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007

この頭上に広がる満天の星を!

この足元に広がる星々の海を!

この眼前に広がる黄金の環を!


〈ゲート〉

それは広大な宇宙に浮かぶ巨大な環状建造物。

この移動装置はソール恒星系のあちこちを結んでおり、何処へでも瞬時に移動が行える。

いま俺たちが利用するのは、第五火星の先にある小惑星帯とコロニー周辺を結ぶゲートだ!


何度も利用したゲート!なのに何故だろう!胸がキュンキュンする!

ゲートが迫ると、そのあまりの巨大さに少しだけチビった…少しね。

このゲートの事は当然覚えてる。でもその時は、こんなに感動しなかった!当たり前のように思ってた!

《わくわくが止まらん!!!》

いつの間にか、みんなブリッジに集まっていた。

みんなも声には出さないが、態度で分かる!

この世界でも俺たちは冒険者なんだね!

嬉しくなった!またみんなと冒険が出来る!


ヘイムダルはゆっくりと巨大な環をくぐる。

それは一瞬だった!モニターにコロニー〈アルフヘイム〉が映し出される。それはまだ最大望遠で映し出された荒い画像。それでも安堵の顔がみんなに浮かんだ。


アルフヘイムまではまだ少し時間が掛かるが、みなそれぞれの作業に取り掛かる。そう俺以外…


「艦長は少しお休み下さい。」

空気を読んだマティーニがそう言ってくれたので、艦長室に戻ることにしました。

本当にみんながいてくれて良かった!



小宇宙掃除機(仮)を装着し、タバコに火をつけ一息つく。


この異世界に残ったプレイヤーは俺だけ…いや異人とかいう人とふたりだけ。生きていればだけど…

死ぬことのなかったサポートキャラクターが、この世界では死ぬ。それならプレイヤーだって…確認してみる訳にもいかないけど。

たったのふたり…他にももっといるかと思っていたけど、ネフィリムの話からも、取り残されたのは俺だけ。他のプレイヤーは千葉県民号の映像でも確認出来たように、みなログアウトさせられた。


みんなはログアウト出来たのに何故俺だけ?

異人や地球を探すにしても何からすれば…


(しかし腹減ったなぁ〜)

腹が減ってはなんとやらというが、ヘイムダルには食堂どころか非常食すらない。必要なかったから。

スマホのゲームだったこの世界。一度の冒険が、これほど長時間掛かった事はなかったからだ。

シャワールームやトイレなどはあっても、俺たちは艦内に住んでいた訳じゃない。サポートキャラクターにも、それぞれ個室は用意されているが、それは待機している時に使う場所。彼女たちの家はアルフヘイムにある。

そして〈俺の家は現実世界にある!〉

この世界での15年の記憶。それはゲームをしていた時の記憶。ゲームで行った事のある場所、利用した施設。ゲームで体験した記憶だ。


そこから変わってしまったこの世界。その記憶にないところに何かヒントがあるのかも知れない。


不安だけど、ちょっぴりわくわく!

《それって大冒険じゃん!!!》



私の名前は白瀬 直斗。35歳。独身。

今日たった今…みんなの前で…生まれて初めて《脱糞》しかけました!してはいません!本当です。一応あとで確認はします。


みんなも声が出なかった。ゲートの時のような感動ではなく、あまりの大きさに、ただ怖くて足が震えた。


コロニー〈アルフヘイム〉

ソール恒星系に5つあるスペースコロニーの1つ。プレイヤーの冒険の拠点にして、サポートキャラクターたちが住む、直径およそ120kmもある巨大な球状の建造物。

その表面は銀色の流体金属で覆われ光り輝いている。

まるで巨大な鏡のような銀色の海に着水したヘイムダルが静かに沈んでいく。

〈まずはここからだね〉


入港の手続きや備品の手配はミルフィーユがすでに済ませてくれていた、あとの事もマティーニがやってくれました!

ミルフィーユたち3人は医療施設に搬送され、玉藻もそれについて行った。

「艦長は艦長の仕事をしなさい!」

一緒について行こうとした俺に玉藻はそう言ったが…艦長の仕事はあるのでしょうか…



「あとはお任せ下さい。」

無かった!

星クジラと要塞クラゲとの連戦で傷ついたヘイムダルをドックで修理する事になりました。マティーニが、ちゃっちゃと手配を済ませ移動が開始されます。


そして今ここに暇を持て余した、俺!そして〈ぽち〉〈ニャモ〉〈USA〉の、たった4人の探検隊が結成されたのであります!

「離れろ。」

「ご機嫌ななめかニャ?」

「なに食べるぅ〜?」

「…。」

大冒険のはじまりです…


アルフヘイムは工業区や商業区、サポートキャラクターの住居などがある区画と、ドックやギルド艦の港湾施設などがある区画、そして冒険者の登録や訓練などを行う区画の大きく3つに分かれている。


さて今回の冒険の舞台は商業区です!

たらふく食って、楽しいお買い物が待っています!

「艦長〜早くぅ〜!」

「デンシャ来ちゃうニャー!」

この広大なコロニーの移動ともなると、歩いては無理がある。

そこで今回はデンシャで移動する事になりました。コロニー内の各地を結ぶデンシャは非常に便利なのです!でもまあ商業区までは30分くらい掛かりますが。

(転送装着があればなぁ〜)

ゲームの時はプレイヤーは何処にいても、何処へでも瞬時に移動出来た。それがなんでか出来なくなってしまった。

めんどくさいったらありません。


商業区まで280円か…

この世界での通貨は〈円〉と〈ゴールド〉の2つがある。

ゴールドはガチャや高性能な消費アイテムを購入するのに使用したが、課金出来なくなったいま、もう増やす事は難しくなった…大事にしなきゃです。

そしてもうひとつが円。この世界で一般的に使用されている通貨だ。円は冒険者なら、クエストクリアで簡単に得ることが出来る。

俺でも1億円以上持ってるし…

これらは貨幣や硬貨はなく、電子マネーのように携帯端末で支払いをする。

(俺のニャモ製だけど大丈夫なん?)

《案ずるニャ!》


「はやく行こうよ!お父さん!」

《……?!》

「ぽちは子供料金で行く気ニャ!」

(…お兄ちゃんが良かったな…)


普段はヘイムダルのクルマで移動しているみんなも、久しぶりのデンシャで、はしゃいでいるのかしら?

「あっ!すいてるぅ〜!」

日が暮れるには、まだ随分とあるこの時間帯に、ここまでガラガラなのも不思議な感じがしたが、かしまし過ぎるこの子たちもいるし丁度良い。

この世界は通貨にしろ、乗り物や文化面も日本と同じで、あまり違和感がない。

日本のゲーム会社が作ったのだから当たり前と言えば当たり前か。

ゲームと言えば、これは元々スマホ用のゲームだ。それが現実化するとツッコミ所が満載だ。例えば重力や時間。この世界のほとんどの人間が住む第五地球や、資源採掘などが行われる他の惑星まで全て重力は1G、時間も1日24時間、1年は365日。うるう年とかもあった。

ギルド艦やコロニー内の重力も、重力発生装置と言うのがあるそうだ。

ヘイムダルに仕組みを聞いたが、不思議な呪文を唱えるばかり…

もし、そんなモヤっとした所に帰還のヒントが隠されていたら…

「ねえねえお父さん!」

「…。」

「顔!」

ぽちが指差す先を見ると、建物の窓がまるで人の顔の様だ!おもしろいねぇ〜!

《親じぁねぇわ!!!》



アルフヘイムの商業区には、様々なジャンルの飲食店!大きなデパートから小さな小売店などが並んでいる。

ゲームの時は回復アイテムを買いに来た事がある。

「かわいい〜!」×3

小さな雑貨店で3人娘が騒ぎだす。→歩き出す。

《買わんのかい!!》


「おなかすいたぁ〜!」

そうだよ!まずは飯だ!何食べようかなぁ〜和洋中なんでもあるし、デパートのレストランも良いですなぁ〜!

ちょっと奮発して高い所に行っちゃう?

「コンビニでおにぎり買って、そこの公園で食べるニャ!」

ツンツンとニャモに袖を引っ張られて言われました。→『やだ!』


『コッテリチャーシューメン!大盛りで!』×3

ご馳走します…と言ったらすぐこれです。

「塩ラーメンの普通盛りとギョーザを4人前。」

「艦長はギョーザが大好きニャんだね!」

「おまえの頭の中には何ミソが入っているんだ?」

(ぽちがようやくいつもに戻った…)


ドローンたちが忙しなく動き回る店内はデンシャの時の様にガラガラだ。やっぱりおかしいよね。


「……。」

「ふーふーしろ。」

「ニャモ!ニンニクとってぇ〜!」

うまい!良かった味がある!!

アニメや漫画によくある異世界の食事は味がない設定は無かった!!不安だったんじゃよ…


「ごちそうさまでした!」×3

4人で、あれだけ食べても5000円くらい。

物価は日本とそれほど変わらない。


外食は久しぶりだとUSAが言っていた。みんな普段は自炊しているそうだ。

彼女たちの生活費は、クエストが終了してギルド艦の整備などをする費用の一部に含まれていた。

それは本当にわずかな額で、彼女たちはずっと節約していた。


ゲーム時代、ちょっとしたバグがあった。

たまにプレイヤーの所持金が減ってしまうバグ。それは本当に少しだけ。運営に問い合わせても原因が分からず、それからお金を大量に獲得出来るキャンペーンも増えた事もあって、〈うちの子へのおこずかい〉と言ってみんなそれほど騒がなかった。


どうしても欲しいものがあった時に少しだけ、こっそり使っていたのかな?黙って使ちゃうのは良くないけど、なんか可愛く思えた。


「艦長!綺麗ですよぉ〜!」

ドーム状の天井は時間に合わせて、綺麗な夕日を映し出す。それは作り物だけど見ていてほっこりします。


《ほっこりしてる場合じゃねぇ!》

大事な事を忘れてた!たしか先ほどの雑貨店の近くで売ってたはず!

「ちょっとタバコ買ってくる。」

「…。」×3

ほっこり娘たちに構わず、急がねば…そろそろ禁断症状が…


《高いわ!!!》

タバコが1箱2000円!ないわ〜…でも買ったけど!とりあえず1カートン!

「艦長!艦長代理たちのお見舞いに行くニャ〜!」

「タバコは〈有害指定品〉で高いんですよぉ〜!」

「本当にびっくりしたわ!はいこれ!みんなにひとつずつ!」

「これは…」


それは先ほどの雑貨店で購入して来た、小さなぬいぐるみが付いた携帯端末用のストラップ。

それは、ぽちがずっと見ていたストラップ。

「探検隊結成を祝って、みんなで付けよう。」

「良かったニャ〜!ぽち〜!」

「うるさい。だまれ。」


「はやく行くニャ〜!」

ミルフィーユたちのいる医療施設までデンシャなら暗くなる前に着くだろう。

「ありがとう。」

「お父さんだからね!」

隣を歩くぽちのこんな笑顔が見れたなら安いもんだ。



やはりおかしい。

それはデンシャ内や、ここ医療施設でも。

〈サポートキャラクターがいない〉

施設スタッフのアンドロイドたちはいるが、それはこの世界で亜人と呼ばれるものたち。

サポートキャラクターと同じ見た目だが、やはりどこか違う。

外はもう暗くなって来たとはいえ、全員帰宅したという事もないだろう。

「艦長!」

到着を伝えておいた玉藻が駆け寄って来た。

「ちょっとここじゃまずいから、ミルフィーユたちの所に行きましょう。」


まずいとは?なんか凄い事になってるんだよねぇ〜…

エレベーターホールに向かう足取りも重くなりますよ。


そのまま歩いていると、突然USAに袖を引っ張られ、ぽちとニャモが前に飛び出した。

「申し訳ありません。警戒させてしまいましたね。」

それはまるで昭和のブリキのおもちゃのようなアンドロイド。

そのマジックハンドのような手で器用に名刺を取り出した。

《内閣官房副長官 鉄入28号》

名刺にはそう書かれていた。

「兄さん!!」

「おお!5416号!」

「こんな所でどうしたんですか?」

「どうしたも何も仕事中だよ!」

「あっ!申し訳ありません。じゃあ兄さん、また!ああそうだ!25231号も会いたがっていましたよ!」

「そうか。おまえもしっかりな!」

施設のスタッフと思われるアンドロイドが足早に去って行く。

「失礼しました。」

「弟さんですか?」

「分かりますか?」

「そっくりでびっくりしました…」

《アンドロイドの兄弟って流行りなん?しかも何人兄弟だよ!!》

「それでご用件は?」

「はい。昨日発生した冒険者の大量失踪について、冒険者である貴方にお伺いしたい事がありまして。宜しければ私とご同行いただけないでしょうか。」

「同行というと?」

「はい。第五地球まで!もちろんそちらのお嬢さま方もご一緒で構いませんよ。」


「マティーニには私から連絡しておく。あなた達、艦長の事…お願い。」

「大丈夫だよ…多分!それよりミルフィーユ達3人の事、頼んだよ!」

「はい…」


外にはすでにクルマが用意されており、重武装のアンドロイドが4人立っていた。


クルマは軌道エレベーターへ向かうシャトルが待つ発射場へ向け走り出す。

窓から見える空には、映し出されたとても綺麗な青い星。


《第五地球》


それはこの世界の多くの人間が住む星。そして俺たちプレイヤーである冒険者が住むとされていた星。


《俺の知らない。初めての星》


連休も終わり暇になるかと思えば、忙し過ぎる毎日⊂⌒~⊃。Д。)⊃


ご感想や評価お待ちしてます!

よろしくお願い申し上げます。!

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