表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/86

13話  しあい!(2)


『ラフ&スムース』





「はあ・・・はあっ・・・くっ」


・・・ワンゲーム、取られちまった・・・か


「す、鈴音っ! だ、大丈夫っ!?」


春菜が心配そうに駆け寄ってきた。


「ああ・・・うん、大丈夫! ちょっとヒリヒリするけど」


球は、脇腹に当たった。

渾身のスマッシュとはいえ

硬式のテニスボールと違い、軟式  (ソフトテニス)はただのゴムボールだ。

それでももちろん、当てられると、痛い。 だから、できれば顔には喰らいたくない

けれど、芯に来るようなダメージは無い。

その辺りは体に優しく、ソフトテニス万歳! なところである。


ふと見ると、女の子座りでへたり込んでいた自分に気がつく

ああそうか・・・女子は男子とは骨格が違うから、

自然とこのポーズになったりするんだな・・・とか余計な考えを巡らせていた。


「・・・チェンジコートだ、立てるか?」


声をかけてきたのは、羽曳野先輩だった。


今はべつにニヤケたりはしていない

普通に話しかけている・・・というか、これってもしかして気遣いしてくれてる?


「あ、はい、すぐ・・・行きます。」


すくっと立ち上がり、反対側のコートに移動した。


次は、こっちのレシーブだ。


後ろには日影がいた。


「・・・なんか、雨、降りそうになってきたね」


試合中に世間話的なお喋りかよっ!


「・・・ん?」


そういえば、空、曇ってたな・・・と上を見上げる


「・・・降ったら、これ、どうなるんすかね?」


疑問を日影にぶつけてみた。


「降りようにもよるけど、普通に降ってきたらそりゃ、中止ね」


「中止したら・・・ゲームは・・・」


「そりゃ・・・勝ってる方の勝ち・・・かな?」


「・・・・・・げっ!」


「なんか、賭けてんのこれ?」


「い、いや、その~・・・」


僕は巻き込まれただけなんだが・・・だからと言って内容をバラすのは、なんだかまずいような気がした。

次期部長と春菜か僕の試合出場がかかっています・・・って、言うとどうなるんだろうか?


「・・・始まるわよ」


・・・!


「ゲームカウント、ワンゼロ」


さて、今度は彼女のサーブだ・・・

果たして、どういうスタイルなのか・・・


「さっきと同じプレイができたら、いい勝負になるかもね」


・・・! 後ろから、日影が喋ってきた。

いや、ここは前に集中だ! 

ボールをよく見て、走って


一球目は、どうやらオーバーヘッドだ

確かに威力が一番出るから僕もファーストはこれだ。

しかし、入れるのが難しいのもこれだ。


「・・・はあっ!」


パコッ!


・・・来た!

・・・しかし、これは・・・絶好球!


「たりゃ!」


パコーン!


バッ!


向こうのコートで土煙を確認


「・・・イン! ゼロワン!」


・・・あっさりと、リターンが決まった。

さっき僕がやられたように、やり返せたな・・・


「・・・ね? 言った通りでしょ?」


また日影が後ろから喋りかける


「今、試合中ですから・・・」


「あら、これは失礼~!」


ふざけた感じの声がした。 まあ実際ふざけてるんだろう・・・見えてはいないけど


「・・・くっ!」


羽曳野先輩、悔しがっている・・・今の・・・もしかして全力のフラットサーブなんか?


「・・・べつに遅くはないわよ、公式県大会に出てる女子としてはごく一般的・・・ま、普通ね

あんたにしてみれば、信じられないみたいだけど?」


だから試合中だってば!

・・・しかし、確かにこれだと・・・僕がさっきやってたサービスゲームと

そう、大差ないんじゃないか?

サーブが脅威じゃないのなら、さっきのゲームの後半のように持ち込めば・・・

しかもコースはサービスエリアのどこかに来るのは間違いないから

普通に打ち合いするよりも、もしかしたら追いつきやすいかも・・・?

不利な点はただ一点、サーブはノーバウンドで打ち返せないことだけだしな


「はあっ!」


パコーン!


・・・来た! フラットだ


「・・・たりゃっ!」


パコーン!


「・・・くっ!」


パコーン!


体勢崩せたか? 球が浮いた! スマッシュ!


きっ!


僕は羽曳野先輩を睨みつけ、大きく振りかぶった。


「・・・!!・・・や、やぁぁっ!」


「・・・っ!?」


な、なんだっ?


パコーン! ・・・バッ!


「イン! ゼロツー」


今何か、先輩目え瞑ってうずくまってた、ような・・・?


「・・・・・・」


何事も無かったかのようにすっくと立ち上がる先輩

・・・気のせいだったのか?

またベースライン付近までお互いが下がる。


「・・・怖かったのよ、あんたのスマッシュが・・・やり返されるんじゃないだろうか?ってね」


「・・・そんなことしませんよ、僕は・・・女の子に」


後ろの日影と会話する

もう・・・話しかけられるのは、諦めた。


「あら・・・あんたも女の子じゃないの・・・さっき、やられちゃったけど?」


「・・・・・・僕は、しません・・・たぶん」


「・・・ふ~ん・・・」


羽曳野先輩・・・僕のスマッシュが、怖い?

だって自分さっき僕に狙って当ててたじゃんか!

これってつまり、勝負の世界じゃ当たり前なんだろ?

じゃあ、さっきの反応は・・・なに?


パシュッ!


・・・!

今度は一発目からアンダーカットサーブで来た!

これは、回転かかってるから・・・えと、どっちに跳ねるんだっけ?


バッ!


「うわ、こっちか!」


ちょっと体勢が崩れた。


パコッ!


「はあっ!」


パコーン!


「くうっ!」


遠い、届くか?


パカン!


ありゃ、半分ラケットフレームに当たった。

ボ、ボールの行方は?

あ・・・ネットの上に、引っかかった!?


・・・て~ん・・・


「っ!、くううっ!」


ダダダッと走り寄る先輩


・・・てん・・・てん・・・


先輩はツーバウンド目を、眼前で見過ごした。


「・・・ゼロスリー」


ら、らっきー!

今のはちょっと実力とは言い難かったけど・・・

運も実力のうちって言うし、いい感じだな


「よし! このゲームは、あと一点で取り返せるぞ!」


「鈴音、落ち着いて行こー!」


うむ、春菜さん、なかなか的確な声援ありがとー。


「はっ!」


バコッ!


またオーバーヘッドに戻してきた。

けどこれは、あきらかに遅い、スピンがかかっている?


バッ!


「うっ! やっぱり?」


バウンドしたあと、逃げていく!


「たあっ!」


パシッ!


先輩はネットに詰めていた。


「ふん!」


パコッ!


冷静に、誰もいないコートにボレー・・・やられた。


「イン! ワンスリー」


・・・やっぱり、まだまだ引き出しは残ってるみたいだ。

そりゃそうか、まだ数ポイントしかやり取りしてないしな


「鈴音、気持ち折れたらあかんよー!」


うう、冷静に対処してるつもりなんだけどなあ・・・



結局、このゲームは先輩の多彩なプレイで一旦はデュースまで追いつかれるも


「アドバンテージ、レシーバー」


あと・・・今度こそ、あと・・・1ポイント


先輩がサーブ体勢に入る


「はっ!」

「あ・・・しまっ!」


しめた! スピンがかかってない中途半端なスピードのボール


十分、引きつけて・・・


「たあっ!」


パコーーン!


バッ!


「ゲーム! チェンジサーブ!」


「いよっしゃあ!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ