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睦月と千里 4 ~決断~


「ラフ&スムース 第二章」





――――三日前。





「……突き止めた」


古い、シャッターが降りたままの店舗。

看板には「北山スポーツ」と書かれていた。


「……まったく、ヤミの奴め!

めんどくさいことしやがって……

しかし、これで人物は特定できたな。

おそらく、あいつが「そう」だ」


ならば、もうこんな探偵まがいのことはしなくてもいい

直接本人に会えば済むだけの話。

ただ残念なことに、今はこの場にはいない様だが……


「…………なに? 必要以上のことはするな、だって?

くくく……おまえに任せて、うまくやれるのか?

…………なら、お手並み拝見させてもらおうか、

駄目だった時は、ふふ……わかっているな?」



そう言い残し、彼女は闇夜に消えた。



「…………」


「…………貴女には、やらせない」


しかし、今はデータの回収の方が優先だ。

流石にいきなりWeb上に流出はさせないとは思うけど、

コピーされたり違うメディアや機器に移されると後々面倒だ。


「彼女への対処はその後……まずは、奪還する」


そう言ったかみたか、彼女――――深山睦月は軽々と塀を乗り越え、そこを足場に

旧北山スポーツ店の2階居住部分のベランダに、ジャンプし飛び移った。


室内の様子を伺い、撮影で使ったであろうカメラの位置を確認。


あとは、一度家屋のブレーカーを落とし、現在の家主であるあいつが復旧に向かった際、

カメラのメモリを抜き取ればいいだけの話。


「……気づかれないようにしたいところだけど……おそらくデータは確認するだろうし

盗んだことはすぐに、バレそうね……」


なら、対応は早くしないといけない。

でないと、笹倉千里が少しでも抵抗する素振りを見せたなら

ゆすりネタを失った彼は

今度はどのような手段に出てくるか、わからないから


……そのためには……


「……できる、かな?」


睦月にとって、それは、

今、こうやって家屋に侵入し盗みを働くことよりも

遥かに難易度の高い仕事であった。


でも、やらなくちゃいけない。 これは私の責任だから……


……今は、データ回収の仕事に専念しよう






◆◇◆◇






――――雨が、降っていた。


もう三日、降り続いている。


今日も、その雨音だけを聞いている。


何も……考えられない。

ただ、あの時のことがずっと

ぐるぐる頭の中をまわっている。




◇◆




「へえ……なかなか可愛く撮れてんじゃん!」


「……! か、返して! 返して、ください!」


「ここまでやっておいて、今更返すわけねーだろ? 

ちょっと考えろよばーか!」


「…………い、今なら、何もしませんから……お願い!」


「はっ! ……して欲しいからやってるんだよ!」


「……!?」


「おまえ、部を退部しろ。 それが命令だ。

理由は適当に考えろ。 間違ってもこのことは誰にも言うなよ?

もし少しでも逆らったら、これをネット上に、晒す」


「!! ……そ、そんな…………なんで? ど、どうしてこんなことを?」


「あと、もう運動部には入るな! 入って良いのは文化部のみだ。 わかったな?」


「……い、嫌! 嫌です! お願い、返して! 今なら何も……不問にしますから!」


「…………おい! 舐めてんじゃねえぞ? もし言うこと聞かねえなら、次は……犯すからな!」


「ひうっ!?」




◆◇




「…………」


……どうして、こんなことに?


思い当たるのは、やはり……


でも、なんでここまで?


「……なんで、私こんな目にあってるのかなー?」


ただ、普通に部活がしたいだけ……なのに……


「……お祖母ちゃん……私、もう駄目……かも……」


「う……うう……うっ……」


どうしたらいいのか、答えは見つからず

ただ泣くだけの毎日だった。




カツンッ!




「…………」



カツンッ!


「…………」


カツンッ!


「…………?」


布団に潜り込み、泣き腫らしてはいたのだが

窓ガラスに、何か小石のようなものが当たっている気がするのは、看過できなかった。


「……ぐすっ! な、なによ? もうーっ!」


そう言いながらベッドから這い出てカーテンを僅かに開ける。


すると……


「……!」


門扉から、私を見つめていたのは、店で出会った女の子だった。


「……な、なんで……私の家に……彼女が!?」


だだだっ


慌てて二階の自室から階段を降りる。


「……あっ!」


そうだ! このまま出るわけにはいかない。


「……やだもうー、ボロボロだようー」


洗面所で涙でぐちゃぐちゃになった顔の汚れをタオルを濡らし速攻で拭き取り

ちょっとだけ手櫛で髪型を整える。


ガチャッ


そして、玄関を開けた。


「…………え」


……もう、そこに彼女はいなかった。


「…………この雨の中、傘も差さずに……いったい……何しに……あ!」


ポストに、一通の手紙。


中には、メモリーカードと


『データは取り戻したから。 貴女は何も心配しないで。 どうか明日は、学校に来てください』


と簡潔に用件だけ書かれたメモ書きが入っていた。


「……なん……で……彼女が?」


どうして、この件のことを知っているのか疑問には思ったが……


ぎゅ!


「…………ぐすっ! …………なんか、いい、匂いがする……」


まだ、ほのかに温もりが感じられるその手紙を胸に当て

私は彼女を信じてみる気になっていた。


……でも……


学校は、ともかく……部活は……


「……どう、しよう?」


もう、あんな怖い思いはしたくない。 二度と。


諦めて、少なくとも現部長が卒業するまでは

言われた通り文化部に在籍した方がいいのかもしれない。


「……っ」


ふと、さっきの彼女の顔が思い浮かんだ。


「…………折角……友達に、なれそうなのに…………」


おそらく、今私が退部したら彼女は当初の目的通り剣道部に入部するのだろう

もし二年生になってソフトテニス部に戻れたとしても

その時もう、彼女は…………


そう思うと、また泣けてきた。


「……やっぱ、やだよう~うう……」




◇◆




翌日の放課後。

今日の天気は久々に晴。


私は、ソフトテニス部部室前に来ていた。


おそらくいつもどおりなら主要メンバーはHR後、天候に関係なく

まずは一旦部室に集まっている筈だ。


グラウンドには荒れたコートをせっせと整備している新入生達以外には

まだ部長らの姿は見当たらなかった。


「…………」


ただ……本当はここに来る前に、

メモリを取り返してくれた彼女に一言、お礼を言っておきたかったんだけど……


昼休みに他のクラスをあちこち探し回ってはみたのだけど、

結局、残念なことに、どこにも姿を見つけることができなかったのだ。


誰かに聞こうにも、そもそも私は彼女の名前を知らなかった。

たぶん、お店で調べたら注文履歴でわかるんだろうけど……


「お爺ちゃんに聞いといたら良かったナー……」


お礼と、謝罪。


一晩悩み抜いた結論。


やはり、彼女を巻き込むわけにはいかない。


きっと、このまま私が部活を続ければ

私のみならず、彼女も被害に遭うかもしれない。

それだけは、許されない。


ならばもう答えは決まっている。


意を決して、部室のドアを開けた。


「……あら、マネージャーさん、久しぶりね」

「……あ! さ、笹倉ちゃん!」


そこには、部長とレギュラー陣、

それにあと数名の三年生部員がいた。


「す、すみませんー! ここ数日、体調を崩してしまって……学校を休んでましたー」


「……そう……それで? 今日からはまたいつも通り、できるの?」


そう言った部長の口端が少し釣り上がってるのがわかった。


「……!」


やはり、三日前の出来事。

彼女は何らかの関わりを、持っている。


……でも、それがわかったとしても、

今の私には、どうしようもない。 


だから。


「…………そ、その……」


「…………どうしたの? もじもじしちゃって」


「あ、あの……です……ね」


もう、決めたことだ。

悩んで悩んで決めたことだ。


それを今更、何を戸惑っている!?


「……や、やっぱり、私いー、この部活向いてない気がするんでー……

や……辞めたいと、思うんですが、か、構わないでしょうかー?」


い、言えた! 言っちゃった!


「!? さ、笹倉ちゃん!? いったい何を急にっ!」


二年生の先輩が、椅子から立ち上がり慌てている。

ゴメンナサイ! 先輩!


北山部長の顔が緩む。


「……ま、本人がそう言うんなら、仕方ないわねえ」


「部長!? か、彼女は必要な人材ですよ?

この部室がこんなに綺麗になったのもそうですし、

機材のメンテや、知識だって!」


「あはは、先輩、ありがとうございます!

でも私、本来は選手希望で入ったんですよねー。

でもパートナーも見つからないし、素振りばっかの毎日で

ちょっと流石に飽きてきたっていうかー……

…………そ、そんな感じなんでー……

……そ、そしたら、文化部で興味ある部を見つけちゃってー……」


「嘘! 嘘よ笹倉ちゃん! 私の目も見ないでそんな言葉並べたって、信じれるワケ……」


「!」


やめて! 先輩! それ以上引き止めようとしないで!

そんなこと言われると決心が緩んじゃうから


「もう言うな! 去る者は追わずだ! わかった。 それじゃあ」



「待ちなさい!」



「「「!!」」」



皆が一斉に私の背後に注目した。


「……どうしようか迷っていたけど、やはり入部することにしたわ」


「…………」


…………この、聞き覚えのある……よく通る綺麗な、声は……


「……っ!」


私は、思わず、泣きそうになった。






「はい、こんばんわ、新田です。

最近すっかり更新ペースが遅くなってスミマセン」


「しんぐるべーる、しんぐるべーる、鈴が鳴る~♪」


「……まだ居たんですか? 鈴音さん?」


「だって、暇なんだもん~」


「ええ、ええ、遅筆でスミマセンね!

ホントは今回だってクリスマスまでには投稿したかったんだけど

できなかったんですから!」


「シングルベルなのにねー?」


「やかましいわ!」


「出番マダー?」


「うう……早く出してあげたいんだけど、最近体力がめっきり落ちてきて……」


「仕事、頑張ってるもんねー?」


「そうなんだよ鈴音さん! 毎日限界近くまで働いて、

家に帰ると力尽きて倒れちゃう毎日!

世間一般では二連休だの三連休だの言ってても

こちとら交替勤務制のくせに完全週休一日制で、

しかも祝祭日もないと来たもんだ!

年間休日は52日プラス大型連休の時だけ連休があるのみで

たぶん70日も絶対無いぞ!

ヒステリー上司(男)にはパワハラされて精神ズタボロだし、

飯だってろくに食う暇がない! おしっこも我慢しながら仕事してるんだぜ! ううう……」


「……まるで、孝志の職場みたいだね」


「だって作者だもん! 多かれ少なかれある程度の実経験は入っているよ……

あーもういやじゃあー! このままじゃあ完結しないよー! どうにかしてくれー!」


「じゃあ、トラックに」


「それは勘弁してください!」


では次回、気長に待っててくださいねー

できたら年末年始の連休中に、なんとかしますからー

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