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009

ホールを埋め尽くす可愛い女の子たち!

ホールに漂う女の子の甘酸っぱい香り!

ホールはどこもかしこも絶対柔らかい!


こんな景色を見た事ない!こんなにたくさんの女の子を見た事ない!

男性アイドルとか、コンサートでいつもこんなの見てるのね!

あれ?俺なんなん?アイドルなん?何すれば良いのん?歌うん?

〈ライブハウス《アルフヘイム》へようこそ!〉

ここはどこ?

なんだここは!どんだけ広いんだよ!

東京ドーム何個分だよ!そもそも東京ドームの大きさがピンとこないよ!

《落ち着くニャ!》←誰だよ!

《首の後ろをトン!》→キュ〜…


“1ヶ月前に戻りま〜すぅ!”


なんとも腹立たしい3泊4日の第五地球旅行から戻った我々探検隊は、ふたたびアルフヘイムの医療施設を訪れた!

そこで我々が目にしたものは、なんと無人の待合室であった!

これだけの医療施設でなぜ?その光景は我々の理解を超えていた!

「あっ!玉藻〜!お土産買ってきたニャ〜!」

「艦長!遊んでないで行きますよぉ〜。」

「…。」

(寂しかったんじゃよ…)


もう夜も遅いし、急ぎましょう。

いつ命を狙われるか分からない!そんな状況では自由に出歩く事も出来ず、帰りの軌道エレベーターの中ではずっと個室に閉じ込められていました。

護衛役の3人も…あれ?さっきまで、その辺で遊んでいたはずなんだけど?

「……Zzz」×3

「…。」


そんな中、鉄入くんだけが奮闘してくれていた。アルフヘイムにいる鉄入ブラザーズに連絡をとり、指示を出していた。

アルフヘイムでは冒険者管理局をはじめ、医療や港湾などの主要施設のスタッフは皆、鉄入ブラザーズが務めている。

現在〈冒険者管理局〉では、冒険者の捜索と並行して、サポートキャラクターの保護や行方不明者の捜索、負傷者の搬送などを行ってくれている。

そして死体の回収も…


うちのギルドのメンバーも水面下で動いていた。みんな混乱していたから。

ゲーム終了とともに消えるはずだった自分たちが、この世界で何をすれば良いのか…みんな考えていた。

あの時からずっと。

でも全員がすぐに答えを出せる訳じゃない。

メンバーの話を聞き、自分も現実世界を目指すのか、それともこの世界に残るのか…


一人ひとりと会って話がしたかった。

みんな何が好きなんだろう。

みんなの夢は何なんだろう。

教えて欲しいんだ!

でも相手は1200万近くいる。現実的に無理があるのは分かってる。でも…

だから時間が必要だ。みんなが安心して暮らせる場所を作らなきゃ!

でもその前に俺が死んじゃったりして…

冒険者を守ってくれる法律も、冒険者がいなくなってしまえば、あの連中の好きなように変えられてしまうかも知れない。


自分も含めた、みんなを守る場所を作る!

問題は《それを誰に丸投げするか》だ!!!



治療カプセルを出て病室に移っていた3人も明日には退院出来るそうだ。

一番重傷だったカタリナもすっかり良くなっている。治療カプセルおそるべし!

「あの艦長…」

気がつくとセシリアとカタリナがベッドの上で正座しています。

〈あら!かわいいパジャマ。〉

新しくメンバーに加わったこの2人は、どちらもデミヒューマンのサポートキャラクターだ。

〈デミヒューマン〉は一番最初に作られた人造人間でサポートキャラクターの中では、もっとも人間に近い。ファンタジー世界のエルフの様な耳に金髪の色白ボディ!

どちらもスレンダーながら主張する所はもうハリキリスタジアム!!

おいおいどうした?そんなに胸を隠して!

《肘→ありがとうございます!←肘》


「あの私たち、まだちゃんと挨拶もしていなかったので…それと今度私たち改名したんです!」


「千葉県です!」

「民号です!」

「よろしくお願いします!」×2


《うん!やめて!!》


元に戻させました。

では改めまして《?》

「なんで改名なんて出来たん?」

改名する事は出来るけど、でもそれが出来るのはプレイヤーだけでしょ?

「昨日設定をいじってたら出来たんです。」

「私もです。私は自分が使っていたバトルドールが大破してしまったので、なんとか出来ないかと思っていじってたら、マスターが施していたアイテムの使用規制のロックも解除出来ました。」

2人の携帯端末を確認させてもらうと、たしかに名前やバトルドールの使用機体の変更が出来る!それだけじゃ無く、アイテムの使用規制のロックも解除されていた!

「ニャモ!ちょっと寅吉に改名してみ?」

《いらり》顔が《いらり》

「出来ニャい!」

突き出された携帯端末を見ると確かに出来てない。

2人に出来て、なぜ出来ない?

「…。」

もう!拗ねるなよ〜!うりうり!

さて!なぜでしょう?

「一度ソロになったからですかね?」

ミルフィーユがボソッとつぶやいた。

《!》それじゃん!

ソロになれば出来るのか?

それかソロは出来るのか?

今いるこの医療施設にはミルフィーユたち以外にも、多くのサポートキャラクターたちが治療を受けている。

その中にはソロプレイヤーのサポートキャラクターもいるはずだ!

良〜し!その子を見つけて確認だよ〜!


が!もう就寝時間が過ぎているのね!


施設スタッフの鉄入くんの計らいで、空いているベッドで休ませて貰える事になった。

俺だけ個室でひとりぼっち…

ここの警備は大丈夫なんかなぁ〜…



ああ〜そうですか!そう来ますか!


《何しに来たーーー!!!》


目の前には白い空間に木箱が1つ。

白いネコのマペットが口を大きく開けて、今にも襲いかかって来そうな勢いです。

本当にかわいいったらないです!


《突然来られても困るんですけどーー!!》


ですよね。

でも丁度良かった。聞きたい事がいろいろあるんだ。

とりあえず木箱に腰を降ろすと、ぷりぷりしながらもネフィリムも隣に座る。

「この世界の人間と…亜人の関係って何なの?」

〈なるほど…大変だったね〉

「そうか、分かっちゃうんだっけ。」

〈そうだな。人間から見たら亜人は奴隷で、亜人から見たら人間は世話の焼ける子どもかな〉

「…。」

〈もちろん全ての人間がそう思ってる訳じゃない。中には対等の存在として接している人もいるよ〉

「でも同じ人間とは思っていない。」

〈そうだね。貴方と同じで〉


貴方が守りたいのはどっち?

あの子たち?それとも、貴方たちの思い出?

会った事もないプレイヤーのサポートキャラクターを助ける必要があるの?

貴方たちの大切な場所を、他人に荒らされたくないだけじゃないの?


立場が変われば、貴方もこの世界の人間と同じ何じゃないの?


かっこ良いと思ったんだ。

あんな風になりたいと思ったんだ。

いっぱい迷ったはずなんだ。

でも彼は行動したんだ。

仲間の為に、兄弟の為に。

憧れちゃったんだよ。鉄入くんに!

それにもう知っちゃったんだ!みんなの事!

人間とは違うみんなが、泣いて、怒って、笑うんだ!

みんな俺の大切な仲間なんだ!

ここで投げ出したら、かっこ悪いだろ?


〈じゃあ、どうするの?〉

分からない。だから、みんなと決める。

今迄もずっとそうして来たから!

〈貴方に出来るの?〉

出来なきゃ出来る奴を探すよ!


突然ネフィリムが木箱の上に立ち上がり、大きく伸びをする。

〈この世界にも貴方と同じように、青くさい事ばかり言う奴がいっぱいいるよ!〉

「どこにいるの?」

〈自分で探しなさい!〉

「協力してくれるんじゃなかったの?」

〈人に頼ってばかりだから、貴方は成長しないの!でも大丈夫!向こうもきっと貴方を探してる〉


どこからか音が聞こえて来た。

誰かに呼ばれてる。

〈さあ!早く帰って下さい!〉

「最後にあと一つ!黄金の林檎ってなに?」


〈この世界には人間たちを良くない方へ導こうとする者たちがいます。それはその一つ〉


〈がんばって!〉



「…きて!起きて!」

馬乗りになったぽちが顔をペチペチ叩いてくる。はい!もう起きてます!

「何?ご飯が欲しいの?」

「いたよ!」

「何が?」

「ソロの子!」


ミルフィーユたちの病室に行くと、デミヒューマンの女の子が連れ込まれていました。

(ごめんよ…)

トイレから戻る所をぽちが見つけたそうだ。

「なんでソロの子だって分かったの?」

「匂いで。」

顔はいつも通りですが、しっぽをフリフリ!はいはいナデナデ!

「あの〜なんでしょうか?」

そうですよね。事情を話して設定を確認してもらうと、名前も機体の変更も出来た!

彼女も気づいていなかったようで驚いていた。そして名前の変更が出来る事を喜んでいた。

「これでやっと、あいつから解放される!」

彼女は小さな声でそう呟いた。



携帯用小型小宇宙掃除機(仮)を持って来ておいて良かった。

施設の中庭にあるベンチに座りタバコを吸う。

分かっていたのに、直接聞くとやっぱりへこむな…

彼女のマスターは、ずっと待ってくれていた彼女の事を覚えているのだろうか。

彼女は喜んでいた。マスターの付けた名前を捨てられる事に。ようやく自由になれる事に。

そんな子がたくさんいるんだ。

そしてそんな子を狙う悪い奴がいるんだ。

なんとかしなきゃ。


「艦長ですよね?」

声がする方にグリっと向くと、ビクッとするミルフィーユ。

携帯用小型小宇宙掃除機(仮)を外すと顔にあたる朝の空気が気持ち良い。

見た目だけじゃなく、通気性も改善が必要だな!

「みんなは先にヘイムダルに向かいました。」

「ごめんね。ひとりだけ残ってもらって。」

「あの…艦長!ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした!それに…艦長の機体も…」


ベンチの右端によって、ひとり分のスペースを空けると戸惑いながらもミルフィーユがそこに座る。

「君が無事なら、それで良い。」


いろいろな話をした。

いままでに起きた面白かった事、ムカついた事。半分以上は愚痴だけど。

ミルフィーユは嬉しそうに笑っていた。

この世界に来てから、こんなにゆっくりミルフィーユと話したのは初めてだね。

ずっと一緒だったのに、まだまだ知らない事ばかり。

こんな顔で笑うんだね。

こんな顔で怒るんだね。


君はずっと俺の後をついて来てくれた。

そんな君だから頼みたい事があるんだ。


それはミルフィーユにしか頼めない事。

それはミルフィーユにしか出来ない事。

それをミルフィーユに伝えた。


ミルフィーユは笑顔で頷いてくれた。


「ところでミルフィーユはどうして現実世界に戻りたいの?」

「この間、言ったじゃないですか!」

「自分のマスターに会いたいっていうのは、みんなでしょ?俺はここにいるじゃない!」

「う〜ん。ナイショ!」

《やめれ!キュンキュンしちゃう!》



ヘイムダルの修理は終わっていたが、ドックから移動させずにいて良かった。

ここなら人目につかないし、もし居てもドローンや鉄入くんだ。

「人払いはしておきました。ですが私もご一緒で良かったんですか?」

「ええ!これはみんなで乗り越えなきゃいけない問題ですから。」


ここはヘイムダルの後部格納庫。今ここにギルドメンバーと鉄入くんに集まってもらった。

格納庫のハッチを開いておけば、船の外に出られないヘイムダルも、中に入れない鉄入くんも、一緒に話が出来る。


「今回みんなに集まってもらったのは、ゲームのプレイヤーであるこの俺と、ゲームのNPCであるサポートキャラクターが今置かれている状況を説明する為です。」

「艦長!」

「マティーニ。」

ミルフィーユがマティーニを止めてくれた。

みんなも動揺しているが、一番動揺しているのは鉄入くんだろう。

正直信じて貰えるか不安だった。

それでも、知って欲しかった。サポートキャラクターを自分たちの兄弟と言ってくれた鉄入くん(兄)の為にも。

彼の想いに答えるには、嘘はつけない!


「話を続けて下さい。」


鉄入くんにも分かるように、ゲームの事を、あの瞬間の事を、全てを話した。

俺たちの想いを、千葉県民号のみんなの想いを、全てを伝えた。


ネフィリムという女の子がいるんだ。

それはとても可愛い女の子。

異人と呼ばれる男がいる。

ネフィリムが教えてくれた、もう一人のプレイヤー。


この世界の人間たちの話を。

この世界の仲間たちの話を。

この世界にある地球の話を。


俺たちのいまを全て伝えた。


「ありがとう。信じ難い話ですが、聞けて良かった。」

鉄入くんが頭から白い煙を出しながら、近くの小さなコンテナに腰掛ける。

「私の中にあるこの記憶は、作られた偽物なんかでは決して無い。私はいまの話を、この世界の全ての兄弟に伝えます。たとえ貴方達が私たちとは違う何かでも、もう大切な仲間ですから。」


「そこにいるのは分かっていますよ1192号!」

鉄入くんがコンテナから立ち上がり、ドックの入り口に向かって叫んだ。

「すいません兄さん!」

「紹介します。冒険者管理局の局長を務めている弟の1192号です。」

「よろしくお願いします!」

「はぁ…よろしく。」

「私は第五地球に戻ります。後は任せましたよ1192号!」

「はい!兄さん!」

鉄入…え〜ああ!28号くんはこうして第五地球へ帰って行った。

最後に握手したその手は冷たい金属のはずなのに、とても暖かかった。

(オーバーヒートじゃなきゃ良いが…)


「私達は何から始めればよろしいですか?」


そうだね。始めよう。

「まずサポートキャラクターたちを守るために、みんなにも動いてもらう。でもその前に…」

携帯端末を取り出し操作する。

「どうだい?ミルフィーユ。」

「はい…長い間、大変…お世話になりました。」

ミルフィーユが深々と頭を下げる。

「何なんだこれは?!」

玉藻がミルフィーユに駆け寄り叫ぶ。


ミルフィーユを俺のサポートキャラクターから解除した。

ゲームでは新しいサポートキャラクターを手に入れたら、いつでも変更出来たが、この世界ではもう再設定も出来ないようだ。


サポートキャラクターはこの世界で、プレイヤーの代わりに冒険者となった。でもミルフィーユだけが、たったひとりサポートキャラクターのまま。

彼女だけが従者のまま。

彼女はずっと俺の後を歩いていた。

だけどこれからは、俺の隣にいて欲しい。


顔を上げたミルフィーユが、まっすぐに俺を見つめる。


俺たちしかいない広いドックに、俺の声だけが小さく響いた。


「君たちを我がギルドから追放する。」




あれ?序盤のは?ですよね(ノ ̄▽ ̄)

次回に続くのです!


次回をお楽しみに…してくれてる人がいたら嬉しいな。

週1ペースになりつつあります十でした。

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