」


「はいっ! …………それで、ですね……わたし、先輩に打ち明けることが、あるんです」


「……? なに?」


「今まで秘密の内緒だったんですけど、実はわたし…………まほー少女、なんですよ!」


唐突に、目の前にいるおよそ体型に似つかわしくない

ダボついたセーラー服を着込んだ

ちびっこ少女はそう言い放った。


でも、俺は特に驚きもせずにこう返す。


「いや、知ってるし」


しかし、少女はその答えを、さも不服そうに顔を歪めた。


「えー? うそです! だってわたしのこと、いつも、”妹”って……」


「…………ぅ……」


いや、言い訳をするわけじゃないが

実際に妹なんだから妹でいいじゃないか!

それでちゃんと通じるだろ?


第一、恥ずかしい!


「先輩が上のお姉ちゃんだけ名前で呼んでるの、わたし知ってるんですよ!」


びくりと、一瞬身体が強ばった。


「あ、あれはだな! 前衛の方と区別するために仕方なく……

そ、それにあいつがそう呼べって言い張るもんだから……」


「ふーん……」


なんかジト目で見られているが、べつに間違ったことは言っていない。


それに、なんかあいつだけはそう呼ぶ方がしっくり来た。

何故だか理由はわからないが


「じ、じゃあ、苗字の方で呼んで欲しいのか?」


「…………わたし、自分のこの苗字、嫌い……です」


「そ、そうか? べつに変な名前じゃないだろ?」


「…………」


そう、この街ではごくありふれた苗字。

だから、俺も含めてそんなに気にする人はいないと思っていた。


しかし、この娘はなんか心底嫌っているように見える。


「ま、まー、あれだ! だったらさっさとお嫁にでも行っちゃえばいいんだよ。

そしたら誰も”妹”なんて区別なんかせずに呼んでもらえるようになる」


「うー…………あ! じゃあ! 先輩、貰ってくれますか?」


「ぶっ!?」


阿部真歩あべまほ……うん、いい感じです! うんうん! 

イニシャルがモ○ルアーマーみたいでなんか超カッコイイです!」


「マテ! …………わかった! 名前の方で呼べばいいんだな?」


「はい!」


にっこりと、屈託のない笑顔で彼女はそう返事をする。


「では今から、わたしのことは”まぽりん”でお願いします」


いきなりハードルが上がった! だいたい50センチくらい。


「お願いします。 まぽりんは恥ずいので普通に真歩で、どうかよろしくお願いします!」


俺は土下座する勢いで懇願した。(実際はしていないが)


「では阿部真歩あべまほで」


「…………」


「……仕方ないですね。 では、もしくは

”マックス・マジェスティック・マジック・マスター・マホ・マギカ”と!」


「…………え、なんて?」


「もう! もう一度言います。 ちゃんと覚えてくださいね!

マックス・マジェスティック・マジック・マスター・マホ・マギカ!

……ええと、シングル……ダブル、トリプル、クアドラぷる……くいん、たぶる?」


なんか、小首をかしげ指折り数えながらぶつぶつ言ってる……


「そして! マックス・マジェスティック・マジック・マスター・マホ・マギカ! とは!

つまり! セクスタブルM! 六つのM! 最強の称号です! どうです? カッコイイでしょう?」


「…………」


なんか変なポーズを取ってるし。

痛い子だ! 痛い子がここにいる!


「よし、じゃあ最後に”マイルド”を付けてセプタプルMにしよう!

七つのMでもっと強くなるぞ」


「やですー! 一気に弱くなっちゃいます! 台無しですっ!」


「ち、よく気がついたな!」


どうやら二択のようだ。

もちろん最後のは即却下で。

ていうか、実はこれ選択肢無いじゃんか!


「じゃあ……ま、まぽ……りん? ……で……いいか?」


ぱああっと、まるでヒマワリがそこかしこに咲き誇ったかのように明るい笑顔になった。 

うわ眩しい!


「はいっ! まぽりんですっ!」







『ラフ&スムース ZERO』 ―深山三姉妹編―






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