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第十一話  氷解after


「ラフ&スムース 第二章」



たぶん、答えはこうだ。

お互いがお互いを想うがこそのこの結末。

どちらも相手を気遣い、理解しようとしていた。

でも、みゆきちゃんはお姉ちゃんだ。 

睦月さんのことを当然のことだけど妹として見ていた。


だからこの差が出た。

姉は素直に妹の態度をそのままの姿で捉えていた。 

それで全てを理解し制御できると思っていた。

しかし妹である睦月さんは、姉であるみゆきちゃんを動かそうとするならば

最初から格上相手を想定した戦略を立てるしかなかった。

つまり、もとより気構えそのものが違っていたのだ。


どちらも互いに対等だと思っていれば、結果は違ったのかもしれない

想いの強さは同じであっても、これでは最初から勝敗はついていた。


だからといってみゆきちゃんを愚かとはけっして思わない。

これは、最後まで騙し通した睦月さんを褒めるべきなんだろうと思う







「……鈴音の匂い、いい匂いだね」


「やだ、まじまじ嗅がないでよ」


「ふふ……春菜が見たら嫉妬するかもね?」


「……やっぱ、みゆきちゃんにもそう見えちゃう? やばいなーそれ」


今なら「嫉妬」と言う言葉の意味もよくわかる。

初めて出会った時のこと、アレはそういうことだったのかな?

まさかそんな奇特な人が存在するとは思ってもみなかったから

今でも信じられないけどね。

それにそれは単にみゆきちゃんの思い違いなだけかもしれないし


「だって彼女、中等部入学直後にほぼ初対面で向こうから声かけてきたんでしょ?

特に鈴音に関して言えば、言っちゃ悪いけど、それは相当な入れ込みよう、と言わざるを得ないよ?」


……どういう意味?


「……? ……!?」


「ふふ、やっぱ無意識かあ…………うん、でも鈴音はそれでいいよ。

ちゃんと理解わかる人には理解わかってもらえてるんだし、

下手にノーガードだと本当に危険かもしれないしね」


「え? ……??」


やっぱり意味がわからなかった。

私、なんか変な悪癖でも持ってるのかな?

でも、結果的にそれがプラスに働いてる?

……なら、いいのか……な? うーん……?


「ま、趣味嗜好はともかくとして、いい子じゃないの。 友人は数じゃないからね。

しばらくは離れ離れになってもらうけど

新人戦にはまた元のパートナーに戻してあげるから

それまでは我慢して頑張って」


「……うん、とりあえずは部長さんと一緒に次の試合出て、がんばらなくっちゃね!

そして……私は睦月さんに「勝つ」と宣言しちゃったから」


「……鈴音が? 勝利宣言なんて、すごいこと言ったのね」


「たはは、成り行き上仕方なくだけどね。

勝たなきゃいけない理由も、できちゃったし」


「睦月に勝つ……か

実際、彼女のソフトテニスの実力はまったくの未知数だけど

それでも確実に言えることがあるわ」


「うん、わかってる」


ただ歩いてるだけでもそれは感じ取れた。

それに、纏っているあのオーラ……

けっして彼女は口に出しては言わないだろうけど

でも、とても凄い自信に満ち溢れていた。



間違いない。 彼女は、強い!



「…………でも、勝つよ。

そしたら、みゆきちゃんにお話したいこと、あるんだ」


「鈴音それ、死亡フラグ」


「いや! そうじゃないよ? そんな話じゃないからね?」


「えー違うのー? 私ものすごく期待しちゃったのにー!」


彼女は半分冗談交じりにそう受け応えた。

つまり、半分は本気?


みゆきちゃん…………たぶん薄々はわかってるんだと思う、私の変化に。

でも、彼女は私から打ち明けるのをずっと待っててくれてるんだろう

今はまだ、言えないけれど

私にもわからないことだらけだから……

だから、それに応える日が、来ることを祈っていよう



「…………私も、ひとつ鈴音に告白……というか、報告」


「え? なに?」


「……今はまだ無理だけど、私また剣の道に戻ろうと思うの」


「……え? それっ……て……」


「足が治ってからの話だけどね

あ、もちろんソフトテニスは続けるよ?」


「……なんだ、びっくりしたー」


「折角の鈴音との貴重な時間を手放すわけにはいかないからねー」


「あはは……うん、ありがと」


「でも……剣の方も、もう一度、向き合ってみる。

そして、彼女、睦月とも……あらためて、ちゃんと、お話して……みるわ」


「うん、それがいいと思うよ」


「二足のわらじになっちゃうけど、それは睦月も同じみたいだし」


「お互いの、話題が増えたじゃん! きっと、喜んでくれるよ」


「……だと嬉しい。 でも、たとえツンケンされても今回はめげずに頑張ってみるから」


「大丈夫だよ。 私も仲良くなれるよう、応援してるから」


「……駄目だったら、また慰めてね? 鈴音」


……う! ま、まあ、抱擁くらいならべつに構わないけれども

でもここはあえて少し厳しく


「駄目! 甘えてちゃすぐ逃げちゃうよ?」


「あー! 鈴音がそれ言っちゃう? そんなこと言うと自分に帰ってくるんだゾー」


「あ、うそうそ! いつでも帰っておいで! 抱きしめてあげるから!」


「…………すぐ逃げてきそう……」


「おーい! 深雪さんー?」


「ふふ……」


「あはは! ……よし! じゃあ今日は前祝いも兼ねて、私の家でお泊まり会、決行だー!」


「マジで!? 鈴音がそんな積極的になる日が来るなんて!

お姉さん信じて待っててよかったようー! 今夜がた・の・し・み・だわー(はあと)」


いきなり貞操の危機を、感じた。


「……やっぱ無しで、いい?」


「ああっ! 冗談! 冗談だってば! 鈴音ー!」



いつの間にか太陽は見えなくなって、赤い夕焼けだけが名残惜しそうに残っていた。

入れ替わるように薄くて透明感のある月が、まん丸になって私たちを照らしてくれていた。


「月が綺麗ですねー」


「……鈴音、今わざと言ったでしょ?」


私はちょっとだけ舌を出して彼女に笑いかける


「でも、好きなのは本当だよ! ……大好きっ! みゆきちゃん!」


「……な! なにこいつー! 恥ずかしげも無く言うようになったわね? そんなの私だって言っちゃうぞー!」


「よしこい!」


「……つ、ちゅき……月がきれいですよ、ねー?」


「あー! 逃げた! 今モロに逃げやがりましたねー?」


「戦略的撤退です。 これは恥ではないのです!」


「駄目だよー! 私はちゃんと言ったのにー! これでも内心かなり恥ずかしかったんだからねー!」


そんな他愛もない話をしながら、私達は帰路についた。


あ! そういえばクーちゃんをお披露目するのは確か初めてだったよね

お互いが気に入ってくれたらいいんだけど、あの子も結構気難しいからなあ

……ま、なるようになるかー!




「…………でも、よかった……」


そして、私はぼそっと独り言のように呟いた。


「……ありがとうね、孝志……内側から、私を……私たちを、助けてくれて……」


(――――どういたしまして)


言葉としてではなく、感覚的にそう返されたような気がした。





こんばんは、新田です。


いつも愚痴とかばっかじゃ面白味もないので

今回はボツネタを披露します。


◇◆



「……それって、今まで高かった山がカルデラ噴火起こして低くなったってだけでしょ?」


「…………面白いこと言うね、みゆきちゃん

でも、最近の研究じゃ必ずしも高い成層火山が大噴火してカルデラになったって説は

否定されつつあるみたいだよ? 今では地下のマグマ溜りが

移動したために地下空洞ができ陥没してカルデラが形成されるというのが一般的らしいから」


「……鈴音、そんなに饒舌だった?」


「今、私は通常の鈴音じゃないみたいです」


「なにそれ?」


「……言うなれば、鈴音ハイパースレッディング……鈴音HTとでも申しましょうか?」


「…………え?」


「放課後ティータイムではないですよ、Tがひとつ足りません。

これは脳みそは一つなので、デュアルコアではないのです。 一つの脳で二つの思考を並行処理しています。

つまりはハイパースレッディング。 鈴音のニュースキルです」


あ、私おかしくなっちゃった?

もしかしてこれ、孝志が私の思考に干渉してる?

今、私は孝志が用意してくれている台本を読み上げている状態ってことなのかな?



◆◇



……もはやどの部分にはめ込もうとしてたのか、自分でもよくわからなくなりました(笑)

本当は従来の高い成層火山がカルデラ火山に変わるという説を例え話に持って行きたかったのですが

調べてみたら最近の学説が微妙に変わっておりまして……

それを反映して行ったらこのような意味不明の流れにw

あまりにもおふざけがすぎるのでソッコー没にしました。

まあ、今回の鈴音が饒舌だったのは、こういったカラクリがあったということですね~


あ、それと一部の人にはお伝えしていましたが

次回は舞台が変わります。

睦月と千里の側のお話となります。

ちょっとの間、鈴音たちとは離れちゃいますがすみません。

どうかよろしくお願いします。


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