Annoying
メリーと会わなくなった。
眠りについても、本当に会わなくなった。あの庭園も、お花畑も、メリーも、全部なくなった。
夢を見ることも、なくなっていた。
リンダは悲しかった。
(けれど、自分が決めたことだ)
形だけでも諦めることにしてリンダは、気を紛らわすために勉強をがんばってみることにした。
前よりも理解できるようになっていて、授業もわかるようになった。
先生にさされても、パッと答えられるようになり、他の人に横取りされることはなくなった。学校の人は、そんなリンダの様子をつまらなそうにしていた。
結局、ひとというのは自分より劣るなにかを下に見ていたいものなのだ。
その人自身だって、よく見れば周りとさほど変わらないのに、それを指摘されるのを恐れて、自分が後ろ指を指されないようにどこからか自分よりも劣るものを探し出して、ほらあの人、と囁きながら隣の人の肩をつつく。そうやって、プライドを保つのにみな必死なのだ。知らずうちに、誰だって。
その、自分の立場を守るためのストッパー役にリンダが選ばれた。
それだけのことだった。
けれど、そのストッパーが崩されて保障のなくなった今、足場がなくなった今、守れるものがないのだから、当然連中は焦る。次のストッパーを探し求め、ひたすら焦る。リンダの突然の変化を罵っていた者たちも次の瞬間、次のターゲットを探しに辺りを見回す。
…くだらない女子校の泥投げごっこに付き合っているのは時間の無駄、そんな暇があったらスモ―キーとじゃれあって遊んでいたい。
そう考えたリンダは足早に学校を去った。