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015

マスター!早く!

マスター!何してんの!

マスター!いい加減にして!


もう無理じゃよ…


せっかく手に入れたLG級バトルドール〈ブリュンヒルデ〉は赤い火の玉となって、ただいま第五火星に落下中であります。


この世界の第五火星は現実世界の地球と同じ重力、自転速度…

大気だって同じなのでこうなります…

こんな所はゲームのままなのね…


マティーニたちはヘルメットから飛び出し阿鼻叫喚中!

マンガのように白目になったぷちマティーニがアワアワしながらぴょんぴょん跳ね回る。

「マスター!操作マニュアルは?!」

「俺マニュアルは読まない人なんで…」

「うっ!…」

「どうしたの?!まさか…❤︎」

ぷちダージリンの体の前面(おそらく口なんだろうね)がパンパンに…いやいや!それだけはやめて!

ぷち琥珀はなに幸せそうな顔を…おめでとうなの?!


ヘルメットが…

まさに地獄なり…ぷちダージリンのなんでもない緊張からのリバースを皮切りに全員もらう…


コクピット内は重力発生装置のおかげで安定しているのでヘルメット内のアレも飛び散る事なく留まっている。

基本的にバトルドールのコクピットはどれも同じ作りになっている。

新しい機体に乗り換える度に操縦法が変わってたら、まともに戦えないから。

ただこのブリュンヒルデは試作機という事もあり、新しい操縦席に変わっている。

それであの分厚いマニュアルという訳か…


ハッチの開閉や起動方法に変わりはないものの操作レバーやフットペダルなんかがない。

手を入れろと言わんばかりの装置に恐る恐る手を入れると、それはまるで生物の体内のようで、ブヨブヨしていて生暖かい。

すると頭上にぼんやり輝く輪っかが現れた。


なんという事でしょう!

あっ!ちょっと待って下さいね!→リバース。

…頭の中にいろんな情報が流れ込んできて、気持ち悪いったらありゃしない!

それに何だ?重力発生装置のおかげで座席にしっかり座っている感覚はあるし、アレをこぼさないようにヘルメットを股に挟んでいる感覚もある。

それなのにブリュンヒルデと同じように、頭から真っ逆さまに落ちている感覚が…。


それは意識を集中すればするほど→熱いわ!!!


「…スター!マスター!」

「…はいっ?!」

「突然どうしたんですか?!魂抜けてましたよ!早くなんとかしないと!」

相変わらずアワアワしているぷちマティーニも、そろそろ限界のようだ。

くりくりお目々が涙でうるうるだ。

「大丈夫だよ。マニュアルが無ければヘルプを見れば良いじゃない!」


たぶんこうだろう。

意識を集中すると画面が次々と目の前の空間に投影される。

SFっぽい!すごいねこりゃ〜!


「あっ!マスター!脱出システムってのがありますよ!」

「コクピットを切り離して脱出カプセルみたいにするのか…でも燃えちゃうね…」

「あっ!ありましたよ!」


《大気圏に突入しちゃったら!》


諦めてください。←《おいっ!》

冗談はさておき!対処法です。


①まず、バトルドール単体での大気圏突入はたいへん危険です。何故そうなってしまったのか、ちゃんと反省して下さい。

②バトルドールに大気圏突入の装備や能力はありません。ですが防御フィールドがあります。ただ…ギリギリです。

③防御フィールドの展開は音声認識システムを採用しているので音声入力が必要です。「防御フィールド展開!」とそのままで良いので恥ずかしがらず大きな声で叫んで下さい。

④あとは根性です!ブリュンヒルデは貴方の気合いと根性で無敵のスーパーロボになるのです!

⑤がんばれo(>◡<)o


「マスター…。」

『防御フィールド展開ーーー!!!』


ブリュンヒルデの背部から12枚の光の翼が現れ、機体を包み込んだ。

機体温度の上昇は抑えられ安定していく。

だけど…

「マスター!続きがあります!」

「…。」


《続・大気圏に突入しちゃったら!》


どう?上手くいってる?…OK!次に行こう!


機体が安定してきたからって安心しちゃいけないぜ!

今の速度で地表に激突したらどうなるか…

感の良い君ならもう分かるよね!そう!機体もろとも木っ端ミジンコ!

だが安心してくれ!

今機体の周りを防御フィールド〈光の翼〉が包み込んでいるはずだ。

何故そうなっているかって?

それは君の機体を守るというイメージがそうさせているからさ!

では減速する為にはどうすれば良いか。

答えは簡単さ!翼を広げるだけで良い!

後は君のイメージ次第だぜ!

じゃあ、がんばれよ(・ω<)-☆


あっ!それと音声認識システムはウソだから叫ばなくてもイメージするだけで良かったんだぜ!

叫んじゃった?(≖ლ≖๑ )プッ


「マスター…。」

『徳川ーーーーーー!!!!!!』


ゆっくりと翼を広げたブリュンヒルデは減速しはじめる。

コクピットのモニターには焼けただれた森林と、ひび割れ隆起した赤い大地が映し出される。

それはゲームの時とは、まったく違う景色。


「なんだこれ…」



まだこの世界がゲームだった頃、第五火星にはレアメタルの採掘クエストで何度も訪れている。

採掘場の周りも樹々の生い茂る豊かな大地が広がっていたはず…


「マスター。アルフヘイムに救出要請を…」

ぷちマティーニは緊張の糸が切れたのか、体がとろけぎみだ。ぷち琥珀とぷちダージリンは、やけに静かだと思ったら目を回して俺の足もとでくたばっている。


アルフヘイムとの交信を試みたものの、通信機器にダメージがあるようで上手くいかない。

せめて情報だけでもと思い送信したけど、上手く伝わるでしょうか…


『マスター!!!』

ぷちマティーニの声と共に、一筋の光がブリュンヒルデの胸部をかすめる。

砲撃?しかもコクピットを狙って?

「マスター!早くヘルプ画面を開いて!」

「いや、大丈夫。」

ようはイメージなんだろ?

俺に翼はないから飛んだ事はないけれど、背中をぴくぴくすれば…ほら、この通り。


ブリュンヒルデは光の翼を羽ばたかせ第2射をひらりとかわす。


ブリュンヒルデの各センサーやカメラも、まるで自分の身体のように感じる。

耳をすませば射出音も聞こえるし、目を凝らせば…

これはまた…参ったねどうも…


大気圏内を航行する2隻の船。

どちらも見覚えがある…

それはアニバーサリーイベント〈最強ギルド決定戦〉の優勝報酬。

LG級2番艦〈オーディン〉、そして同じくLG級14番艦〈トール〉。


ギルド同士の交流は無かったけど、LG級の固有名詞と同様に、ギルド艦の外観も専用のものに変化するから間違いない。


2隻のギルド艦は徐々に距離を詰めてくる。

本来宇宙用のギルド艦も、速度は落ちるが大気圏内でも航行出来る。

撃って来ない?それなら…

改めてヘルプ画面を開く。

こちらも何か武器は…あった!


ブリュンヒルデの背部に装着されていた対艦用ビームライフル〈グラーネ〉を手にする。

それは身の丈ほどの巨大ビーム兵装。


《グラーネを使ってみよう!》


٩( *˙0˙*)۶ 画面の前のお友達!集まれー!

グラーネの説明を、はっじっめっるよぉ〜!

えっ?そんな時間はないって?

あわてない、あわてない!


ʕ-ヮ-。ʔ 良いからはやく始めてよ!

٩( *˙0˙*)۶ ごめんごめん!

ʕ-ヮ-。ʔ で?グラーネって何なの?

٩( *˙0˙*)۶ グラーネはね!戦艦にも風穴を開けちゃう危ない兵器だよ!

ʕ>⌓<。ʔ えっ!こわいよ〜

٩( *˙0˙*)۶ だから取り扱いには十分気をつけないといけないんだ!

ʕ-ヮ-。ʔ 気をつけます。ところでグラーネは対艦遠距離用兵器って事で良いの?

٩( *˙0˙*)۶ グラーネは戦艦や大型の星喰に対して遠距離からの狙撃を目的として作られた兵器だけど、もちろんバトルドールや小型の星喰にも使えるよ!一発で消し炭さ!

ʕ ㅎ_ㅎʔ じゃあ敵の接近を許しちゃいけないね。

٩( *˙0˙*)۶ 大丈夫!そんな時はグリップをグッとやってガッとやれば、巨大なビームソードとして近接戦闘も可能だよ!

ʕ>⌓<。ʔ 説明が雑だよ〜

٩( *˙0˙*)۶ 冒険者は細かい事を気にしちゃダメ!バーンとやっちゃえば良いんだよ!

ʕ ㅎ_ㅎʔ 冒険者に同情するよ…


╭( ・ㅂ・)و ̑̑ がんばれ!


「マスター…。」

「……。」


バトルドールには大きく分けて3つのタイプがある。

ビームソードや実体剣による近接戦闘を得意とする前衛タイプ。

ビームライフルや実弾銃による遠距離戦闘や支援攻撃を得意とする後衛タイプ。

そして前衛と後衛どちらもこなす万能タイプ。


ブリュンヒルデは、その万能タイプという訳か。

一見便利な万能タイプも特化してない分、中途半端な機体が多い。

LG級とはいえ、たった1機でどこまでやれるか…


グラーネから放たれたビームはオーディンの防御フィールドを突き破り、船体をかすめる。

左舷に回頭しビームを回避したオーディンはトールの針路を塞ぐ。


一発で防御フィールドを…これならなんとかなるかも知れん!


『マスター!後ろ!』

背後からの砲撃が直撃した。光の翼だけでは防ぎきれず機体にダメージを受ける。


振り向くとそこにはLG級8番艦〈フレイヤ〉、そしてLG級11番艦〈フレイ〉の2隻のギルド艦が…


『ギャーー!!』←ん?どしたの?

『ギャーーーー!!!!』

その時、あの輸送船から通信が入る。

「投降してください。白瀬さ…ギャーーーー!!!!」


ヘルメットがーーーーーー!!!!!



そして再び輸送船に…

3匹のぷち娘たちは透明の虫かごみたいなケースに押し込まれキッチキチになっています。

俺も両手両足きっちり拘束され、椅子に座らされている。

そして先程とは違って今度は5人の男が目の前にいる。

1人はサイボーグのリーダー格の男、そして残りの男たちは、あのギルド艦の艦長。

ずっと行方の分からなかった男性型のサポートキャラクターたち。


ただ、人を値踏みするようなその目に、あの日この世界に残った、たった1人のプレイヤーであるこの俺はどう写っているんだろう。


他のプレイヤーはみな彼らを残し現実世界に帰って行った。

彼らがラグナロクのあの子たちと同じだったのなら、彼らは宇宙海賊の連中に利用されているのかも知れん!

俺に任せろ!と言いたいけど男だとやる気が…


「先程はほんの挨拶のつもりだったが、さすが星クジラに選ばれた男は違うな!」

それはオーディン艦長・獅子のビースト〈シーサー〉。立派な髭を蓄えたムキムキの大男は俺の横の椅子にまたがると、そのごつい手で背中をバンバン叩いてきた。

「それはお前のところの火器管制官が未熟だっただけではないのか?」

フレイ艦長・猪のビースト〈八戒(はっかい)〉の言葉にシーサーが立ち上がる。

「貴様のところのように背後からしか撃てぬ卑怯者よりマシだがな。」

詰め寄る2人のムキムキを、トール艦長・牛のビースト〈(くだん)〉、フレイヤ艦長・猫のビースト〈ペロ〉の2人は止めようともしない。


シーサーだけでなく、4人の艦長はみんなムキムキで暑苦しい…

彼らは放っておいても大丈夫かも…


「2人ともその辺にしておきなさい。白瀬さんに失礼ですよ。」

声を荒げる事もせず、静かな口調でそう言ったサイボーグの男は、俺の前に椅子を移動させ腰かける。

〈諭吉〉と名のった男に名字はない。

名字があるのは戸籍のある人間だけなんだそうだ。

しかし諭吉か…その名を聞くと課金地獄を思い出す。

課金は魔法。ひとの努力をたった一度の課金で覆してしまう。そんなものは魔法でしかない。

そんな魔法の最上位〈諭吉〉…俺も何回発動した事か…


「貴方にはこれから私たちの指導者に会っていただきます。」

「会ってどうします?」

「あの方の夢を叶えていただきたい。」

「…夢ね…」

面倒くさい連中だね。

「ただの人間でしかないこの俺に何が出来ます?」

「貴方にはこの世界を変える力がある。貴方は選ばれた人間なんですから!」

「…先程シーサーさんも言ってましたが、何ですか?…その選ばれたってのは。」

「貴方は星クジラに選ばれた。そしてそれを捕らえた事で、貴方は貴方の望みを叶えた。」

「…?」


「貴方はこの世界に残りたい!そう願ったのでしょう?だから貴方はここにいるんです!」



何故俺が?

ずっと疑問だった。

ゲーム終了のあの日、多くのプレイヤーがログインしていた。

あの日、まだ続けたい!終わりたくない!そう願ったのは俺だけじゃないだろう。

それなのに何故俺だけこの世界に残ったのか不思議だった。

それが星クジラと出会い、捕らえたから?

星クジラって何なんだ…


「覚えてないか?星クジラとのエンカウント率が余りにも低い事に切れたプレイヤーが運営に抗議しただろう。」

「えっ!ちょっと!」

「大丈夫。話は彼らサポートキャラクターたちから聞いています。貴方や、この世界が何なのか理解した上で貴方をお連れしたんです。」

いかにも豪快そうなシーサーの暴走かと思ったが、そうと知ってこの態度か…諭吉さんも肝が据わっているね。


しかし運営への抗議か…たくさんあったから覚えてないよ。


「その抗議に対して運営が〈お知らせ〉にふざけた事を書いてただろう?」

「…?」

「星クジラを捕らえた者は、どんな願いも叶えられるでしょうってな!」


あれか!確かにそんなお知らせがあった。

奇跡に近い星クジラとのエンカウント率は、システム上の問題で変更出来なかった。

運営がお知らせで通知して来た時、最後にそう書いてあった。


どんな願いも叶えられる=不可能


当時そのお知らせを見て呆れたもんだ。

でもだから何なんだ?


「運営はこの世界を作った創造主みたいなもんだ!この世界がゲームを開発した時に出来たのか、元々あったのかは知らんがな。でも運営がそう決めたんだ。この世界の法則を。」

「もしそうだったとしたら、君たちサポートキャラクターはどうなんだ?」

「さぁな!元々ここに残る事になっていたのかも知れないし、お前さんのオマケで消えずにすんだのかも知れん。」

「…。」

「だが何にせよ、我らはここにいる。この世界で己が望むままに生きる事が出来る。かつて我らのマスターがそうであったように!」

「…そうか。」

「…お前さん…マスターに良く似ている!マスターも良くそうやって笑ってくれた。まあお前さんのように、そんな貧弱な体では無かったがな!」

そう言ってシーサーは豪快に笑う。

他の艦長たちも、あの頃を思い出しているのかも知れない。

見た目はアレでも、中身はあの子たちと同じみたいだね。


「でも何でサポートキャラクターの君たちが宇宙海賊何かに?」

「やっている事は同じかも知れませんが、革命軍と言ってくれたら嬉しいですね。」

「ああっ…そうでしたね。」

唯一細身でムキムキのペロが笑って答えてくれた。


「あの日、当てもなく彷徨っていた我々を、彼らは何も聞かずに受け入れてくれました。そこで彼らの現状を知り、彼らを守ると決めたんです。そして同じように彷徨っていたギルドやソロのサポートキャラクターに呼びかけ、今では50万人ものサポートキャラクターが革命軍に参加しています。」


サポートキャラクターだけで50万人か…

第五火星の人間も入れればそれ以上。確かにひとつの軍隊と言って良い数だ。

だけど…

「革命軍の目的は?」

俺の問いかけに諭吉は視線を逸らさず真っ直ぐ答える。

「この世界に私たちを人間だと認めさせる事です。」

「その為に戦争でも始めるのか?」

「必要なら。」

「負けると分かっているんだろう?」

「だから貴方をお連れしたんです。」

「だったら何故こんな拉致みたいな事をする!ラグナロクの冒険者たちも敵に回す事くらい分からん訳じゃないだろう?!」


「あの方には…もう時間がないんです…」


汚い!俺の事を調べ尽くしていてこれなら、本当に汚い!

「言ったろう?この男なら必ず力を貸してくれると!頼んだぞマスター殿!」

諭吉の肩に手を置いたシーサーがまた豪快に笑う。


「ぬかせ!!」


とりあえず、彼らの指導者とやらに会ってみよう。

だけど彼らは異人の事は知らないようだ。

星クジラの件は異人に当てはまらない。

ひとつの要素ではあるのかも知れないけどね。


つまり俺はやっぱり普通の人間って事だ。

でも彼らがそう信じてくれるなら、なるべく期待に応えたいもんだ。


「ところで俺の拘束は解いてくれないの?」


小説に顔文字を使うなんて!

まあ…チャレンジ精神旺盛って事で許してください( ̄◇ ̄;)


さて次回は女の子たちのお話です!

はは〜ん!交互だな!そう交互です!


ちょこっと書き始めていますが…

なんか面倒くさい事になってます…

話ではなく、私的に…


イマイチのれない十なのです。


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